« 2006年8月 | トップページ | 2006年10月 »

2006年9月

YS11 ラストフライト

 国産旅客機YS11が最後の飛行を終えたようです。

 私がはじめて乗った飛行機がYS11でした。1966年だったと記憶していますが、伊丹から米子まででした。飛行機から降りたら、ものすごく肩が凝っていたのを憶えています。緊張していたのですね。一時代が終わったという感じです。

 ところで、ニュースでYS11の引退を「ジェット機時代に押されて・・・」と、YS11がジェット旅客機ではないような報道がなされています。

 YS11のエンジンは、ロールスロイス製のターボプロップというタイプのジェットエンジンです。「ジェットの噴流ではなくて、プロペラを回して推力を得ているじゃないか」という反論もあろうかと思います。

Turbofanengines_1_1現在の旅客機に搭載されているターボファンというタイプのジェットエンジン(左の絵)では、その推力の8割以上をジェット噴流ではなくて、プロペラのお化けのようなファンを回すことで得ています。YS11で採用したのは、タービンでプロペラを回すジェットエンジンです。  

 先日某エンジンメーカーの開発者に聞いたところでは、今度はエンジンも国産の旅客機を作る構想があるそうで、ぜひ実現してほしいものです。  

にほんブログ村 科学ブログへ ←現在4位から6位です。。。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

出場者募集 TVチャンピオン

 早速手を挙げていただきました。個人の方ですが、とてもユニークな活動をされている方です。チャレンジング精神に感謝申し上げます。制作会社に伝えます。

 9月28日の記事で大まかな競技内容についてお知らせしましたが、実際にどうやるかは制作会社のほうで決めます。私に問い合わせ相談をしていますが、最終案はどうも秘密にして、「さあこれでどうぞ」となるようです。

 構造計算のプログラムは大規模ですごいのがあるから、そういうのには負けるよなぁ、という声もあります。

 しかし構造計算の得意なところが有利か、というと必ずしもそうではありません。例えば、鋼材(鉄の合金)を前提にした構造計算プログラムでは、多少の参考にはなるとしても、最適な形状には行き着きません。例えば、レインボーブリッジは鉄という材料の特質によって生まれた形です。

 経験も、条件が変われば捨てなければならないもの、新たに工夫しなければ通用しないものが出てきます。

 紙を使ったエッグドロップにも、様々な工夫がありますが、使う材料が変わればそのままでは通用しないでしょう。

 目的とそれを実現するための限られた条件が示されて、そこからのアイディア勝負になります。

 私は、安全を守るという地味な分野にも、驚くような知恵の輝きがあることを知ってほしいのです。このような競技の中で、楽しく愉快に示すことができれば本望です。

 皆様よろしく。

にほんブログ村 科学ブログへ ←現在4位から6位です。。。

| | コメント (5) | トラックバック (0)

TVチャンピオンでブリッジコンテスト

お知らせとお願いです。7月から2ヶ月あまり、TVチャンピオンという番組の制作会社の方と打ち合わせをしていました。

つまようじブリッジコンテストを、TVチャンピオンの番組としてやれないか、という相談です。11月9日19日に行うコンテストとは別にです。

現在日本航空専門学校で実施しているブリッジコンテストだけでは番組になりにくい、ということで、私から次のような提案をしました。

* つまようじタワー つまようじでタワーを作り上に錘を載せて下を揺する。(耐震性)

* つまようじエッグドロップ 卵を包むような構造物を作り、ビルの上などから落とす。(耐衝撃性)

* つまようじブリッジ 中央に力をかけてどこまで耐えるかを競う。(耐静荷重)

この3競技で競ったらいかがという提案です。この案で、概ねやってみようという方向だそうです。今のところ日本航空専門学校だけでなく、福井高専、名古屋工業大学、東京大学などが出場する方向です。

ただ、番組としては、学校だけではなくて企業や社会人のかたで出場者が出てほしい、とのことです。10組ぐらいで予選をしたいそうです。

ゼネコンさん、設計事務所の方、腕自慢の大工さん、工作大好きおじさんおばさん、やってみようという方おりませんか。

おられたら、私宛にメールをください。もちろん日程にもよるし、詳しいことはまだ決まっていませんので、それ次第でしょうが、ここは心意気、いっちょやったるか、これで職場の活性化、何でも良いのですが、手を挙げてほしいのです。

もちろん、企画が没になることもありうる、という情報を加えて流してほしいといわれていますので、付け加えておきます。

にほんブログ村 科学ブログへ ←1日1回クリックで応援。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

ブリッジコンテストの面白さ

それはなんといっても丹精込めて作った作品が、一瞬のうちに壊れることです。作品に荷重がかかり、かかる力が大きくなっていくと、学生たちの顔はだんだんに真剣になってきます。最後は祈りにも似た表情になります。

23 そして、10日間かけて精密に作った作品が壊れる瞬間、彼らの表情は、「アーッ!」となってすぐに、何かほっとしたような笑顔に変わります。

24 ゼロから構想して目的のものを作る喜びと苦しみ、そして載荷の時の作品にかかる力への切ないほどの想像、そしてカタルシス。

25 私は、人間の本能に根ざした学びがあるような気がしています。

にほんブログ村 科学ブログへ 1日1回クリックで応援よろしく。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

10周年 つまようじブリッジコンテスト

つまようじブリッジコンテストは、今年で10周年を迎えます。

Br200140 当初17.5キロだった記録は、昨年の9回大会では250キロの記録まで達しました。昨年は、250キロ以上の錘をかけることができなくて、2組を同点優勝にしました。今年は、競技台を改良して600キロまで架けられるようします。

競技台の改良に頭を悩ませていました。

米国のように空圧シリンダーを使うことも検討しましたが、壊れるときのインパクトが失われる弱点があります。やっぱり錘を落としたい。

600キロもの錘を落とすと、安全性の確保に工夫が要ります。矛盾する課題にあれこれ迷いました。ようやく設計が固まりました。製作にかかります。

これまでは、日本航空専門学校航空技術工学科のイベントとして、学校の体育館で開催していました。今年は、予選を学内で11月9日(木)に行います。

決勝は、11月19日(日)千歳市市民文化センターで「青少年のための科学の祭典千歳大会」のイベントとして行います。

一般からの参加もOKです。

今年は、テレビ局から番組にしたいとの問い合わせが複数来ています。

近日中に皆さんもおそらく知っているあの番組からのお知らせを、このブログに載せます。

にほんブログ村 科学ブログへ 1日1回クリックで応援よろしく。

| | コメント (3) | トラックバック (0)

ジェットエンジンに関する国家試験(資格)

経済産業省が実施する航空関係の国家試験に、航空工場検査員国家試験があります。この試験は、13の部門がありそのひとつに「航空機用原動機」があります。航空機用原動機といえば、小型機に搭載されるレシプロエンジンとジェットエンジンがありますが、この試験で問われるのはジェットエンジンについてです。

試験科目は、「法規」・「理論(強度・構造・性能)」・「材料」「製造修理方法」の4科目です。4科目すべてで基準点以上の得点を取ると合格になります。航空機用原動機部門は、毎年100人前後が受験します。合格率は10~20%前後です。受験資格に特に制限はありませんが、受験者の多くは会社での相当の実務経験を経た方のようです。

Kokuk この試験に合格者は、ジェットエンジンメーカーや修理を伴うヘビーなメンテナンスをする会社で、品質管理のとりまとめと点検をする、航空工場検査技術者か航空工場検査員になることができます。直接作業をする人の資格ではありません。

私の合格証です。愛想も何もないA4の上質紙です。大臣印に意味があります。平沼さんはこのあと大きく運命が揺れましたね。

Googleで自動で入らないでしょうから、手動でCM。

航空工場検査員(航空機用原動機)を取得できる専門学校はこちら

にほんブログ村 科学ブログへ応援ありがとうございます。

| | コメント (2) | トラックバック (1)

パルテノンと黄金比

パルテノン神殿の話題、黄金比から柱のジョイントに日本製のチタンを使ったを経てアルキメデスのクレーンまで、漂流してきました。私としては、ひとつひとつの話題もさることながら、ブログの面白さを知りました。

北川成人さんのHPを読んで、それについて書いたら、御本人からコメントをいただいてびっくりしました。秋山仁氏や夢枕獏氏等についてもHPに書いていますが、もしかしたら御本人が読んでくれているのかもしれません。私は、批判的に取り上げている方も実名を挙るのは、たいていの場合どこかですごいなと思っている方です。

また、271828 さんが入ってきて、3人でこのブログを通じて見解を交換しました。3人とも団塊の世代、それぞれ生活基盤も考え方も持っている知識領域も違っているのに、「黄金比」という共通の関心事で盛り上がることができました。違っているからこそ、面白いのでしょう。違うのに同時代の空気を吸い、同じように人生を楽しもうとしている。ブログやWEBの世界以外では知り合えなかったと思います。

パルテノン神殿の話題は、とりあえず小休止として、また時間を置いて書いていこうと思います。

一応の締めくくりとして、北川成人さんから私信でいただいたパルテノン神殿と黄金比についてのコメントを、御本人の承諾をいただきましたので、掲載します。

***********************

黄金比は美と理系(数理)が結びついていて同時に二つが楽しめる。そこに黄金比の人気があるのでしょう。

パルテノンは神の像を安置する建物であり、儀式も外で行われ、人が入ることのない建造物です。外からどう見えるか(美しく感じるか)、それを考えて設計されています。

一種の彫刻なのです。美しく見せたい、それがギリシャ人の願いです。
そのため基壇は中央でふくらみ、柱はわずかなふくらみを持ったエンタシスであり、両端の柱はわずかに内側に傾けててあります。“微調整”させているのです。

いかに美しく見えるかに使った寸法は黄金比ではないということだけは強調しておきたいと思います。ギリシャ人が使ったのは柱のベースの直径(モルドゥス)です。その直径は人間の足の大きさからかんがえられています。その何倍を柱の高さにする等で全体の寸法が出ています。部分と全体の調和、比例それを求めていました。

http://trucsmaths.free.fr/nombre_d_or.htm
フランス語の黄金比のページです。途中に人間の腕が出てきます。中世の聖堂を建てるときに使ったものさし=人間尺(指、掌、二の腕等)が出ています。あくまで人間のからだを基本に寸法を採っています。それが西洋の建築です。ギリシャのオーダー(柱)を勉強するのが建築であり、それはついこの間まで(19世紀末)行われていたのです。黄金比は出てきません。
ギリシャ語でキリストはIHCOVCと綴る。これを数字であらわすと888、それで88ピェ8プス(28.5m)が標準的なヴォールトの高さとなりました。

こんなふうに建築では人間尺度が基本なのです。そこに黄金比が入り込んでくるのは19世紀後半からです。
**************************

| | コメント (1) | トラックバック (1)

アルキメデスとクレーン

ティモシェンコの「History of Strength of Materials(材料力学史)」を読み直してみたら、最初のページにこんな記述がありました。

 Archimedes(287-212 B.C.) gave a rigorous proof of the conditions of equilibrium of a lever and outlined methods of determining centers of gravity bodies. He used his theory in the construction  of various hoisting devices. The methods used by the Greeks in transportung the column and architraves of the temple of Diana of Ephesus.

アルキメデスは梃子の原理を証明し重心を決める方法の概略を示した。彼は、その理論を使って様々な吊り上げ装置を作った。その手法をギリシャ人は、エフェソスのディアナ神殿の柱と台輪を運ぶことに使った。

"Archimedes crane"で検索してみたら、こんな面白いページを見つけました。アニメーションでよく分かります。ここにも。クレーンではありますが、船で攻めてくる敵を港で転覆させるための武器だったのですね。戦争のとき以外は荷揚げ装置として機能したのでしょう。

アルキメデスは、パルテノン神殿建設以後の人ですね。パルテノン神殿で使われたとするクレーンと比べると、先のページのクレーンは、てこの原理が意識的に適用(計算書)されていることが分かります。

パルテノン神殿では、すでにクレーンが使われていたとするならば、アルキメデスの発見とされる梃子(てこ)の原理や物質の重心というあたりは、建設現場での失敗や工夫の中で醸成されていた、と想像できないでしょうか。

| | コメント (6) | トラックバック (0)

古代ギリシャのクレーン

パルテノン神殿の組み立てにはクレーンが使われていたことを、271828さんに教えていただきました。こちらに絵があります。ブームを伸展する機構は無いようですが、そのほかは現代の移動式クレーンとほとんど変わらないでしょう。この絵は、柱の上の作業であって、柱の部品のドラムをどのように吊っているのかは分かりません。

Drum_1 こちらには、ドラムを吊っている模型の写真があります。1/10スケールのモデルとのことです。ドラムに4つの突起がついています。ロープをかけるためにあるようです。3DCGで絵を描いてみました。この模型の写真では、2箇所にロープをかけていますが、これは常識的にありえません。回転して荷を落としてしまう危険があります。また、このような4つの突起にロープをかけるのは、靭性の低い材料(小さな割れでパリンと壊れる)である石には向かないと思います。

古代ギリシャは海洋技術が発達していると、北川さんと271828に教えていただきました。クレーンや玉掛けの技術も船舶から発達したのだろうとも。船舶に搭載されたクレーンがあったはずです。こちらに絵がありました。こちらには、模型の写真がありました。注目は、石に刻まれたUの字の溝です。靭性の低い材料にロープを架けて吊るとしたら、これなら大丈夫そう、合理的に見えます。こちらのページの中ほどにある瓦礫の写真の中に、Uの字の溝がある石が見えます。

こちらの模型の写真を見てください。ドラムを一点で吊っています。これは、中央の穴を使っているのでしょう。このモデルは、引き揚げる力の発生の仕方が誤りであると考えられている、と書いてあります。ドラムの吊り方はどうなのでしょうか。同じサイトにはクランプの写真もあります。

271828さんからメールをいただきました。ランデルズの『古代のエンジニアリング』にあるイラストを紹介していただきました。そこには、ドラムを車輪にして運搬している様子が描かれていました。Unpan_imageちょうどグラウンドを均すローラーのような感じです。ドラムをこのように運搬したとしたら、吊るときに4つの突起があるのはおかしいということになります。また、ドラム中央に開いている穴は、組み立てるときに上下のドラムの芯を合わせたりつないだりするためにだけの役割ではなさそうです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

パルテノン神殿 柱のドラムを回転?

なにげなくはじめたブログですけれど、楽しいですね。つぶやきに等しいひと言から、どんどん広がっていきます。

パルテノン神殿の柱を構成するドラムと呼ばれている円柱、この中央部にある面が粗いところが、何のためなのか気になっていました。

これまでの議論から推理してみます。断るまでもありませんが、素人の勝手な推測です。

Empolia2 ドラムを上に載せてから回したようです。回すためには、接触面積は小さいほうが有利です。真ん中付近に少し出っ張りをつけておけば、小さな力で回すことが可能になります。

しかし、それではドラムとドラムとの間に隙間が残り、不安定になります。

そこで、接触する中央付近の面を穿ってでこぼこにしておいて、回すことで互いにヤスリになり削られていくようにすれば、隙間が少なくなっていきます。

中央の面の粗さは、その結果として残ったものではないかと考えました。

poleとempoliaは、少しずつ下がってくる上のドラムに押されて、程よく食い込んでいったのではないか、そう想像しています。強度もヤング率も大きなチタンでは、食い込む量は1/100mmのオーダーになります。木材の方がよさそうです。

私の推測が当たっていれば、解体されたドラムの中央の表面が粗い部分は、他の面とほとんど面一になっていて、手を滑らせてもほとんど抵抗がないはずです。

あー、ほんとだろうか。確かめてみたい。10日の休暇と50万円があればなぁ・・・・。あるわけないか。

| | コメント (4) | トラックバック (0)

パルテノン神殿 柱の組立

パルテノン神殿の柱をつなぐ部品に、日本製チタンを使ったのはどうも失敗だったらしいことがわかってきました。

皮肉なことに、チタン合金が強いことが仇になったようです。せん断の力(はさみで切るような力:柱のドラムがずれるときに接合部に生じる)で、木とチタン合金ではその強度に大きな開きがあります。木の種類もチタン合金の材質もわかりませんから、大雑把な計算にならざるを得ませんが、おおよそ40倍違います。パルテノン宮殿では、ポールの部分の直径は55mmだそうです。木では2.5トンの力で壊れますがチタンでは100トンにならないと壊れません。2.5トンでは、8トンもあるドラムが横にずれ始めたらひとたまりも無いでしょう。

しかし、この横にずれることに抵抗してしまうと、柱を傾けるほうの力(曲げモーメント)が生じ始めるのです。そして、傾ける力の方が、柱にとっては致命的になる。

Empolia では、ドラム中央につけられた3つのパーツ(empoliaとpole)の目的はなんなのでしょう。

私は、この作業にクレーンが使われたというところに答えがあると思います。271828さんが教えてくれた、クレーンの絵。設置する位置を決めるには、本体の位置(横移動)とブームの倒す角度で決めなければなりません。ブームを倒したり起こしたりすると、高さ位置も変わりますから、ワイヤー(ロープのようですが)の長さを巻き取りによって調整しなければなりません。結構難しそうです。

現代でも、たとえばポンプをクレーンを使って設置するときには、ポンプの台座にあいているボルトホールの位置にあわせて、コンクリートの床にあらかじめアンカーボルトを打っておきます。床からボルトがニョキッと生えている感じです。クレーンオペレータに合図を送る人が、うまく誘導して、ボルトホールにアンカーボルトが入るようにして、設置します。手際よく正確に行うには熟練が要る作業です。

Setup1 それから想像すると、かのポールはアンカーボルトの役割を果たしていたのであろうと考えられます。ポールが角柱にあけられた穴に入るようにすれば、中心が決まる。芯出しというやつですね。

この3部品には、芯出しのツール以外に、回転させるための軸としての役割もあったようです。それと、中央の面が粗い部分について・・・・次回書きます。

公開している文献は見つかっていませんから、ここは素人の強みでどんどん想像を膨らませてみます。「おかしい」と思っている方、ブレーキをかけてください。

にほんブログ村 科学ブログへ2位から6位までが団子状態。デッドヒートを繰り広げています。クリックで応援していただけているようです。ありがとうございます。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

クイズの解答 古代の知恵と先端金属

前項で出した、クイズの解答です。
271828さん、きたがわさん、ありがとうございました。
ちょうど丁半でそろいました。

Newimage1 それでは、左の絵をクリックしてください。簡単なアニメになっています。そうなのです、このようになります。
10回のうち9回が、Bの下から1段目と2段目の境から傾いて倒れました。1回は、Aの下から2段目と3段目の境が少しずつヨコにずれて落ちました。

Multi_drum_column6_image 少し説明をします。左の図を見てください。下の円柱に左から水平方向に力を加えます。上の円柱には慣性が働きますから、上下の円柱の境目には摩擦が生じます。この摩擦力がずれようとする動きに対して抵抗になります。クイズのAとBとでは、この抵抗の力に差がありました。このずれに対する抵抗の力によって、この円柱を回転させようとする力(図では水色の矢印)が生じます。

電車に乗っていて急ブレーキをかけられると前方に倒れますが、靴底が滑れば倒れません、なんてことをイメージすればわかりやすいかも。
材料力学や構造力学を学ぶと、最初のころにはりのせん断力図(SFD)と曲げモーメント図(BMD)が出てきます。この関係についてはあまりちゃんとした説明をしている教科書が少ないです。 dM=-Q.dx (M:曲げモーメント、Q:せん断力)という式を導いて終わり、というのが多いです。Qを積分するとMになるということですが、それはせん断力(ずれに対する抵抗)があることが、曲げモーメント(回転させる力)を生じさせる、ということを実際には意味しています。

このあたりをなるほどと思わせてくれたのが、市之瀬敏勝著「ホームページで学ぶ構造力学」です。(ソフトウエアを使って学ぶというのもいいですが、学生君と理屈っぽい女史・おとぼけ教授の掛け合いになっているダイアログが読ませます)

さて、パルテノン神殿のマルチドラム柱です。私は、ドラムをつなぐempoliaが、古代には木製で修復の際に金属(鋼→チタン)に変えられた、という話を聞いて、単純に丈夫になった、と思っていました。ずれに対する抵抗は、木とチタニウムでは大きく違います。また、表面の粗さについても、抵抗が大きくなるか否か、という観点から問題にしていました。

でも、どうも違うのです。empoliaにチタニウムを使うのは、地震に対しては改悪になっているということです。そのことは、北川成人さんが紹介してくれた論文“Earthquake analysis of  multidrum columns”に書いてありました。かの論文は、コンピュータを使って数値解析によるシミュレーションを行っています。私は、この論文を読んではっとしました。ずれに対する抵抗を大きくすることで、曲げモーメントを大きくしてしまっているではないか、ということです。これは、せん断力と曲げモーメントの考え方からすれば、当たり前のことかもしれないと思いました。

それで、かのミニ実験をしてみたのです。かくして、予想どおりでした。チタニウムを使っても、古代の知恵には勝てなかった、ということ。

| | コメント (4) | トラックバック (0)

multidrum columnの構造力学

パルテノン神殿の柱の話題、どんどん膨らんでいます。昨日の記事を書き終えて、特に最後の結論、なんか違っていそうだな、と思い始めて、さっきちょっとしたミニ実験を行ってみました。

Multi_drum_column 直径50mm高さ80mmの鋼の円柱があります。これを3つタテに重ねます。旋盤で加工してあり、表面は滑らかです(これをAとします)。同じもので以前に作ったための表面に錆が出ているものがありました(これをBとします)。カメラを持っていなかったのでCGで図を作りました。(表面の感じは少し誇張気味ですが・・・)

Bの方が摩擦係数が若干大きそうだということを、手の感触で確認しました。机の上において、一番下を持って、20mm程度の振幅で水平方向に揺らし、次第に揺らすスピードを上げていきました。10回行ったところ、9回同じほうが先に崩れました。

さて、突然ですが、ここでクイズです。先に崩れたのはA・Bどちらでしょう。(どこからどのように)

私の推測と同じでした。勝手に盛り上がっていますが、これは面白い。

| | コメント (4) | トラックバック (0)

パルテノン神殿のマルチドラム柱

マルチドラム柱(multidrum column)というようです。興味が尽きません。

ドラムの中心付近にあるあえて面を粗くしたエリアの目的はなんだろうか、疑問を書きました。

北川成人さんからメールをいただきました。次の論文を紹介していただきました.。

Earthquake analysis of  multidrum columns”(なぜかリンクがうまくいきません。Googleで論文タイトルで検索すると1番で出てきます。)

Parthenon_image1_1日本語で書いてあっても難しそうな論文ですが、注目は4ページ目の図です。真ん中の四角い穴に入れるパーツが詳しく図示されています。単純な四角柱ではなくて、3つのパーツで構成されています。

the drums of columns were connected with a wooden system that consisted of the pole and the two empolia.

そのままコピーして載せるとまずいかもしれないので、CGで描いてみました。

これは、軸と軸受(すべり軸受)に見えます。これでは、横にずれるせん弾力への抵抗にならないのは、明らかでしょう。

組んだあとか組み上げる過程で回す必要があったと考えられます。目的は何でしょう。

*横の溝の位置あわせ。(これは組み上げてから削ったということらしく、違うようです)

*ドラムの上底と下底の平行度を微調整するため

上底と下底の平行度の誤差が同じ方向に重なっていくと柱は垂直からずれていき傾くでしょう。

北川さんに紹介していただいたこちらのページにはこんな記述があります。

In many classical temple columns, wooden dowel-like components called empolia were used between adjacent column drums. The empolia were used at the center of a column to simply assist in aligning the column drums during erection; not to provide shear resistance.

せん断力への抵抗ではなくて、垂直に立てるための面あわせが目的だった、ということです。

先の地震論文の中から、

Figure 2 (bottom-right) shows the two wooden empolia that were installed flush with the interface of the adjacent drums together with the cylindrical pole that was made of harder wood.The dimensions of poles and empolia vary according to the scale of the column.

(中略)

The pole was usually fixed at the top drum which upon erection was rotated with respect to the bottom drum in an effort to achieve the best possible contact .The role of the wooden poles was primarily for rotating the drums . not to provide a shear link between them.

北川さんが訳してくれました。

図2は二つのエンポリアを示している。二つは、隣接するドラム(つまり上下のドラムです)の接する面(インターフェイス)を面一にする(flush with)ために取り付けられている。エンポリアよりもさらに丈夫な木でできたシリンダー状のポールが上下のドラムをひとつにする。ポールとエンポリアの直径は円柱の大きさにより変化する。

ポールは普通、上部のドラムに取り付けられていた。
円柱立ち上げのとき、一番よい接触を生むように注意深く下のドラムに向かって回転させた。木製ポールのまず第一の役割は二つのドラムを回転させることであって、両者間にせん断線を提供することではない。

なるほど、よく分かります。

そうすると中央部の面の粗いエリアは、次のように推測できます。

載せてから、ずれないようにするためには表面の粗い部分が必要だった。粗い面がかみ合って摩擦係数を大きくして、ズレがおきにくくする。しかし、その抵抗を大きくするために全面に渡って表面を粗くすると、面合わせのために回そうとすると抵抗が大きくて回せなかった、そこで中央部の限定されたエリアにした。

どうでしょう。

271828 さんが教えてくれたクレーンの絵と写真、コメント欄ではクリックではつながりませんので、ここに載せます。その後私が見つけたものも載せます。

123456

| | コメント (0) | トラックバック (0)

パルテノン神殿 柱の継ぎ方

昨日チタン棒の使い方について、想像画を描いて、本当はどうなのか教えてくださいと呼びかけましたら271828さんから、コメントをいただきました。イリノイ大学のこのページを紹介していただきました。柱を構成する短い円柱の部品をDrumというようです。drumの真ん中に四角い穴が開いているのが分かります。ここに角柱の棒を刺したのだろうということは分かります。この穴深さはどのくらいなのだろう。貫通穴ということはないだろう・・・などと考えていました。

先ほど、Kさんからメールをいただきました。やはりイリノイ大学の別のページを紹介していただきました。drumの真ん中の穴が写った写真があります。私の想像図よりは、浅いようです。こちらのページも紹介していただきました。

ありがとうございました。想像図は大きくは違わないようです。私は、このページの写真を見て想像図を作りました。その後こんなページを見つけました。

Kさんによると、

「木のだぼを使いました。表面に砂を撒くとあります(安全対策)。ロープでつった上の段をゆっくりと降ろしてだぼに上の輪切り円柱を合わせる。砂をどけていく。ぴったり収まる。これの繰り返しです。円柱の溝は後で彫ります。」

とのことです。なるほど、円柱の溝を彫ってから組み立てると思っていましたから、溝のラインを合わせるためには、角柱を刺す穴の精度を相当高くなければならない、どういうやり方をしたのだろう、と思っていました。

ここでまた疑問が出てきました。参考写真を見ると、角柱を入れるダボ穴の周りに円状の表面をあえて粗くしたエリアがあります。これは何のためなのでしょう。Kさんが紹介してくれたページには、チタン棒を入れた後ソフトセメントを入れる、といった記述もあります。摩擦を大きくしてねじれに対する抵抗を大きくした?それとも、drum間にわずかなクリアランスを設けておいて振動を吸収した?

いやいや、ブログで勝手なことを書いていますが、面白い広がりです。

| | コメント (3) | トラックバック (0)

パルテノン神殿に日本製チタン

面白いコメントをいただきました。パルテノン神殿の補修工事に日本製のチタニウム合金が使われているそうです。271828さんからのコメントです。

「大理石の柱(のパーツ)は真ん中には四角い穴が空いていて、建設当初はここに鉛の角棒を入れて積み上げていました。20世紀初頭の補修では鉄の棒を使ったため錆が出て、現在進行中の工事では日本製のチタンの角棒が採用されたそうです。」

へー、なるほど。鋼を使えば酸化によって体積膨張が起きますから大理石ぐらい割ってしまうかもしれません。防食処置をしたから大丈夫という発想だったのでしょうか?

チタニウム合金といえばジェットエンジンのファンやコンプレッサーなどコールドセクションと呼ばれる部分に使われる材料です。日本では神戸製鋼が高い技術を持っています。

Parthenon どのように使われているのか知りたくて、WEBで探してみましたが、いまいちよくわかりません。長い棒で串刺しにするのは、クレーンも無い時代には難しいだろうと思います。ヨコにずれるせん断力を支えればよいのなら、チタンの棒をピンとして使うとして、こんな風かなと想像してCGで作って見ました。実際に見た方、いらっしゃいますか?

このブログのばらばらのテーマが結びつきそうな気配(笑)。

| | コメント (1) | トラックバック (0)

宇宙を内在する人体

Lan1 私の陶芸作品のひとつ。自宅の庭に埋めています。縄文の人たちは、鎮魂と死者の再生を願って、土偶をあえて壊して住居やその周辺に埋めたのだそうです。長男が10ヶ月の短い命で旅立ったあとに、作りました。

御殿場遺跡から出土した顔面釣手形土器を参考にしています。似たような土器が、井戸尻考古館に、曽利遺跡から出土した人面香炉形土器という名前であります。

前面は、全体が顔のようにも見え、ずんぐりした人体のようにも見えます。男性を象徴しているようです。闇・夜に向いていて月という説もあります。

Lan2 裏面は、女性に見え、これはどう見ても太陽です。

中に木材を入れて火をつけ、闇夜に置いたら迫力があるでしょう。

八ヶ岳山麓の縄文遺跡の土器土偶の迫力には圧倒されます。

人体と、天体・宇宙を一体にして統一的に捉えようとする思想は、洋の東西を問わずあるようです。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

壺のかたち

最近やれていませんが、陶芸を趣味にしています。特に壺を作るのが好きです。轆轤を引くのはなかなかうまくいきません。それでも、ときに土がなりたいかたちが指先に感じられるときがあって、至福のときです。たとえていえば、体の中を清流が絶え間なく流れているような爽やかな気持ちです。

S2壺の中に豊かな空間がイメージできるような作品を作りたいのですが、うまくはいきません。左の写真は「空」をイメージした作品です。

仁清の壺の形が好きです。とても美しいプロポーションだと思います。(でも、仁清の壺に黄金比はありません)

にほんブログ村 美術ブログへ

| | コメント (0) | トラックバック (0)

19世紀中葉からの黄金比フェティシズム

北川成人氏の「モデュロール考」を読んで分かることは、ユークリッドの外中比を「黄金比」として、自然界をも支配する特別の神秘の比、として「発見」したのは19世紀以降のツァイジング、ハンビッジ、ギガといった人たちであるということです。

「発見」というところが面白いです。それも、まずは、人体の中に「発見」をしていったとのこと。宇宙と人間とが相似形であり、黄金比という特別の比によって「入れ子」の関係になっていることを「発見」したということのようです。北川氏が示している文献を読んでいるわけではありませんが、どう考えても怪しいと思います。

* φ=(√5+1)/2=1.618・・・のどこまでが一致したら「黄金比」であるとしたのでしょうか?(判定の許容範囲)

* 年齢・性別・民族・・・どこまで調べたのでしょうか?(サンプル調査の範囲)

多分、こんなことを問うほうが野暮なのでしょう。私は、子どものころ夏祭りにやってくる占い師が、お客の個人的な事情(たとえは子どもが3人、最近身内に不幸があった・・・等々)を「当てる」のが不思議で不思議で、何時間も観察したことがあります。そうするといくつかの仕掛けが分かってきて、面白かったのを憶えています。その仕掛けのひとつが「当たってほしい」という心理に付け込んで、範囲の広いことを言って誘導する、という手法でした。

「黄金比」が人体にもあってほしい、という願望の投影で、1.6でも1.5でも1.4でも「近い」という判定をしているのではないでしょうか。

それとも、理想の美しい人体では「黄金比」になるとでも言うのでしょうか。

このブログと関連サイトで何度も言ってきていますが、自然の中に黄金比があるというのはデマです。

北川氏はコルビュジエの研究をされているとのことです。黄金比フェッチになっているコルビュジエの錯誤を緻密に浮き彫りにされています。

ただ、その北川氏も19世紀以降の「黄金比の発見」自体には、それを是としているようです。「黄金比の呪縛」の煙の中におられませんか?といいたいのです。

小説「ダ・ヴィンチ・コード」の中の「黄金比」に関する叙述は、とんでもなくあほらしいと思っていました。今回北川氏の「モデュロール考」を読んで、この叙述には西欧の根深い思想あるいは哲学の背景を持っていそうだということが、よく分かりました。

北川氏のこの言葉は、まさにそういうことなのだろうだと思います。

「一宗教の経典を聖書と呼んでこの上なく重要な書物と勘違いしてしまうように、黄金という言葉がつくことによって、外中比が最高の比であるかのような錯覚を深めていく、黄金比フェティシズムといってよい状況が、19世紀中葉から20世紀の20~30年代初頭にかけて、あった」

数学者やデザイナーが、「神秘の比」などということを自ら根拠を示すことなく「・・・といわれている」と主張する場合、この黄金比フェティシズムに、自覚的にか無自覚かは別にして、影響されているということでしょう。特に数学の先生には、この黄金比フェティシズムを検証してみてほしいです。北川氏の論文をぜひまず読むことをお勧めします。

| | コメント (8) | トラックバック (0)

« 2006年8月 | トップページ | 2006年10月 »