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クイズの解答 古代の知恵と先端金属

前項で出した、クイズの解答です。
271828さん、きたがわさん、ありがとうございました。
ちょうど丁半でそろいました。

Newimage1 それでは、左の絵をクリックしてください。簡単なアニメになっています。そうなのです、このようになります。
10回のうち9回が、Bの下から1段目と2段目の境から傾いて倒れました。1回は、Aの下から2段目と3段目の境が少しずつヨコにずれて落ちました。

Multi_drum_column6_image 少し説明をします。左の図を見てください。下の円柱に左から水平方向に力を加えます。上の円柱には慣性が働きますから、上下の円柱の境目には摩擦が生じます。この摩擦力がずれようとする動きに対して抵抗になります。クイズのAとBとでは、この抵抗の力に差がありました。このずれに対する抵抗の力によって、この円柱を回転させようとする力(図では水色の矢印)が生じます。

電車に乗っていて急ブレーキをかけられると前方に倒れますが、靴底が滑れば倒れません、なんてことをイメージすればわかりやすいかも。
材料力学や構造力学を学ぶと、最初のころにはりのせん断力図(SFD)と曲げモーメント図(BMD)が出てきます。この関係についてはあまりちゃんとした説明をしている教科書が少ないです。 dM=-Q.dx (M:曲げモーメント、Q:せん断力)という式を導いて終わり、というのが多いです。Qを積分するとMになるということですが、それはせん断力(ずれに対する抵抗)があることが、曲げモーメント(回転させる力)を生じさせる、ということを実際には意味しています。

このあたりをなるほどと思わせてくれたのが、市之瀬敏勝著「ホームページで学ぶ構造力学」です。(ソフトウエアを使って学ぶというのもいいですが、学生君と理屈っぽい女史・おとぼけ教授の掛け合いになっているダイアログが読ませます)

さて、パルテノン神殿のマルチドラム柱です。私は、ドラムをつなぐempoliaが、古代には木製で修復の際に金属(鋼→チタン)に変えられた、という話を聞いて、単純に丈夫になった、と思っていました。ずれに対する抵抗は、木とチタニウムでは大きく違います。また、表面の粗さについても、抵抗が大きくなるか否か、という観点から問題にしていました。

でも、どうも違うのです。empoliaにチタニウムを使うのは、地震に対しては改悪になっているということです。そのことは、北川成人さんが紹介してくれた論文“Earthquake analysis of  multidrum columns”に書いてありました。かの論文は、コンピュータを使って数値解析によるシミュレーションを行っています。私は、この論文を読んではっとしました。ずれに対する抵抗を大きくすることで、曲げモーメントを大きくしてしまっているではないか、ということです。これは、せん断力と曲げモーメントの考え方からすれば、当たり前のことかもしれないと思いました。

それで、かのミニ実験をしてみたのです。かくして、予想どおりでした。チタニウムを使っても、古代の知恵には勝てなかった、ということ。

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コメント

 私はばくち(数学ではない)に弱い。負けました。でも私の紹介した論文が役にたってよかった。私は数式の出ているところを避けて読みました。そこが敗因だったようです。
 でもあのempoliaって四角箱型はドラムの中に埋め込まっれちゃってるのじゃないですか。だからあまり摩擦に関係ないように思うのですがどうでしょう。
 棒は関係しそうですね。木だった棒が鋼製になり、鋼と鋼が当たる訳ですから。
 推理小説以上の面白さです。

投稿: 北川 | 2006年9月13日 (水) 22時05分

北川さん 盛り上げていただきありがとうございます。
北川さんが紹介してくれた論文から、想像は広がりました。語学力の限界で読むのが遅かったのですが・・・。
推理も揺れ動きながら、私としては大変面白いところに行き着きそうな気配がしています。
empoliaの機能と役割も、推理がわいてきました。木の方が金属より優れているという結論です。次にこれについて書きます。

この辺の領域を専門的に研究している人も、多分いるのでしょうね。なぜ、こんな面白いことを世間に公開していないのだろう。

投稿: SUBAL | 2006年9月13日 (水) 23時29分

SUBALさん 北川さん こんにちは。

まぐれで当ってしまいました。摩擦係数と「だんだん速く」というのが「何となく」の根拠でした。実は北川さんご紹介の論文を読んでいません。googleで最初にヒットするPDFは最初のページしか表示されないのです。これがリンクが出来ない原因かも知れません。よく探すと下に件のPDFがあり、こちらは完璧。

この論文の著者は名前からお二人ともギリシャ人ですね。ニコス・マクリスさんのパトラス大学はペロポンネソス半島の港町にあります。アテネ、テッサロニキについで三番目の都市ですが、人口は20万人。古代の遺跡もあり行ってみたい町です。

投稿: 271828 | 2006年9月14日 (木) 08時05分

271828さん 当たりましたね。しかもどこからかも。摩擦に伴う現象に関しては、専門家でしたね。
リンクはできるようになりました。ただ、以前のURLとは違うようです。
大学のある町まですぐ分かるとは、恐れ入りました。

投稿: SUBAL | 2006年9月15日 (金) 01時30分

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