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公開された破面の意味するもの

大阪府吹田市で起きたジェットコースター事故、1ヶ月経ってやっと破面が公開されました。

Crosssectional_shape

この写真はYOMIURIONLINEに掲載されているものです。

大阪府警が公開したようです。こういう写真に著作権があるのでしょうか。私は事故の再発防止という「公」に資するために公的機関が公開した(どこまでもパブリックな)映像に民間会社が著作権を主張することに疑問を抱いています。

さて、この破面についてですが、ライフワークとして鉄道車軸の疲労破壊を研究されていて、海外での公的な鑑定を行っているHirakawa氏がその見解を、このブログに寄せてくれています

片振り曲げ疲労で、疲労限近い低い応力でゆっくりと穏やかに進行した疲労破壊であることが、この破面から読める、これでよいとのことです。(Hirakawa氏は片振りとはいっていません。お詫びして訂正します。6/7)

後は、電子顕微鏡のレベルでストライエーションが観察できるのか、観察できれば亀裂伸展の時間経過が推定できる、という作業が残されているだけでしょう。

以前にも指摘しましたが、この破断箇所がなぜ破断するような繰り返しの曲げ応力が発生したのか、ここが問題ではないかといい続けえてきました。

この軸(ボギー軸というようです)は本体に圧入されています。圧入で本体にしっかり固定されていれば、破断箇所には曲げ応力の発生は考えにくい箇所なのです。

この件で、毎日新聞の記事に以下のようなものがありました。

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 折れた車軸は「ボギー軸」と呼ばれ、車体側と車輪ユニット側の軸穴にそれぞれ差し込む「はめ合い工法」で組み立てられている。風神雷神2の車軸は、強度の強い特殊なはめ合い工法により軸穴にきつく差し込まれる設計で、中央部分と両端を固定している。中央部分が太く、最も荷重がかかる構造だ。
 エキスポランドで遊具の保守点検に携わった経験のある技術者は「ボギー軸は、5~6年たつとはめ合い部分が摩耗しているものがあった。接着剤ですき間を埋めたりして補修した」と証言する。解体点検の際は油圧式機械やハンマーを使って車軸を抜いたり、差し込んだりするが、摩耗が進行し抜けやすくなっているものもあったという。(全文はこちら

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報道では、まじめに点検をしていなかったからこんなことが起きたのだ、とエキスポランドを非難していますが、むしろ何度も抜き差ししたからこそ、本体と軸との間に隙間が出来て、それが今回の破断箇所に曲げ応力を発生させたのではないか、私はそう推測しています。

事実、私のブログにも「元トーゴ社員」という方の次のようなコメントが寄せられています。

「トーゴがまだ遊園地に営業所があったころはメンテナンスは十分すぎるくらいに行なっていました。」

「メンテナンスで工場に入っていたコースターのオーバーホールは何回か見ていますが抜けないことはありません。ギヤ抜きなどで外していました。」

毎日新聞の記事にある「接着剤ですき間を埋めたりして」というほどの隙間が開くことがあったことはこうした「まじめな点検」(疲労割れを検出できる適切な点検であることと同じ意味ではありません)によって生じたのではないでしょうか。接着剤を詰めたって曲げ応力の発生は防げません。

Bending この図は、本体の取り付け部が緩々になると、今回の破断部に曲げ応力が発生することを説明するために作った図です。この図では、わかりやすくするために隙間は大きくしてあります。

私は、今回の疲労破面がビーチマークが目立たなく比較的スムースなのは、車輪からの荷重がによる曲げモーメントがストレートに作用したのではなく、開いた隙間の分だけの変形範囲で抑制的に作用したからではないか、と推測しています。(研究室で行う疲労試験のようにきれいなサインカーブを描くような一定の応力の繰り返しで破損した高サイクル疲労破面では、ビーチマークがほとんど見えずスムースです)

でも、この推測が当たっているとすると、現在進行中の点検の動き、危ないものがあるかもしれないのです。

1年に1回の点検を、半年に1回に変えて安全をアッピールしようとする動きもあるようですが、本体との隙間も計測管理しなければ点検が事故原因を作ることになりませんか?私は心配なのです。杞憂でしょうか?

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コメント

 初めてコメントさせていただきます。まだまだ駆け出しの機械技術者ですが、思うところありまして、愚考を
投稿させていただきたく思います。
 まず、図面やCG等貴重な資料がたくさん掲載していただき、おぼろげながら事故原因の一端について考察出来ることにお礼を申し上げます。
 さて、ご掲載の図面を見る限り、この軸の設計指針は圧入により軸のぶれを押さえ、軸受けより内側では軸力のみを受け持たせる構造であると思います。
 従ってご指摘にありますように、圧入部にガタが生じれば主として圧入接触面で受けていた曲げモーメントをナット座面でも支えることになり、螺子部に応力が集中すると思われます。また、軸受け部分が螺子部に比べて剛であることも応力集中を助長する一因と思います。
 そこで今回の事故の原因がこのガタにあるとして、ご掲載の図面を見ると軸と筐体の間にカラーのようなものが見受けられます。これは接触面を拡大させる意図のほかに、消耗品として適宜交換し、圧入代を維持することを目的としているのではないでしょうか。
 この推測が違ったとしても、車軸に曲げモーメントがかからないことを前提とした構造になっているとしか思えません。
 従って、この機械の検査項目として最も重要なのは圧入代及び圧入荷重の管理であると考えます。
 またこれは構造上の問題なので法律で義務付けるわけにもいかないでしょうから、もしメーカーの定期検査指示項目に無いなら、重大な過失だと思います。
 最後に、点検が半年に一度になるのなら、おっしゃるとおりとても恐ろしいと思います。むしろ、圧入代・荷重が管理されていない乗りたくないと思います・・・
 以上、浅慮ゆえ穴も多々あると思いますが、ご指摘いただければ幸いです。

投稿: | 2007年6月 7日 (木) 00時40分

すみません、名前を書き忘れてました(^^;

投稿: tetsu | 2007年6月 7日 (木) 00時43分

tetsu さん ようこそ
>軸と筐体の間にカラーのようなものが見受けられます。これは接触面を拡大させる意図のほかに、消耗品として適宜交換し、圧入代を維持することを目的としているのではないでしょうか。

確かにそのように見えますね。そうするとカラーのように見えるものを本体とどのように接合しているのでしょうね。フランジのようになっているとしたら、軸をフランジに圧入して本体に取り付ける、となっていることになります。わざわざそんな設計をするのでしょうか?
いずれにせよ、事故車両について本体と軸の取り付け部がどのように設計されて、供用期間中にどのようになっていったのかが、軸そのものの点検にもまして重要だということは、間違いないでしょう。
私が、疲労破面を早く公開すべきだ、それによって点検箇所・方法が違うはずだとしつこく言ってきたのはこのことなのです。

投稿: SUBAL | 2007年6月 7日 (木) 02時19分

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