« パルス波と周波数帯域 | トップページ | アクリルを使ったモード変換 »

透明な標準試験片

超音波探傷に使う標準試験片にSTB-A1というのがあります。装置の較正、探触子の入射点や屈折角の測定に使います。基準となるもので、探傷技術者にとっては、いわば武士の刀とでも言うべきものです。

超音波は聞こえませんし、もちろん見えません。五感では確認できないものを使って見えないきずを見つけるわけです。これを勉強したり教えたりしていると、試験片や素材の鋼が透明で中が見えたらなぁ、などという妄想は何度も浮かびました。(鋼が透明で中が見えたら、超音波探傷も放射線透過試験も必要なくなる訳で、そのそも自己矛盾ですが・・・)見えないものをみえるようにするのは「可視化」技術でしょうが、そこまでの話ではありません。 そんなことを、学生と雑談していると、透明なSTB-A1を作ってみましょう、などという変わり者の学生がたまに現れます。

Stba1もう8~9年前に卒業したK君(現在K重工航空宇宙に勤務)が作った、アクリル製の「STB-A1」です。後方にあるのが本物のSTB-A1です。

R100(左側 半径100mmの1/4円)の部分などは、ケガキ線の外側にドリル穴を開けて後はペーパーで手仕上げです。

出来上がって、正直その精度仕上げの綺麗さに驚きました。

Stb_a1_s こちらは、私が作った「超音波探傷入門」ソフトウエアの中で、STB-A1を透明化した画面です。

単位や試験とは関係のないところで、ほとんど何の役にも立たないだろうやり取りを若者としながら笑いあえる・・・教員という職業の特権だと思っています。

ところで、STB-A1を実際に製作しているのは、

にほんブログ村 科学ブログへ←このアイコンをクリックして「科学ブログ村」のページが出てくるとこのブログへの応援1票になります。1日1回よろしく。

東京都大田区にある、昭和製作所です。ここでしか作っていません。世界に誇れる「STB」を作っている会社です。

この会社を訪問したときに、社長室の飾り棚にアクリル製の透明な「STB-A1」が飾ってありました。

これを見つけたときに、やっぱりねという想いで、腹のそこから愉快であったことを思い出します。

|

« パルス波と周波数帯域 | トップページ | アクリルを使ったモード変換 »

超音波」カテゴリの記事

非破壊検査」カテゴリの記事

コメント

透明なSTB,面白いですね。
音圧で色が変わる材料でつくれたら更に面白そうです。

投稿: niwatadumi | 2007年9月26日 (水) 12時43分

こんにちは。試験片だけをつくっている会社があるとは知りませんでした。透明なアクリル加工といえば、最近では水族館の水槽にも用いられているようですね。

投稿: KADOTA | 2007年9月26日 (水) 17時14分

niwatadum さん KADOTAさん こんばんは

光弾性を使った超音波の可視化はすでに行われているのですが、もっと簡単にできないか、この学生との雑談妄想の中にはあったことです。うまくはいっていませんが、試みてはいます。

大森界隈にはとんでもない技術を持っている町工場があるのですね。標準試験片の試験検査を行っている会社もすごいですよ。

新千歳空港にある魚の水槽もアクリルでした。東急ハンズに25mmのアクリル板が売っていまして、これを買ってきました。
加工法の試行錯誤も面白かったですね。

投稿: SUBAL | 2007年9月26日 (水) 21時09分

ロボットコンテストがらみでアクリル工作に一時集中したことがあり、いい思い出になっています。とにかく硬く、割れやすく、苦労しました。薬液での接合は思いの外強力で驚かされます。アクリルの良さはその透明度(美しさ)とまずまずの強度。ただ、重さとお値段の高いことには困ったもの。特にお値段の高さは、予算の少ない(無い!)工業高校では痛いです。

投稿: 平田敦 | 2007年9月28日 (金) 09時31分

試験片というのも奥がふかいものだなあと思ってます。この前のおおた工業会フェアーに出展されていたので、思い切って(でしゃばってともいう)聞いてみたところ、結構真剣に答えていただき、感心した記憶があります。(とリンクを見てから気がつくようでは私も困ったものですが・・・)

投稿: デハボ1000 | 2007年9月28日 (金) 19時27分

平田さん こんばんは
アクリルの加工では、熱に対する配慮も必要ですね。クレージングクラックが生じると、超音波の減衰が大きくなり、アララなんてこともありました。

投稿: SUBAL | 2007年9月28日 (金) 21時39分

デハボ1000 さん こんばんは
昭和製作所の方と話をしたのですか?
日本の標準試験片のその材料から管理するきめの細かさと、現在の製鋼技術の進展から標準試験片用の材料の確保が早晩難しくなる、という話を6月に秋田で開かれた研究会で聞きました。

投稿: SUBAL | 2007年9月28日 (金) 21時46分

クレージングクラック、初めて耳にする言葉で、調べてみました。

「微細な空隙部分と、高分子の寄り集まった部分が発生し、白く濁っている部分をクレーズを起こしている、という」でいいでしょうか。

ポリエチレンなんかのビニール袋を引っぱってのばしたとき、白く濁る、あれがクレージング。

で、それが表面に現れているものは、空隙部分が外部に口を開いているので、微細なクラックがたくさん生じているものとなる。これがクレージングクラック。

外力ばかりでなく、加工熱やその他の熱でこのクレージングクラックが発生し問題となる、ということで、理解はよろしいでしょうか。

投稿: 平田敦 | 2007年9月28日 (金) 22時18分

平田さん こんばんは
私もクレージングクラックの発生メカニズムについては良くは知りません。
現象としては、飛行機に乗ったときに窓をよく見ると結構な確率でクレージングクラックを見ることができます。経年劣化もあるのでしょう、加工時の残留応力が効いているのかもしれません。アクリルの窓はシンナーを使って拭くのは厳禁です。クレージングクラックの原因になるからです。
アクリルに12φの平底ドリル穴をあけるときに、回転速度が速すぎたのでしょう、後から無数の小さなクラックがはいっていました。
現象としては、溶接部で溶棒の管理が悪くておきるミクロ割れによく似ているなぁ、と飛行機に乗るたびに眺めています。
こちらの記述が参考になるかもしれません。
http://www.sumitomo-chem.co.jp/acryl/03tech/zai2_shashutu.html#2

投稿: SUBAL | 2007年9月28日 (金) 22時48分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/222291/16576323

この記事へのトラックバック一覧です: 透明な標準試験片:

« パルス波と周波数帯域 | トップページ | アクリルを使ったモード変換 »