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海底3000メートルの大捜索

暮れに何冊か本を買いためて、正月のんびり読んでいます。

Cimg2129 そのひとつが『NHKのプロジェクトX ④ 男たちの飽くなき闘い』(NHK出版)です。

プロジェクトXは中島みゆきの主題歌(地上の星 ・ ヘッドライト テールライト)とともに一世を風靡した番組でした。中にはオイオイというのもありましたが、心に残る番組も数多くありました。

わたしにとって、1999年11月のHⅡロケットの打ち上げ失敗-その原因究明のために海底に落ちたロケットエンジンを探し出すという物語(海底3000メートルの大捜索)もそのひとつです。改めて活字で読みたかったので購入しました。

ターボポンプの共振による疲労破壊、ロケット打ち上げ失敗、超音波による海底探査、わたしにとっては関心を持たざるをえないテーマでした。そこに門馬さんという海底探査のプロが登場します。最初見たとき山本晋也監督に似ているな、と思いました。しかし、物語が進むにつれ、主人公でありながら多くを語らないしかし芯の強そうな、なんともいえない立ち振る舞いと風貌に魅かれてゆきました。忍耐力と洞察力が要求されるところは、非破壊検査屋とも共通する仕事だし、普段はあまり日の当たる仕事ではないことも、そこで働く心意気みたいなものを勝手に想像して、共感していました。

実は、わたしの「絵とき 超音波技術 基礎のきそ」に門馬さんの写真が掲載されているのです。90ページに小さくですが・・・プロジェクトX④の227ページに掲載されている写真と同じものです(一番左が門馬さん)。

海洋研究開発機構(JAMSTEC)に写真の掲載許可をいただくために連絡を取ったところ、写真の掲載は快く承諾していただけただけでなく、原稿のチェックもしていただけました。赤で帰ってきた原稿を見て、わたしのほうから疑問点やこちらの考えをメールや電話で伝えてやり取りをする形になりました。窓口になってくれたのはJAMSTECの広報の方でしたが、原稿をチェックした方の中に門馬さんもおられたと聞きました。それだけでもミーハーのわたしとしては嬉しかったのですが、そのチェックの内容がわたしとしては我が意を得たり、だったのです。

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わたしの本の中に書いてありますが、海底調査船「かいれい」から周波数12kHzの音波を出して90~120度に広げた扇上に探査をして、ここぞというときには無人探査機「かいこう」を海底近くまで降ろして曳航し、42kHzと38kHzの音で詳細に探査をしました。

「かいこう」の出している音を超音波とわたしが書いていたのに対して、門馬さんは「超」を消してきました。なぜかと尋ねますと「音波と超音波を区別する必要がない音波でよいのだ」ということです。超音波は通常20kHz以上の音波のことをさします。海底探査にとって、12kHzを可聴音とし42kHzを超音波とするのは意味がないしわずらわしいだけ、ということのようです。海洋の探査の世界では超音波・可聴音の区別をせずに「音波」といっているということです。

このやり取りは、本の執筆の最終段階でのことでした。

以前にも書きましたが、私は「超音波の定義」を「聞くことを目的としない音」とすることには強い抵抗を感じています。はっきり言って反対です。しかし、最近出ている「超音波本」の多くにこの定義が載っています。一部の学者も「聞くことを目的としない音」を超音波の定義とする、ととられかねない様な(逃げを打てる微妙な表現ですが)記述をしています。今回の本を書くときに、このあたりをどう書くか、ずいぶん悩みました。

わたしの本の14ページにはこのように書いています。

「超音波を利用しようと考えると、超音波と可聴音との境目があまり意味がないように思えるケースが出てきます。目的も原理も同じで、条件によって超音波領域の音を使うこともあれば可聴音領域の音を使うこともあるからです。そのような場合は、超音波なのか否かにこだわる必要はなく、広い意味で音波を使うと考えればよいでしょう。」

多分読者の方は、ほとんど引っかからずに読み進むところだろうと思います。わたしはこの表現にたどり着くまでに長い時間がかかりました。このようなことを書いてある文献があるのか調べましたが、調べた限りありませんでした。そのわたしにとって、JAMSTEC(門馬さん)の指摘は、ひざを何度も叩くものだったのです。

たったこれだけのことなのですが、本を執筆していると引っかかるところなのです。

超音波・可聴音を区別することに実践的な意味がないから「周波数の低い音も超音波にしてしまえ」という議論は、どう考えても乱暴なのです。その場合は上位の(抽象)概念で言えばよいことなのです。わたしはそう思います。

JAMSTECには、「わたしの本は「超音波」の本なので、42kHzは超音波と表現します」と伝えて、了解をもらいました。だって、超音波をすべて音波ということにしてしまうと、本の題名自体が成り立たなくなりますからね(笑)。水という媒質で数十メートルから数千メートルの海底を探る、というところでは20kHzの区別は意味がないということなのです。それでも、波長の長短は、重要な意味を持っています。

音響測深の項は当初1ページの予定でしたが、3ページに拡張しました。本当は、なぜ「かいれい」は12kHzで「かいこう」は38kHz・42kHzなのかについて書きたかったのですが、でもぎりぎりでしたのでこれ以上の増ページはあきらめました。わたしの本を注意深く読んでいただけると、この辺は想像がつくところだろうと思います。ここだけで10ページぐらいは面白く書けるところでした。

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