« 磁粉探傷試験の原理 | トップページ | WiiAccの研究への活用 »

安直な解釈

昨日磁粉探傷の原理について書き、その誤った解釈について書きました

Bluebacks 誤った解釈は、講談社のBLUE BACKSの一冊伊藤泰郎著「見えないものを見る技術」に載っていたものです。

「表面探傷の中で最も代表的なのが磁粉探傷である。試験体を電磁石によって磁化し、その表面に鉄粉を散布する。傷があると鉄粉は付着しないので、鉄粉の付着した模様によって欠陥の存在する分布がわかる。試験体でなく、鉄粉を磁化して散布しても同様である。」(P92)

非破壊検査技術者にとっては、何言ってんだ、というトンデモ文章です。下線を引いたところが核心ですが、“表面探傷の中で最も代表的なのが磁粉探傷”というのも何を根拠にしているかわかりません。

これだけでしたらこうして取り上げることはしませんが、実はこの本、私がわかる範囲でもこのほかにこうした筆者の誤った憶測でしかない記述が、いくつかあるのです。私も本を出しているので、人の本のあら捜しのようなことはしたくないのですが、正直この本はダメです。誤植や勘違いのレベルではないのです。(誤植は私の本にもたくさんあります・・・汗dash

にほんブログ村 科学ブログ 技術・工学へ ポチッと応援よろしく。

人体の超音波診断のところでも、反射を扱いながら音速と減衰係数の違いで診断の適・不適を論じています。私は筋違いだと思います。なぜか説明には音響インピーダンスが出てきません。

わからないことを、適当に解釈して書いているとしか思えません。

この筆者の専門は大型発電機などの高電圧分野とのことですが、専門外のことも書いたのでしょう。

やはり調査が基本だと思うのです。十分調査したつもりで書いても、そのすじの専門家にチェックしてもらうと、色々出てきます。私は記述の正確さと伝えたい筋の関係でそれぞれの専門家と議論をし、教えてももらいました。この議論が意外と面白かったですね。その中のひとつはこちらで公開しています。

こうしたガイド本は、筆者の見識や調査力をある程度信頼して読むことになります。書き手は、そのことを意識しなければならないでしょう。

私は「見えないものを見る技術」の筆者の姿勢に同意しません。面白い題材を取り上げているだけに残念です。

|

« 磁粉探傷試験の原理 | トップページ | WiiAccの研究への活用 »

科学技術」カテゴリの記事

非破壊検査」カテゴリの記事

コメント

こんにちは。なるほど、記述への疑義に対し「誤植(?)とか「意味不明」と僕は表現しましたが、SUBALさんはズバリとダメ出しされたのですね。そこがSUBALさんに遠く及ばぬ僕の甘いところでしょう。けれども当方のブログでも紹介した本が「ダメ」と言われたので、立ち位置の違いはあるものの、言い訳をしておかないといけませんね。
僕は「誤解も理解のうち」と考えています。誤解が真実に直面したとき当人が目覚めるか否か、そこでその人の人間性は語られるべきでしょう。

>こうしたガイド本は、筆者の見識や調査力をある程度信頼して読むことになります。書き手は、そのことを意識しなければならないでしょう。

著述に完全性が求められるのは専門書だけでいいのではないでしょうか。中身を取捨選択するのはむしろ読者の責任です。書かない僕が書き手に求めるのは「完璧」ではなく「良識」です。
たとえばSUBALさんの超音波本で「指向角」について以下の記述がありますね。
…以下、引用
「第一零ふく射角で表す線上は、理論上音圧がゼロになるところですので、超音波の伝搬や反射を考えるときにこの線の内側を超音波ビームであると考えるには無理が出てきます。」
引用終わり…
では、半減角(いわゆる実効指向角)内をビームと考えるのでしょうか?それともビームの輪郭を決めることは、「無理」なので意味がないのでしょうか。残念ながら先生の本には解答がありません。「こんな方法がある」と"紹介"されているにとどまります。
一方、指向角が計算できるからとでもいうかのように非破壊検査協会のテキスト「超音波探傷試験 Ⅲ1989」「同 Ⅱ1990」(古い…)には指向性の絡んだ様々な計算式が出てきます。「ビーム」という表現にはなっていませんが。
さて、結局僕のような現場技術者はテキストにならって指向角という仮想線、別の言葉でいえば「ビームエッジ」のなす角度を受け入れて使うことになるでしょう。
専門書(テキスト)ではない著作物の読まれ方は、読者の自由だと思うのです。
長いコメントで大変失礼いたしました。これでも言葉足らずなのですが…。

投稿: niwatadumi | 2008年3月20日 (木) 16時14分

谷村さんの熱いハートを感じます。
これはしっかり上掲の書籍の不備を指摘し、谷村さんの思う正しい記述をここで連載するべきでは。

以前、私は自分の書いたものについて「間違いだらけ」と指導を受けたことがありました。しかし、どこがどう間違っているのかの指摘がなく、ただ苦い思い出としてだけ残りました。その書き物は、職場の大先輩にアドバイスをいただきながら書いていたものでしたので、その方への顔向けもできず、ただ自分の無能さを恥じるばかりしか出来ませんでした。

きっと、この書籍の著者も、誤りを明確に示されれば喜ぶのではないかなと思うのです。

勝手ばかり書き込み失礼致しました。

投稿: 平田 敦 | 2008年3月20日 (木) 21時05分

niwatadumi さん こんばんは
う~ん、困ったな。私の文章が稚拙なのかうまく伝わらないようです。
まず、私のコメントは、当たり前ですが一読者としてのものです。ですから、niwatadumi さんのいう色々な読み方のひとつです。niwatadumi さんが推薦する理由(非破壊検査を広い目で見よう)を否定するものではありません。ここはまったく同感なのです。
それと、ひとつふたつの間違いがあるからダメだといっているわけでもありません。まして「完全性」を求めているわけでも「完全性」基準にして裁断しているわけでもありません。

専門書だって「完全に正しい」専門書があったとしたら、それ自身がすでに怪しいと私は思います。本当の専門書は完全ではありえない。

磁化した試験体に鉄粉を撒くと傷のところに鉄粉がつかずに傷の分布がわかる、というのは最初の勘違いでしょう。ここはありうることかと思うのです。そこから、だとすれば磁化した鉄粉を撒いても同じことになるはずだ、というのも論理的つながりから出てきてもおかしくない発想です。でも、それが磁粉探傷試験の方法だと書くか書かないか、といところには私は踏みとどまるべき線があると思っています。
niwatadumi さんの指摘に触発されて、他の箇所を読んだら、同じような記述がいくつかあるのですよ。この姿勢が、私はダメだと思っています。自分が知らない分野のことも書かれていますが、そこを読むときに「ごまかしがあるかもしれない」と緊張してしまいます。私が詳しくない分野については、正直言って読む気がしなくなるのです。
私の本の指向角についてのお話は、ごめんなさい、何をおっしゃりたいのか良くわかりません。
「お前の本にも間違いがある、完璧じゃないではないか」ということですか?
「解答を書いていないのは不誠実だ」ということですか?
「指向角だって色々な決め方があるのだから、読み方は読み手の自由」ということですか?
私の本の内容も、書いて読み返してみると表現も含めて反省点はいくつもありまして、次に生かそうと思っていますが、ご指摘の指向角の部分については、書き直したい候補にはいまのところ入っていません。私自身が独学で勉強していたときに、周りでこういうことを言ってくれたらずいぶん早く肩の荷が下りたのになぁ、という想いで書いたところです。
「何で指向角に第一零輻射角と半減角の2つがあるんや、ややこしいことは止めてくれ」と思っていましたから・・・。
JSNDIのテキストでは、指向角は第一零輻射角と半減角です。それは超音波の広がり方(指向性)を数値で表現するための約束事と理解しています。他の指向角の決め方も含めて、指向角を何のために使うかで使い分けるものと理解しています。指向角に基づいて引いた線(3Dでは面)は超音波ビームの内と外を区別する境界ではありません。そのことをはっきりさせる意味もあって超音波ビームソフトを作っています。超音波ビームの形と指向角を表す線との関係を見ていただければと思います。
私は「何でも良いからこれだ」と無理に答を突きつけられると、どうも反発したくなるのです。指向角はいずれにせよ(円形振動子の場合)波長と振動子径の関数になる、ということが重要だと考えています。

投稿: SUBAL | 2008年3月20日 (木) 22時14分

平田 さん こんばんは

本当に技術が好きな人は自分の間違いを指摘されると嬉しいものですよね。「なんだそうですよね」と、自分の知識が高まったことのほうに関心が行きます。
具体的なことを言わずに「間違いだらけ」というのは、卑怯です。
かつて、私が尊敬する研究者の方が出した本について、いくつかの誤りを指摘して、疑問点を書いて送りました。予想通り、私の指摘を歓迎してくれました。私はその方の弟子を自称しています。でも、多分こういうのはレアケースでしょう。
間違いを指摘して書いただけで、「何をえらそうに」という反発が良くあるのです。今回も、この記事を書くか書かざるべきかずいぶん迷いましたし、抑制的に書いています。
この件に関しては、これ以上は書かずに置こうと思います。もちろん筆者と好意的な交流ができれば、別です。

投稿: SUBAL | 2008年3月20日 (木) 22時50分

こんばんは。
SUBALさんの「ダメ出し」は的を射ています。だからこそ僕のブログではSUBALさんの記事に「科学的」という讃辞つきでトラックバックし、さらにこの本の紹介文に訂正を加えたのです。
また、SUBALさんは特にその立場を意識して発言しているわけではないのかもしれませんが、非破壊検査を教育・指導する立場からも、世間の非破壊検査に関する誤解は大いに指摘して当然だと思います。(責任放棄するわけではありませんが僕はいち現場作業員ですからたわごとを述べるのみです。)
さて、指向角の件ですが。これは多分に僕の主観です。

>指向角に基づいて引いた線(3Dでは面)は超音波ビームの内と外を区別する境界ではありません。

これはSUBALさんの考えですね。でもテキストではしきい値法やデシベルドロップ法の前振りとして数式を含め解説しています。僕は「指向角」は微分でいう「限りなくゼロ」なる極限の概念と同じ、約束事にすぎないと思っています。ISOでいう「ビームエッジ」とは異なりますが、しかし境界を定義する条件以外の何物でもないと思うのです。
ついでに言うと、「包絡線」を後進に説明するために実用上ビームの境界という考え方は必要と考えているのです。実用上なので、「副極」は考慮しないという但し書きですが。

テキストではそこにあるものとして考えるように数式付きで掲載しているものですから、僕のような素直な(?)人間はハイわかりましたと了承してしまうのです。ところがSUBALさんの方では明確に境界を決めることができないもの、無理があるものと言っている。つまりテキストを読んだことのある読者を惑わせる…。なのに無理なものをなぜ数式化するのか解説しない…。僕ははぐらかされているような気になったのです。先に書いた「良識」とは「丁寧さ」と考えて下さい。
うまく言い表せませんが、多分いつかSUBALさんが「ビームエッジ」なる語が気に入らないというようなことを書いていたことが、僕の中で引っかかっているのかも知れません。

投稿: niwatadumi | 2008年3月21日 (金) 00時50分

SUBALさん おはよう

私はこの本を書店で手にとってぱらぱらとめくりましたが、結局購入しませんでした。私の感は正しかったようです。

非破壊検査については全くの素人なので具体的な内容については言及出来ません。しかし皆さんのやり取りを見て思い出したのはドゥニ・ディドロの『ラモーの甥』です。
http://ja.wikipedia.org/wiki/ドゥニ・ディドロ
この作品は1761年~1772年に書かれたと推定されています。勿論フランス語で書かれましたが、当時の有名人が実名で登場するので発禁間違いなしでした。
この書が一躍有名になったのはゲーテがドイツ語版を出版したからです。1805年。
岩波文庫版が手元に無いので記憶で書きます。
「教科書はその道に通じていなければ書けるものではありません。初歩の暗闇を照らすのは中程と終わりでさぁ」
ブルーバックスだから広く浅く書いても良いというのは全く逆です。初歩の暗闇を照らすものこそ気合を入れて書く必要があるのですね。

投稿: 271828 | 2008年3月21日 (金) 06時57分

niwatadumi さん
指向角を求める式を学ぶのは、振動子の大きさと波長によって超音波ビームの広がり方が違うからです。超音波の指向性を理解するためです。
実際の超音波ビームは近距離音場はもとより遠距離音場でも簡単には表現できない形をしています(雨だれかなすび?)。超音波探傷を最初に学ぶときに超音波を一本の線で代表して幾何学的に考えたほうが理解しやすいのと同じように、超音波ビームを考えるときに近距離音場限界距離と指向角で簡略化して表現すると理解しやすいということはあります。
しかし、そのことと指向角で引いた線が実際の超音波ビームの内と外とを分けているというのは違うのです。超音波ビームが三角形(3Dでは円錐)であるならば、超音波探傷はもっとシンプルになるはずです。
きず指示長さの測定にしても、なぜDeドロップ法やしきい値法があるのか、超音波ビームの境界が明瞭に数式化できるのならこんな面倒なことはしなくてよいはずです。
指向角に関する私の叙述は、JSNDIのテキストと違っていたり対立することではないのです。
包絡線を見せて、ここがビームの境界ですと示すことができますか?私は、「どこまでかなんだかわからないよな、でもどこかで区切らなければならないから約束事を決めるのだよ」と教えます。その約束事は1種類ではないのです。

投稿: SUBAL | 2008年3月21日 (金) 08時45分

271828 さん こんにちは

>初歩の暗闇を照らすものこそ気合を入れて書く必要

その通りだと思います。これが書き手にはプレッシャーになります。昨年の夏は、このプレッシャーの元でもがいていました。
専門書ならば、すでに学問的に定説となっている定義や数式を並べれば何とか形になります。初歩の暗闇を照らそうとすれば、数式が出てくる現実的な基礎、実用上の必要性などに想いをめぐらせなければなりません。私にライターとしての役割があるとすれば、その辺にあると思っています。現実的にうまくいけているかとは別の話ですが・・・(少々言い訳チック)。
やさしくしかしごまかすことなく書くのにはパワーが要ります。
この本の筆者に「どうせ素人向けだから」というものがなかったのか、この間違いは別の要因であることを願いたいです。

投稿: SUBAL | 2008年3月21日 (金) 09時03分

SUBALさん,試験前のご多忙な折,ニブイ僕のために時間を割いていただき恐縮です。
僕は超音波探傷時にビームを円錐として意識していたのです。その方がシンプルだから。ただ,そう考えても差し支えのない精度の探傷だったと言えます。
いつかまた探傷器を手にしたとき,大雑把さ(?)を確認してみます。有難うございました。

投稿: niwatadumi | 2008年3月21日 (金) 12時24分

niwatadumiさん こんばんは
現在主流である一探触子による超音波探傷では、超音波ビームの形状に関する定量的な情報を利用してきずを評価することはしていません。
エコー高さのピークをとらえる探触子走査が、いまの超音波探傷の基本ですよね。ここにに示されているものは、ビーム中心軸の音圧の高いところだけを使おうとする考え方で、現在の超音波探傷技術を構成する基礎です。逆を言えばピーク以外のエコーの情報は捨てることで成り立っているともいえる。
きず指示長さの測定では、ピーク以外を使っていますが、それでもきずエコーのピークからの差(Deドロップ法)、標準きずもしくは対比きずのピークからの差(しきい値法)をとっているわけで、あくまでも基準はエコーのピークです。特定の超音波ビームの「端」を評価の指標や基準に使っているわけではありません。使えないのですよ。
DGS線図(Distance Gain Size Diagram)を使った評価法は、周波数や振動子寸法を考慮していますが、これとてきずエコーのピークで評価するわけです。周波数や振動子寸法が指定されているのは、拡散損失を考慮に入れるためです。
だから、精度の問題ではなくて、超音波のどこを探傷に使うのかの問題なのです。現状では、超音波ビームが円錐状であると便宜上考えていても、実際の探傷には特に大きな支障は出てきません。
音の広がりという点で言えば、5MHzより2MHzが、φ20の振動子よりはφ10の振動子が、その作り出す音は広がっている、という認識を持っていれば十分なのです。
ただ、断層画像を得ようとすると、ビーム中心軸付近以外の反射の情報も入ってきますから、ビームの形状に関する理解がどうしても必要になっきます。
デジタル探傷器の時代になって、時間軸を距離として読み取ること(ビーム路程の読み取り)や三角関数を使って斜め距離からきず位置を計算すること、などという手間から探傷技術者は解放されますが、私は、今以上に材料内の超音波の挙動について学ぶ必要が出てくるとにらんでいます。
いままでは、切り捨てていたピーク以外のエコーは、虚像の原因にもなりますが、逆手に取ればより詳しいきずに関する情報源であるとも考えられます。
本を執筆しながら、そんなことを考えていました。

投稿: SUBAL | 2008年3月23日 (日) 00時54分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/222291/40561015

この記事へのトラックバック一覧です: 安直な解釈:

« 磁粉探傷試験の原理 | トップページ | WiiAccの研究への活用 »