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破断する寸前の肉厚

3月7日に北海道機械工業会検査部会鉄骨部会共催の検査技術研究会が札幌で開催されました。私も発表をする予定でしたが、やむを得ざる事情で「ドタキャン」をしてしまいました。関係者の皆様に多大なるご迷惑をおかけいたしました。ごめんなさい。

Utd ここには、うちの学生も発表することになっていました。私が出席できないことを聞いて、「えっ!マジですか?」。私がついていることで発表できることにいなっていたので驚くのも無理はありません。

関係者のご理解をいただいて、学生の発表はさせていただけることになりました。

タイトルは「超音波肉厚計測における測定下限とその現象」、発表者は長野塁 福本准也 宮田昌明の3名です。

学校の温水配管で内面腐食をしていたため交換した6インチの鋼管を題材に、データを取って発表をしました。この腐食した温水管の写真は、私の本の149ページにも掲載しています。

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超音波の反射(エコー)を使って、管の内面の腐食による減肉を測定する技術は、現在広く普及しています。エコーを使うパルス反射法の得意分野だといってもよいでしょう。超音波肉厚計という探触子を管外面に当てるだけで、板の厚さをデジタルで表示してくれる装置も販売されています。

Utdprb しかし、実は超音波を使う方法では板の厚さがごく薄くて破断寸前の箇所を判定することは弱点になっています。そこで、薄い箇所を測定するための様々な工夫がされています。その代表が、送信側の振動子と受信側の振動子を別にした二振動子探触子を使用することです。

今回の発表は、肉厚がごく薄くなったときに出る「超音波肉厚計」での「異常表示」の現象を整理して、超音波探傷器で確認するアクションを起こす目安を知ること。超音波探傷器でごく薄い肉厚の場合の特徴的な波形を確認した、というのが主な内容です。

T5mm この波形は、板の厚さが5mmのケースです。横軸が距離を表していて、フルスケールで50mmになっています。およそ5mm間隔で信号(エコー)が立っているのがわかります。

T3mm こちらは3mmです。小山の上に潅木が立っているような風情になっていますが、それでも横軸3mm間隔で多重エコーが立っていることが確認できます。

T06mm こちらは0.6mmです。0.6mm間隔の多重エコーは確認できていません。なにやらパルス幅の大きいエコーのようなものが現れてきています。この原因については、およそ推測がついています。(ちょっと面白い・・・かな)

ここでの提案は、エコーの遅れ時間を距離(ビーム路程)として読むことにこだわるのではなく、特徴的なエコーのパターン認識から「ごく薄い」という判定をしたらいかがでしょう、というものです。

非破壊検査は、あくまで比較法です。現物・実際のきずや破損した部品と対面して、そこから得られる信号と立ち向かうべきです。ただ、実際に仕事をしていると、そのような機会は限られてきますし、またあまり関心を示さない人もいます。

彼らは、ぼろぼろになって穴が開く寸前の鋼管と面と向かって試行錯誤をしていました。その中で、いくつかの貴重な体験と知見を得たのですが、今回はその中のひとつに絞って発表しました。彼らからすると、これが発表に値することなのですか?という疑問が出ましたが、私はそう判断しました。

現場の職人さんレベルでは知っている人がいるでしょうが、しかし方法としては定式化されてはいません。結構知らない人のほうが多いと思っています。

今回の学生の発表ですが、連絡をくれた方からの話によると堂々と出来たようです。質問も3件出て、それなりに答えたとのことです。

私が出席できなかったことで、関係者の方々にはご迷惑をおかけして申し訳なかったのですが、学生たちにとっては良い経験になったのかな、と思います(ハハハ、開き直り)。発表記念として、1Gのメモリースティックをもらってきていました。

昨日卒業式でしたが、「もう、勘弁してくださいよ」といいながら明るく笑顔で卒業してゆきました。

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コメント

こんにちは。エコー,重なってますね…。
発表に値する研究と思います。
デジタルレントゲン判定ソフトも同様なんでしょうが,定量化の第1歩はこうした現場での現象の蓄積が大切ですね。
現場の検査屋さんたちはたぶんこうしたパターン認識技(?)をこっそり持っているでしょう。それを集約したら面白いと思うのです。

投稿: niwatadumi | 2008年3月10日 (月) 12時53分

niwatadumi さん こんばんは

>現場での現象の蓄積が大切ですね。

学者の研究とは別に、現場・現物に沿った現象の確認と蓄積が必要だと考えています。今回のような泥臭い発表が北海道の研究会でも増えてくれると面白くなると思っています。


投稿: SUBAL | 2008年3月10日 (月) 17時53分

毎日、このブログを楽しんでいます。さて、破断する寸前の肉厚の計測、興味深く拝見しました。学生さんが生まれて初めての学会で緊張した様子よくわかります。、将来の大きな糧になったことでしょう。教えてほしいのですが、減肉したパイプの断面写真のどこから破断する寸前ということがわかるのですか。

投稿: K. Hirakawa | 2008年3月12日 (水) 22時41分

K. Hirakawa さん こんばんは
この発表の主旨は、肉厚が1mmを切ると超音波肉厚計では測定下限を下回り異常値がでます、超音波探傷器で調べても底面の多重エコーは出てきません、写真で示した独特の波形になります、というところにあります。(ただし5MHzの二振動子垂直探触子を使用)

この記事には掲載していませんが、肉厚計測をした後、管を切断して残肉厚をノギスで実測をしています。この管は、元厚5.0mmと推測していますが、実測した箇所で一番薄いところは0.85mmでした。使用年数は19年ですから、0.22mm/yの腐食速度となります。常識的な腐食速度かと思いますが、局部腐食になってきていますので、腐食速度は増加することが考えられます。流体は水(平均温度60℃)、圧力は440kPa、管径は6Bです。

0.3mmを切ってくると危ないと見ました。

投稿: SUBAL | 2008年3月13日 (木) 00時29分

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