超音波探傷技術の源流
4月23日にドイツからお客様がみえました。その中に以前から超音波探傷をめぐる交流をさせてもらっている友人とも言えるPeter Renzelさんもいました。Renzelさんに会うたびに色々なことを教えてもらっています。今回の話題のひとつは「超音波探傷の源流は」でした。
Renzelさんによれば、見方によって源流はいくつもある、とのことです。私流に解釈すれば、大河にいたる山の湧き水はいくつもあるということでしょう。それでもあえてといえば、固体中に超音波を伝搬させてきずを最初に見つけたのはロシア(当時ソ連)のSokolovといえるだろう、とのことです。Sokolovが行ったのは、連続波を使う透過法です。これは、レントゲン写真の考え方(X線の透過量の違いで内部の様子を知る)と同じ発想と考えてよいでしょう。現在の超音波探傷法は、山彦の原理を使うパルス反射法(pulse-echo method)です。
Renzelさんにいただいた「Ultrasonic Testing Material」で確認すると、1940年代で探傷に連続波を使う考えは消えてパルス反射法に置き換わりました。「Ultrasonic Testing Material」の中の記述では、パルス反射法を最初に使ったのはおそらくコウモリであろうとしています。以下、「Ultrasonic Testing Material」4th edition pp163-164からの引用・・・
This, by far the most impotant method of non-destructive testing of materials by ultrasonics, the pulse-echo method, was certainly first uesd by bats.
(中略)
The first proposal to use pulse-echo techiques for material testing came in 1940 from Firestone in the USA.
In an independent development in England, Sproule used the method in about 1942. In Germany a pulse-echo system was also developed by Kruse.
戦争という緊迫した状況下ですからね。技術交流などというのんびりした話はなしで、それぞれ別個にということでしょう。
第2次世界大戦後、ドイツで超音波探傷法を確立してゆくのはJ&H.Krautkramer博士兄弟でした。Peterによれば、Krautkramer博士兄弟が超音波探傷を研究しようとしたきっかけは、敗戦後の復興にとって鉄道レールが大丈夫かの確認が差し迫っての課題であったので、その確認に超音波が使おうと試みたこと、とのことです。
日本では、戦後国鉄の研究所がKrautkramer製の超音波探傷器を輸入して、ばらばらに分解してその仕組みを解明しようとした、という話は有名です。医療での超音波検査診断技術の開発に大きく貢献した和賀井博士の著作にもこの話は出てきますし、私が超音波本を書くにあたって取材した先でも開発秘話として聞いた話と一致します。Peterの話を聞いていて、敗戦国ドイツと日本、超音波探傷・・・話がつながってくるな・・・という感じです。
Renzelさんは、私に個人的にお土産を持ってきてくれました。前回は、今はもう使われなくなった水晶を振動子に使った垂直探触子でした。今回は斜角探触子。なにやら横に変なものが着いています。
裏をひっくり返してみると、なるほど。接触媒質をアクリルの楔中央から出してやろうというわけです。
斜角探触子は振動子から発信された超音波をアクリルの楔を介して試験体中に斜めに超音波を伝搬させます。
現在でも接触媒質を連続的に供給するシステムは色々に工夫されています。
超音波は空気を介すると大きく減衰するので、探触子と試験体との間を(水・油・グリセリン水溶液などの)液体に置き換えます。この液体のことを接触媒質といいます。
およそ40年前に作られたものとのことです。私は、このような試行錯誤の過程が大好きです。Peterはそのことをよく知っています。「ドイツに来ればまだまだいっぱいあるよ」とまたドイツに来るように誘われました。
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