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苫小牧市での鉄道レール破断現場

地元苫小牧市で、JRのレールが破断しているのが見つかったとの報道がありました。

Cimg2343 車でいける距離なので現地に行ってきました。現場は苫小牧市内西部、北海道では車の往来も列車の通過も多い部類に入る踏切です。

             

概要を北海道新聞の記事から・・・

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 JR室蘭線でレール破断(05/30)

 【苫小牧】三十日午前一時半ごろ、苫小牧市糸井六九のJR室蘭線「新通り踏切」で、運行管理システムが異常を感知し、JR北海道が点検したところ、線路の一部が破断しているのが見つかった。同社によると、列車の運行に支障はないが、念のため、室蘭線上りは同日始発から現場付近を徐行運転しており、特急含め約三十本に終日二、三分程度の遅れが出る見通し。

 同社によると、レールに二十五ミリのすき間が開いていた。破断の原因や、レールを交換するか補修するかについては三十日深夜以降に調べる。

 同社のレール破断は昨年十二月二十一日の北広島市の千歳線のトラブル以来、五カ所目。今回の破断個所は緊急点検の対象外だった。

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続報

亀裂兆候なし レール劣化か 室蘭線破断(05/31)

 【苫小牧】苫小牧市のJR室蘭線の踏切で三十日未明に見つかったレールの破断は、JR北海道の同日の調査で、亀裂の兆候がなく自然発生した初の事例だった可能性が高まっている。昨年十二月からの半年で四件と相次ぐ幹線での破断に、レールの管理体制の見直しが迫られそうだ。

 同社は三十一日未明、鉄道総合技術研究所(東京)と詳細な現地調査を行うが、これまでの調べでは、通常、内部に見られる水平、垂直方向の亀裂が今回の破断面には確認できず、表面には車両の加重で痛んだ黒ずみや削れた跡もなかった。

 同社は破断対策として、亀裂の芽を四段階に分け、道内三千カ所以上で把握、レール交換や補強を行うが、今回の地点は二十日の探傷車検査でも反応はなかった。同社は「人為ミスの可能性は低い。踏み切りでの破断も初めて」とし、原因究明に時間がかかるとの見方を示している。

 ただ過去二十年で二十四件発生した破断のうち、今回を含め昨年十二月以降の四件は敷設二十年以上のレールを重量のある貨物列車が頻繁に通過していたことが分かっている。金沢工業大の永瀬和彦教授(鉄道システム)は「列車重量や敷設年からレールの劣化が進んでいた段階と推測できる」と話している。

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続報中の「亀裂の兆候がなく自然発生した初の事例だった」という文章はなんとも不可解な表現ですが、後のほうを読むといわゆるレールシェリングではなかった、ということを言いたいようです。レールシェリング(rail shalling)は、転がり接触疲労のひとつで、squatとかdark spotとかと呼ばれる場合もあります。

レールシェリングは現在のレールの疲労破壊の代表例とはいえるらしいですが、レールの疲労破壊のすべてではないでしょう。疲労破壊であれば、よほど特殊な場所でなければ、たいてい検出は可能です。問題はそこに起きると予想出来るか否か、適正な検査方法の選定、そして検査頻度の設定です。

仮に亀裂の兆候がなく突然破壊したとすれば、脆性材料の脆性破壊が考えられますが、まさかレールに脆性材料を使っていたということはないでしょう。

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31日の15時ごろ現地に行きました。列車は通常のスピードで通過してゆきましたから、レールの交換は終わったのでしょう。

Cimg2346 踏み切りの外れに、レールを溶接した跡がありました。浸透探傷試験をやった痕跡も残っていました。昨夜真夜中の作業でしょうね。溶接後は、放射線透過試験か超音波探傷試験を実施したのでしょうね。

Cimg2348 レールの上部は余盛を削除してフラットになっていますが、サイドと下部は余盛がついたままです。止端部が新たな疲労亀裂の原点になることはないのでしょうか。

昨日現場に行っていれば、亀裂そのものを撮影できたのかもしれません。残念です。

通常見られる破壊ではないとしたら、なおのこと徹底した原因究明をしてほしいものです。

追記:まだ読んではいませんが、鉄道レールの金属疲労についてこんな新刊本が出ています。平川賢爾著「英国高速鉄道ハットフィールド脱線事故の真相―レールの金属疲労は何故起こったか―」 

著者の平川さんからコメントが寄せられています。

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科学技術」カテゴリの記事

コメント

こんにちは。鉄道レールの検査は未経験なので素人発言です、とお断りして…。枕木と枕木の中間あたりで折れているようですね。軌道地盤の浮沈管理がどのようにされているのか気になります。
溶接後に超音波で検査したのだろうと思います(レントゲンは大変そうに見えるから)が、接触媒質の除去が困難なので普通は浸透探傷が先だと思いませんか?
それにしても、浸透探傷の現像剤が拭き取られていないとは…。
素人には不思議な写真です。

投稿: niwatadumi | 2008年5月31日 (土) 18時49分

niwatadumi さん こんばんは

検査屋さんらしいコメントで・・・。
私もレールの検査はしたことがありません。とお断りして・・。

この箇所は、破断した箇所ではなくて、当該レールを取り除いて別のレールを溶接で接合した場所であろうと推測しています。

溶剤除去性染色浸透探傷試験を実施するにはいかにも面が粗いわけです。浸透液の赤も見えていますよね。

横に濡れているように見えるのが、超音波探傷を実施したときの接触媒質だと思われます。だから、PTの後にUTという順番でしょうね。

ここから、超音波探傷が実施されたのは頭部だけと推測できます。下のほうは放射線透過試験をしていないと内部は未検査ということになります。それはいくらなんでもないだろうと思うのです。

超音波もX線も浸透もやりにくそうですね。それも深夜もしくは明け方の仕事でしょう。

投稿: SUBAL | 2008年5月31日 (土) 19時19分

レールの破壊事故が北海道であったとのこと、北海道は九州から遠く、知りませんでした。驚いています。実は、今月28日に「レールの金属疲労はなぜ起こったのか」を上梓したところでした。英国のハットフィールド脱線事故のように2年間英国幹線を麻痺させるような事故でなく、ホッとしています。世界中で、まだレールの金属疲労は無くなっていません。まだ亀裂の発生メカニズムも解明までは程遠い現状です。超音波探傷による検出も、英国では問題がありました。実際のレールの亀裂が正確に検出できるよう、非破壊検査の技術者の協力が必要です。

投稿: K.Hirakawa | 2008年5月31日 (土) 20時19分

K.Hirakawa さん こんばんは

実はこの記事を書くためにWEB上を検索していて、K.Hirakawaさんの新しい本が発刊されていたのを知りました。
早速購入して勉強をさせていただこうと思っています。

北海道では、昨年からレールの破断が何件かおきています。それで私もレールシェリングなどという言葉も覚えたのですが、この亀裂を検出し亀裂サイズを測定するのは簡単ではなさそうです。

英国はレールの探傷では古くからの技術の蓄積があるはずですがね。

投稿: SUBAL | 2008年5月31日 (土) 20時30分

SUBALさん、さっそく本を謹呈いたします。メイルで送り先を教えてください。

投稿: K.Hirakawa | 2008年5月31日 (土) 20時38分

K.Hirakawa さん
これは大変光栄です。別便でメールをしました。
ありがたく勉強をさせていただきます。

投稿: SUBAL | 2008年5月31日 (土) 22時02分

えっ。これは買わなくては。
つらつら考えていました。これは想像になりますが、多分当該区間は主要幹線で重量貨物(とはいえ米英には比較にならぬ)が深夜にも通る区間ですから、まず全体のレールを外すには時間がなさ過ぎる。そこで暫定的に切除して(踏切内では切れないのでその外で)暫定的に溶接し管理用の検査をしたのだろうと思います。レール溶接は品質管理の上から、ガス圧接・テルミット溶接・エンクロ溶接が多いのですが、写真を見ると現場用としてテルミット溶接(酸化鉄とアルミニウムの粉末溶剤を化学反応させて生成した溶鋼を、鋳型内に流し込み溶接)を使って、欠陥が起こりやすい手法ですので、現場で出来る限り検査で品質保証をしたという感じですね。

投稿: デハボ1000 | 2008年6月 1日 (日) 04時13分

デハボ1000 さん おはようございます

テルミット溶接って今でも行われるのですか。しかも今回のこれがその可能性がある、ということですか。
これは、溶接直後の貴重な写真を撮れたことになります。検査の痕跡が残っている状態です。
テルミット反応は職場で何回か実験・実演をしています。「昔、レールの溶接にはこのテルミット反応を応用していた」と説明していましたが、間違っていましたね。
深夜に実施したとしたら、周囲は異様に明るくなったことでしょう。

投稿: SUBAL | 2008年6月 1日 (日) 09時23分

Interesting!

See
http://www.jsndi.jp/bulletin/J_01_Mar03.html
レールエンクローズアーク溶接部の信頼性向上に関する検討
深田 hoka

http://bunken.rtri.or.jp/PDF/cdroms1/0009/2008/0009000143.pdf
名村 明 

投稿: K Ono | 2012年11月28日 (水) 12時29分

K Onoさん

情報ありがとうございました。
勉強させていただきます。

投稿: SUBAL | 2012年11月28日 (水) 20時42分

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