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JR室蘭線 レール破断の原因

JR室蘭線・苫小牧市内で起きたレールの破断について継続して書いています。昨年から、札幌室蘭間の千歳線・室蘭線で5件のレール破断がおきているのです。ハインリッヒの法則を持ち出すまでもなく、重大事故が起きなければ良いが、という気になります。

報道では、破断の原因について底部の腐食との発表があったとしています。

まず読売新聞

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室蘭線レール破断 底部腐食が原因か(2008年6月3日)

 苫小牧市のJR室蘭線の踏切で先月、発生したレール破断事故で、JR北海道は2日、腐食したレールに列車の荷重などで亀裂が生じ、破断に至った可能性が高いと発表した。現地でレールの破断面を調べた鉄道総合技術研究所(東京)が見解を示した。

 踏切はコンクリートブロックにレールを敷く構造だったが、コンクリ部分とレールとの間に汚泥がたまり、レール底部が腐食。通過列車の荷重、振動による力が腐食部分に集中して亀裂が生じ、破断に至ったとみられるという。

 破断したのは長さ8154メートルのロングレールで、JRでは、破断直前の5月20日にレール内の傷を探す専用車両で調査したほか、29日にも徒歩で巡回していたが、異常は確認できなかったという。JRは破断原因の調査を続けると共に、ロングレール区間にある同じ構造を持つ踏切31か所でレール底部の亀裂の有無の検査を行って、再発防止を図りたいとしている。

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続いて北海道新聞

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JR室蘭線のレール破断 原因は底部湿潤での腐食(06/03)

 【苫小牧】苫小牧市内のJR室蘭線の踏切で五月三十日未明に見つかったレール破断の原因についてJR北海道は二日、踏切内にたまった汚泥でレールが湿って底部が腐食し亀裂が発生していた可能性が高いと発表した。

 同社によると、過去発生した二十四件の破断のうち、レール底部の腐食が原因と推定されたのは初。二日までに、同様の構造を持つ道内の踏切三十一カ所で、検査を始めた。

 同社と鉄道総合技術研究所(東京)が五月三十一日、現地調査したところ、踏切内のコンクリートの車道部分で、レールが敷かれたくぼみに汚泥がたまり、ボルトで締める底部が腐食。列車の重さが加わり、ここから二十五ミリの破断が起きたと推定した。底部のため超音波検査では反応しなかったという。

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Railname どちらの記事も、レール底部の腐食から破断したといっています。読売新聞では、レール底部の腐食から亀裂が生じたとしており、北海道新聞の記事では腐食→破断、という記述になっています。

両記事とも「金属疲労」とか「疲労亀裂」とか「疲労破壊」という用語がなぜか出てきません。

底部に腐食が起きたとして、そこから一気に破断するような壊れ方は、レールの材質からして考えられません。あるとしたら、底部の腐食を基点とした疲労亀裂の進行による破壊です。なぜ「金属疲労」の用語を避けているのでしょうか。

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現在、レールの疲労破壊のほとんどはレール頭部から始まる亀裂によるものとのことです。日本では、レールシェリングと呼ばれています。

当初の報道は、レールシェリングの特徴である「通常、内部に見られる水平、垂直方向の亀裂が今回の破断面には確認できず、表面には車両の加重で痛んだ黒ずみや削れた跡もなかった」ことをもって、「亀裂の兆候がなく自然発生した初の事例だった」との見解が述べられています。

これは徐々に亀裂が進行する疲労破壊ではない、といっているように聞こえます。破面を見ればたいてい破壊の起点はわかります。破壊の起点が頭部ではなくて底部だったのでしょう。つまり、レールシェリングではない疲労破壊であった。今日引用した報道は、当初の見解と無理やりつじつまを合わせているように聞こえます。

「底部のため超音波検査では反応しなかったという。」という見解は、5月20日の検査は、頭部からの亀裂を監視しただけであることを表明してます。

しかし、レールの疲労亀裂が頭部から進行するものだけというのは誤った思い込みではないでしょうか。

誤った思い込みによって検査をすれば、当然のように見逃しが起きます。検査をしたすぐ後に、レール破断が起きる、昨年から繰り返されているこの不思議な現象の謎を解く鍵がこの辺にありはしないでしょうか。

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    コメント

    こんにちは。お近くでの事故、解明が急がれますね。鉄道と航空機とやや異なりますが、生徒の皆さんは自分たちが学んでいることをより身近なものに感じるのではないでしょうか。

    投稿: KADOTA | 2008年6月 5日 (木) 22時37分

    KADOTA さん こんばんは

    昨年から近くで何件か連続してレールの破断事故が起きていましたので、ニュースは注目していました。
    正直なところ最初現場に行ったのは「教材」になるかな、と思ったからでした。
    現場を見て、いくつかの疑問が頭をよぎり、この検査まずいのでは、という直感が働きました。
    躊躇はしましたが、黙っているわけにはいかなくなっているというところです。
    杞憂であってくれれば良いのですが・・・。

    投稿: SUBAL | 2008年6月 6日 (金) 00時47分

    はじめまして。
    私は関西で鉄道保線の仕事をしています。

    レール底部が腐食してもレール破断は発生します。
    ではどんな条件下で破断するか。

    大気温が低温になり、レール鋼が冷やされ収縮する場面です。

    レールが縮もうとしても、枕木や砂利(バラスト)により固定されているので、レールは縮めません。そのとき、レールに引張力が生じます。このとき、レール底部の腐食部を始点にレールは引張力に耐えられなくなり破断します。

    レール破断の発生している時期は、大体気温が下がっている時期がそれを裏付けています。

    保線の仕事としては、それらレールの欠陥を早期に発見し、部分交換や、破断しても影響がないような対処をすることです。

    投稿: 保線屋 | 2011年9月17日 (土) 21時54分

    保線屋 さん

    ご教授ありがとうございます。
    気温変化による収縮が拘束されて熱応力が発生することは理解できます。腐食と熱応力だけが破壊の要因とすれば、腐食によってどの程度の断面積の減少がある場合なのでしょうか。本当にそんなことが実際に起きているのでしょうか。起きているとしたら認識を変えなければなりません。

    投稿: SUBAL | 2011年9月18日 (日) 13時41分

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