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超音波によるレールの保守検査

先月5月17日の北海道新聞には、こんな記事が掲載されていました。

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レール破断見逃さない

JR北海道の「レール探傷車」 札幌近郊からスタート 

線路の傷を超音波で検査するJR北海道の「レール探傷車」の本年度の出動が、 札幌近郊で始まった。道内では、昨年十二月と今年二月にレール破断が 相次いで見つかっており、担当者も細かな傷も見逃さないよう、 厳しい目でデータを見つめている。

探傷車は三年前の導入。ふだんは岩見沢レールセンターに所属し、 雪のない五月から十月の間、定められた検査スケジュールに従って道内各地に“出張”する。

前後を動力車に挟まれた探傷車の最高速度は時速四十キロ。 検査は旅客列車の運行終了後の未明に行われ、岩見沢-江別間など、 一日約二十キロメートルのペースで進められる。

水を吹きつけたレールに超音波を当てて、その跳ね返り具合で、傷の有無を判断する。
担当者が車内でモニターを見ながら確認。不審な個所があった場合は保線部署に伝えられ、 精密検査となる。

「利用者に迷惑をかけぬよう、これまで以上に厳密な目で検査を」と担当者。
列車は今後、函館、旭川と長旅を続ける。

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夜間の列車通過本数の少ない時間帯を狙っての仕事になりますから、やっている人は大変だろうと思います。レール探傷車と呼ばれる特殊車両を走行させながらレールのきずの有無を調べてゆきます。

5月30日に苫小牧市内で起きたレールの破断現場も、このレール探傷車で5月20日に調べたばかりだったと報道されています。

では、どのような探傷が行われたのでしょうか。

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JR北海道のレール探傷装置と検査要領がどのようなものなのか、具体的な資料がありませんので詳しくはわかりません。レールの損傷にあわせていくつかの垂直・斜角探触子を組み合わせている、ということは常識として想像できます。

Railtest3 現実に販売されている装置や探触子から見てゆくと、K&H.Krautkramer"Ultrasonic Testing of Materials"に記載されている方法がベースになっていると考えてよさそうです。

いずれも周波数は2MHz、垂直探触子で主にウェブにあるボルトホールから伸びる亀裂を、屈折角70度の探触子をペアにして頭部の前後方向を、屈折角35度の探触子を2つ使ってV透過法で底部からの亀裂を、それぞれ監視するようになっています。

2MHz屈折角70度の探触子は、超音波ビームが表面近くまで広がり、少しややこしい探触子で、通常溶接部などの探傷では使いません。漏洩表面波などについてよく知っている人が使えば、表面ごく浅いところのきずも見つかるはずです。

Fig3 鉄道総研のこちらの論文(寺下義弘・設楽英樹「レール等に潜む損傷の検査法」)を読むと、レール頭部からの疲労亀裂は、表面の浅いところをほぼ水平に走ることがあり、この横方向の亀裂が妨害要素になって、縦方向に伸びる亀裂を見逃してしまうことがあるようです。(図3・5・6は同論文から引用しました)

Fig5 そこでレール頭部側面からの透過法でこの欠点を補うように考えられています。

深さを測定するのは6dBドロップ法を採用していますから、探触子の縦方向の走査が必要になります。そうすると探傷スピードはぐんと落ちますね。

これはレール探傷車での方法ではなくて、異常が検出された際の精密測定時のやり方かもしれません。

ところで、底部からの亀裂には屈折角40度前後(37度というのがありました)の斜角探傷で見ることになります。

装置のシステムの中には、底部に超音波を伝搬させる仕組みが組み込まれていないものもあるようです。

底部の腐食を起点とした疲労亀裂の場合、昨日紹介した大井川鉄道の脱線事故のケースですと、頭部からの斜角探傷では見つからないことになります。

底部の腐食を起点としたレールの破断がレアケースということなのでしょうか。

とすれば、通常ではない状況が大井川鉄道の現場と苫小牧市の現場にあったはずです。その解明が急がれます。

底部からの疲労亀裂が、たとえレアケースでも保守検査では検出できないうちに破断に至ることがあるとすれば、検査方法の改善以前に見直さなければならないことがあるはずです。

少なくても、施工時に底部に応力集中源となるようなきず・切り欠き・断面急変部は除去するようにしておくべきでしょう。

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