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レールの非破壊検査 浸透探傷

苫小牧市で起きたレールの破断について、現地でレール交換後溶接された箇所を見ることができました。そこには非破壊検査をした痕跡も確認できました。

ただ、現地の様子は私の目から見ていくつか疑問が出てくるものでした。

JRの「レール溶接部の非破壊検査要領(2004年版)」(以下「レール溶接NDT要領」と略します)を見ることができました。ところが、この非破壊検査要領を読むと、疑問が解決するどころか、むしろ広がってきたのです。

この要領では、「1.はじめに」の項で、適用範囲が述べられています。

本要領は、溶接欠陥の検出を目的として、溶接施工時に行う『レール溶接部の非破壊検査(超音波探傷、磁粉探傷、浸透探傷)の方法』を示したものである

溶接施工時の非破壊検査としては、超音波・磁粉・浸透を実施するということのようです。RTはありませんね。

そこに記載されている内容と、現地の様子にはずれがあります。

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最初に浸透探傷について書きます。

浸透探傷は、溶剤除去性染色浸透探傷法で行う。本要領に示していない事項についてはJIS Z 2343-2001による。

とされています。ここは現地の様子と一致します。通称カラーチェックとかダイチェックいわれる方法です。ベースはJIS Z 2343-2001「非破壊試験 ― 浸透探傷試験 ― 第1部:一般通則:浸透探傷試験方法及び浸透指示模様の分類」に従うということですから、わたしの持っている経験と常識を適用して考えてよいことになります。

私の直感は、溶剤除去性染色浸透探傷法を適用するには、いかにも探傷面が粗いということでした。後にその溶接がテルミット溶接であり、テルミット反応による還元作用と熱で液状になった鉄を鋳型に流し込むというほとんど鋳造ともいえるプロセスを見て、面の粗さは合点がいきました。鋳肌の鋳物に、溶剤除去性染色浸透探傷試験・速乾式現像法は探傷面が粗すぎて、適しません。この肌ならば、水洗性染色浸透探傷試験を検討すべきと思います。水洗性染色浸透探傷試験にも、現場溶接部に適用可能な水型エアゾール洗浄剤を使う方法があります。溶剤除去性染色浸透探傷試験よりは、余剰浸透液の除去・洗浄の時間は短縮できます。

「レール溶接NDT要領」には浸透探傷試験の「4.2 探傷準備」の項にこのような記述がされています。

レール溶接部の全周の余盛が滑らかになるよう、グラインダーで研磨する。研磨したレール表面は、探傷結果の判定に支障をきたすような段が残存しないように丁寧に仕上げること。なお、探傷面は、溶接部全周で溶接部の両側に30mmを加えた範囲とする。

Railndt_2 余盛はレール頭部以外は削除されていません。側面溶接止端部の段差は擬似指示模様の原因になりそうです。

側面の余盛部に少しだけグラインダーの歯が当たった箇所は見受けられますが、大部分は「鋳肌」のままです。

よく見るとテルミット溶接時の砂型のかけらと思われるものがついています。これでは、その下の溶接部にきずがあっても検出できませんし、赤い浸透液が周囲に大きく広がってしまうはずです。赤い浸透液が広がった部分はきずがあっても検出されません。

私が持っている資料はごく限られたものです。もっと別の文書があるのかもしれません。それでも私はJIS Z 2343-2001をベースにした「レールNDT要領」の記載と現地の様子との間には食い違いがあると思います。

超音波探傷の要領と、現地の様子も食い違いがあります。実は、私はこちらのほうが心配なのです。「レールNDT要領」に記載されている方法でどうも検査がされていない箇所がありそうなのです。それも重要と思われる箇所で・・・。ここは稿を改めて書きます。

この記事を書くことに、じつはずいぶん躊躇しました。分野が違うとはいえ、同じ検査屋仲間が行った仕事です。それでも、この分野を勉強してきたものとして、言わざるを得ません。私の心配が、単なる杞憂であり、この記事自体余計なおせっかいであり、私が認識違いを「ごめんなさい」と謝罪しなければならない結末であることを、私自身は欲しています。

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非破壊検査」カテゴリの記事

コメント

こんにちは。「レールNDT要領」関連について未勉強とお断りした上でコメントです(でしゃばりでスミマセン)。
レールをI形鋼の接合部とみて全溶接断面を見ようとすれば上・下フランジ,ウェブ(名称は建築鉄骨から借用)と3つに範囲を分ける必要がありそうです。この3要素のつながり部分はRがついているので探触子は乗りませんね。自動探傷ではいっぺんにやるのは難しいでしょう。できるとすれば上フランジだけ。もっとも,溶接線としては短いので自動でやる意味は客観的データ採取のためだけになりますね。とすれば手探傷。それでも下フランジはスラントがついていて板厚が変化しますからなかなか難しい。うーん,垂直,斜角1探・2探と手先の手法を変えるだけでは厳しい検査です。鉄道総研等いろいろな機関で研究がなされた結果の要領なんでしょうが。

投稿: niwatadumi | 2008年6月 4日 (水) 10時42分

niwatadumi さん こんばんは

I形鋼の接合部と見るというのは、ほぼ正しいと思います。少しウエブの部分が太いので、ここを超音波ビームを通すことが可能というところでしょう。

力のかかり方や、疲労破壊の仕方にレール独特のものがあるようです。

超音波探傷に関しては、JIS Z 3060を引用しています。

新しい記事に少し書きましたが、niwatadumi さんならもう私の言いたいことはお分かりでしょう。ちょっと明日まで待ってください。

投稿: SUBAL | 2008年6月 4日 (水) 23時12分

浸透探傷試験の判定はどのように行うのですか。
ご教授願います。
宜しくお願い致します。

投稿: 浜野優 | 2008年7月 4日 (金) 15時29分

浜野優 さん ようこそ

合否判定ということですね。
新党探傷試験を実施してきず指示模様が検出されたならば、まずきずの分類を行います。きずの分類の仕方については、JIS Z 2343に規定があります。
独立した指示模様については
割れによる浸透指示模様
線状浸透指示模様
円形状浸透指示模様
に分類して、寸法を測定して記録します。(詳しくはJISを参照してください)

JISに規定されているのはここまでです。

合否判定基準は、機器や構造物ごとに材質や使用条件を考慮してそれぞれ決められます。

たとえばこちらのように

http://www.kepco.co.jp/knic/meeting/genshiryoku/nenryo4_3.html

浸透探傷試験にかぎらず、非破壊試験は破壊試験の裏づけを持って成立する比較試験ですから、非破壊試験の手法の側から合否判定基準を決められる性質のものではないのです。

投稿: SUBAL | 2008年7月 4日 (金) 22時56分

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