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レール溶接部の超音波探傷

JRの「レール溶接部の非破壊検査要領」には、溶接後の超音波探傷の要領が記載されています。

2MHz・公称屈折角45度の斜角探触子を使い、一探触子法と二探触子法で探傷するように規定されています。

Jrndt1 こちらの図は、「レール溶接部の非破壊検査要領」に記載された二探触子法を示す図です。底部もその対象であることがわかります。

Cimg2348 苫小牧市でレール破断後5月31日未明に実施したと思われるテルミット溶接によるレール接合の写真です。レール底部の超音波探傷の際に探触子を走査する面には、鋼が溶けてダレた跡や粒状のものが付着しています。適正な超音波探傷ができているのか疑問です。

今回のレール破断が底部の腐食が起点であったことから考えれば、底部に何らかの欠陥が存在してそこが応力集中源になれば、疲労破壊の起点になりついには破断に至ることがあることは、明らかです。

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鉄道総研が出しているこちらの論文(Y.Terasita “Analysis of Damaged Rail Weld”)では、テルミット溶接は他の溶接方法と比較して欠陥が出やすいと書いてあります。

Lack_of_fusion またこの論文の中に注目すべき記述がありました。左の図を見てください。簡単に要約しますと、

1994年以降実施されたテルミット溶接では、Lack of fusionがなくなった。それは二探触子法による超音波探傷をレール底部に適用した結果である。

Lack of fusionは融合不良のことで溶接金属とレールとが着いていないこと意味する、危険な溶接欠陥です。超音波を当てたら融合不良が消えてなくなることはありませんから、この記述は超音波探傷の実施で溶接施工方法が改善されたり注意が払われるようになった結果なのでしょう。適切な検査が実施されるようになると、欠陥自体が製品に生じなくなるということは良くあることです。

2probes この記述は、裏を返せば二探触子法による超音波探傷を適用しなければ融合不良が現場に残りうるということを示しています。

また、この論文では二探触子法の適用以降テルミット溶接の欠陥は少なくなったものの、シュリンケージ(巣)は依然として発生すると書いています。溶接にシュリンケージは少し違和感がありますが、テルミット溶接のプロセスは鋳造そのものといっても良いので、この欠陥が出てくるのも納得のいくところです。

私は新聞記事を読む限り、JR北海道の担当者は底部からの疲労亀裂の進展に関心が薄い、あるいは注意していないというニュアンスを感じるのです。もちろん記事は新聞記者が書いていますから、記者の知識や関心のありように左右されますから、断定はできませんが・・・。

P.S. 当初の記事では、底部の超音波探傷は実施していないのではないか、との論調で書いていました。Ikegayaさんのコメントを受けて、実施していないという確かな証拠はありませんので、表現を修正させていただきました。(6月8日)

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コメント

SUBARUさん、ずいぶんがんばって調べておられるようですね。九州では新聞の片隅にも載らないので、事故の詳細がわかりません。近くで何回も起これば、お調べになる気持がよくわかります。そこで、お尋ねですが、レールの事故は、溶接部で生じたのでしょうか。
溶接部でなくても、レール底部の腐食を原因とする破壊は、平成14年2月27日の大井川鉄道脱線事故に見られるように、起こりうることです。

投稿: K.Hirakawa | 2008年6月 6日 (金) 10時28分

K.Hirakawa さん こんにちは

情報ありがとうございます。

私も新聞等の限られた情報しかえられませんので、詳しいことはわかりません。
今回の苫小牧市でのレール破断が、溶接部なのか否かもわかりません。底部の腐食からの亀裂という報道がされていますので、溶接部ではないのだろうと推測しています。

頭部から進展する亀裂と底部から進展する亀裂をどのようにとらえようとしていたのか、実はここが一番知りたいことです。保守検査要領が手に入ればわかりますが、現在調査中です。
ここ最近千歳線・室蘭線で起きているレール破断は、「レールシェリング」「不適切な溶接補修」「底部の腐食を起点とした疲労」と多様な原因があるようです。
保守検査は、多様な原因の兆候を早めに見つけることが求められると思います。簡単ではなさそうです。

ここ数回にわたって書いています記事は、今回の破断の原因やその対策の話からは少し外れています。
いまブログの記事にしているのは、レールを交換した際の溶接部を見たときに「現場の始末の悪さ」「検査跡としての落ち着きのなさ」といった現場で感じた直感を、検査方法の側から検証してみています。どうもいかんなぁ、という感想です。

投稿: SUBAL | 2008年6月 6日 (金) 20時17分

私はレールの超音波探傷試験を行ったことがないのでこのコメントが正しいかわからないところがありますが、あえてコメントを送ります。
底部の超音波探傷試験が表面粗さがかなり粗いということで実施していないのではないかというコメントですが、これは正しくないような気がします。
理由は、このような溶接部で2探触子法を適用する場合、この底部の側面同士の透過法で基準のレベルを定め、探傷時にはこの基準レベルに対して探傷器のゲイン値ある数値だけ高め(ほかの同様な継手では+24dB)、探傷作業を行うことが常識的に考えられます。
その辺の詳細は、レールの圧接継手から派生した鉄筋ガス圧接継手の超音波探傷方法を参照してください。(JIS Z 3062)
ですから、この場合透過法で測定で表面粗さの影響を受け、その分だけ高い探傷感度となりますので、探傷時に表面粗さの影響を補正した探傷となり適正な探傷感度での探傷となります。
ただし、透過法で十分な高さの透過パルスが得られないもしくは探触子位置で極端に透過パルスの大きさが変動する場合には表面粗さの物理的な修正が必要になりますが。
実際、このように表面粗さが粗い場合でもそこそこバラツキが少なく、実用的な探傷が可能と経験的に感じています。(具体的な話として、鉄筋継手ので、通常のリブ付きの鉄筋ではなく本来は機械式継手を行うネジ鉄筋でのガス圧接継手の超音波探傷試験の例です。このネジ鉄筋では探傷面の粗さは写真と同等のことがあります。)
ですから、この写真からだけでは、底部の縁付近にグリセリンの付着跡のようなものが確認されるので、むしろ何らかの超音波探傷試験が実施された考えてよいと思います。
また、1探触子法でも2探触子法での探傷器のゲイン値が平滑な鋼材との差がどのくらいか確認していれば補正を行い適正な探傷が可能と考えられます。
なお、このような継手でレールの軸に対して垂直な方向のある程度の厚さの面状欠陥(10μm以下の極端に薄い面状欠陥では超音波が透過してしまう)に関してはこの2探触子反射法はかなり検出性が高いと感じています。ですから、もし適正に2探触子法が適用されていれば、この溶接部の重大な欠陥は検出しているものと考えてよいのではと思います。

投稿: Ikegaya | 2008年6月 8日 (日) 21時18分

Ikegaya さん こんばんは

コメントありがとうございます。
ご指摘を受けて考えて見ますと、確かに実際にレール探傷を実施したことがないのに、断定調で書いてしまったことには問題があるかなと感じました。表現を修正させていただきます。

ただ、写真ではわかりにくいかもしれませんが、底部の探傷面には溶けた鋼のダレのようなもの、スパッタ状のもの(スパッタではないと思いますが)がついているのです。この状態で探触子の走査ができるのか私は疑問に思いました。伝達損失の補正ではすまないように思いました。表面粗さという表現が不適切だったかもしれませんね。

なを、手許にある「レール溶接部の非破壊検査要領」によれば、感度調整はレールを加工した対比試験片の人口きず(形状等は不明)からのエコーを80%に調整して行うようです。感度補正に関する記述はありません。表面粗さも減衰係数も対比試験片と同等ということなのでしょう。


投稿: SUBAL | 2008年6月 8日 (日) 22時42分

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