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水上飛行機エンジンの破断

カナダにいる卒業生から貴重な画像を提供してもらいました。メールの説明によると・・・

「・・・水上機のエンジンがフェールしました。その時は教官と生徒が訓練のため近くの湖にて離着水の練習中、再度離陸する際にエンジンの異常振動が発生したため、すぐさま着水しました。湖一面オイルだらけだったそうです。後日飛行機を湖からベースの空港に運び、カウリングを開けました。みごとにシリンダーが割れてました。」

Dscn4689 特に大きな怪我等がなくて幸いでした。水平対抗のレシプロ(ピストン)エンジンのシリンダーです。詳細はわからないのですが、たぶんライカミングのエンジンでしょう。

完全に2つに分離しています。

Dscn4694分離したところは、アルミ鋳物のシリンダーヘッド。ニッケル・クロム・モリブデン鋼のシリンダーバレルとの接合部です。

シリンダーヘッドとバレルは、ねじになっていてさらに焼嵌めされています。シリンダーヘッド側が雌ねじになっています。写真を見ると、雌ねじが破断するとすると、ここだよね、というところからいっているようです。

Dscn4693 上部側の破断面を見ると、およそ円周の1/3が黒ずんで見えます。

これは、おそらく破断前に燃焼ガスもしくはオイルがリークした跡でしょう。

最終破面は、おそらく2/3。

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エンジンの教員に聞いたところでは、黒ずんだ破面の外側にある放熱フィンの赤い塗装が白っぽくなっているのは、航空機用ガソリンの中に含まれる鉛成分の付着物であろうとのことです。レシプロ式の航空機エンジンには燃料として、未だに鉛の入った高オクタン価のいわゆるアブガスを使っています。

このシリンダーの破壊を圧力容器の破壊と考えると、このリークの痕跡は重要な意味を持ってきます。

Lbb 破壊力学的な検討をすれば、き裂の進展の仕方はある程度予想をすることができます。き裂はある大きさになると、急速に一気に進んで破断にいたることが知られています。内容物が高圧になる圧力容器では爆発的な破壊になり、大きな被害が出る可能性が考えられます。き裂の進展が、まだゆっくりである間に板の厚さを貫通するように設計をしておくと、破断する前に洩れ(リーク)が生じて、大きな被害をもたらす前に発見できる可能性があります。この様な考え方を破断前漏洩(Leak Before Break:LBB)設計といいます。

このシリンダーの場合、破断前漏洩があったものと推測できますが、いつからどの程度あったのかは俄かには判断できません。漏洩を検知するシステムはありませんから、整備士なりパイロットの注意力に依拠することになります。仮にこの飛行前にリークがあったとして、シリンダーの破断についてある程度知識がないと判断は難しいかもしれません。こんな破断は、めったにない超レアケースとのことです。

このケースでは、異常振動を感じて直ちに着水をしたために大きな事故に至らずに、インシデントで終わっています。

私の注意関心、アンテナの指向性がそちらに向いているからかもしれませんが、それにしてもなぜか、ここのところ破壊・破断の情報が入ってきます。

非破壊検査はものを壊さないために、ものを壊さずに、ものを壊す原因となるきずを調べる技術ですが、どうしてどのようにものは壊れるのかについて、関心を持って勉強を続けています。

つまようじブリッジコンテストも、このような内的な関心に突き動かされてやってきたのかもしれません。

ところで、今日千歳市役所の科学技術振興課の方が来校されて、このイベントにお誘いを受けました。オウ!水上航空機ですよ。偶然ですが、今日は水上航空機に縁があったようです。内容は光を使った距離計測。私の超音波本には空中での距離計測における電磁波と超音波の一長一短を書いていますので、技術内容としても関心のある領域ですが、時間的に難しいかなぁ。

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コメント

こんにちは。いろいろと貴重な資料が集まるようでいいですね。どうしてものが壊れるのかの勉強の成果を期待しています。

投稿: KADOTA | 2008年7月30日 (水) 07時00分

KADOTA さん こんばんは

この卒業生は、このブログを読んでくれているようです。ブログで公開して良いか、との問い合わせに対する答えが

「もちろん喜んでブログ公開OKです。そーなると予想してました。。。笑」

というものです。なんだかとてもうれしいです。

>どうしてものが壊れるのかの勉強の成果を期待しています。

ありがとうございます。このブログでもこれからも取り上げてゆきますし、何らかの形でまとめてゆければよいなぁ、と思っています。

投稿: SUBAL | 2008年7月30日 (水) 19時22分

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