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「絵とき 金属疲労」本

以前に金属疲労を扱った初学者向けの本を紹介しました。

Fatigue このたび日刊工業新聞社から「絵とき 基礎のきそ」シリーズの1冊として「金属疲労」が刊行されました。著者は千葉大学准教授の佐藤建吉氏です。

金属疲労を説明するのに、まず第1章で転位・すべりからはじめています。金属疲労は、発端も疲労亀裂進展も微小な延性破壊の繰り返しがその本性ですから、オーソドックスだと思います。

第2章では、引張試験・曲げ試験・硬さ試験・・・といった基本的な材料試験の説明がなされています。いま、大学の工学部を出ても、自分でこうした材料試験をやったことが無い、という人もずいぶんいるようですし、まして一般の人では材料の機械的性質はどのように確認するのか知っている人は少ないでしょうから、このあたりから説明してゆくことが必要なのでしょう。

こうした、通常の金属疲労の本では前提として省略してしてしまっているところから始めて、金属疲労の全体像を概観できる内容になっています。

この本の最大の特徴は、フレッティング疲労について多くの紙面を割いていることでしょう。

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「フレッティング(fretting)とは、英語のfretに派生する用語で、接触している二物体間で接触面にそって相対的に微小なすべり(通常、数十ミクロンメートル以下)が連続して行われているときに生じる表面損傷です。・・・・・『フレッティング疲労』は、繰り返し応力が作用して、接触面に微小なすべりが生じ、磨耗と応力が相乗して起きる疲労現象です。」(同書P.104)

マスコミ等にはほとんど登場しない用語ですが、疲労破壊の要因として無視できないものです。本書の108ページには、英国シェフィールド大学のミラー教授の説として「航空機の疲労の90%はフレッティング疲労が関係している」ということが書かれています。

えっ!そんなに・・・という感じがしますが、振動の中で繰返し応力が生じていることがほとんどですから、そうかもしれない、と思いなおしました。まじめに勉強をしないといかんですね。

Br2_2 実は、今から15年前に手に入った大型旅客機のランディングギヤのブレーキ部分についているボルト(ニッケルクロムモリブデン鋼)に生じた割れを調べたことがあります(左の写真)。

割れの部分は、摩擦によって磨耗しているだけでなくて、組織も変化していました。摩擦熱によって700℃近くまで温度が上がったであろうことまで調べをつけまして、熱応力の繰り返しによる熱疲労であろうという結論を当時出しました。これもフレッティング疲労の観点から見直してみることができるかもしれません。

この調査は、苫小牧高専の大島聡先生に協力・指導をいただいて、試料の作成から、再現実験まで、ご厚意にすがってあつかましくやらせていただきました。いろいろな意味で勉強になりましたが、私の力不足からまとめることができずに、本棚の隅に今もファイルされています。

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コメント

SUBALさん おはよう

著者の佐藤建吉さんはこれまでの私の生涯で2度意識したことがあります。最初は風車の研究者として、2度目は『ブルネルの偉大なる挑戦 時代を超えたエンジニア』(日刊工業新聞社、2006年初版)の著者として。最近は仕事上この金属疲労と付き合わねばならないので同書を購入しようと思います。

投稿: 271828 | 2008年9月18日 (木) 05時08分

271828さん こんばんは

『ブルネルの偉大なる挑戦 時代を超えたエンジニア』も同時に購入して今読んでいるところです。私は、最初ブリネル硬さ試験に関係した人かと思っていたら、まったく違っていましたねcoldsweats01
佐藤建吉氏は私とほぼ同年代の方ですが、面白い方のようです。

投稿: SUBAL | 2008年9月18日 (木) 20時57分

このブログで金属疲労の本の紹介があり、私もフレッティング疲労が専門なので、気になって本屋で立ち読みをしてきました。
ドイツ鉄道の脱線事故原因となった弾性車輪の話が書いてありました。そこには、私がドイツの裁判でフレッティングの影響があったと主張したと書いてありました。私は、フレッティングの影響は鋼とゴムの間ではないと主張したのです。影響があった方がこの本の著者には好ましいでしょうが、全くの逆です。しかもそこには、私の本と機械学会誌の論文に出した車輪の図面と事故破面が大きく載っていました。私には何の断りもなく無断で掲載されていました。その他にも、私の論文の図面がありました。びっくりしました。このようなとき、皆さんならどうされますか。とりあえず出版社に出版取りやめを、勧告するくらいでしょうか。

投稿: K. Hirakawa | 2008年9月21日 (日) 18時38分

Hirakawaさん こんばんは

現在私が読んでいる文献には、よくHirakawaさんの論文や著書が引用されたり紹介されたりしています。

ドイツ高速鉄道の話は、あれっとは思ったのですが、確かめていませんでした。
180度反対に紹介されたのでは、たまりませんね。

私の本のときは、編集者から引用図などは、承諾をとっておくようにとの指示があり、昨年のちょうど今頃手紙とメールをせっせと書いていました。その過程で、紹介の仕方や文言でいくつかやり取りをさせてもらい、それもまた勉強になりました。(それでも一部にミスがありました)
本の場合は、著者へ直接ではなく、出版社へ連絡を取りました。
ほとんどのところ(1社を除いて)は、快諾をしてくれました。
承諾の文書は今も保存しています。その中の1社は、承諾の文書は出せないが、「申し出の内容は著作権法上の引用に当たるので問題は無い」として記載の仕方を教えてくれるところもありました。
ものを書いて多くの人に読んでいただく以上、著者として最大限の注意を払わなければならないでしょうね。自分の責任で本を出す過程で、このあたりも勉強させてもらいました。

出版社か著者にHirakawaさんの意思を伝えられたらいかがでしょう。

投稿: SUBAL | 2008年9月21日 (日) 20時50分

SUBAlさん、素晴らしいコメントをありがとうございました。
自分の著書や文献が引用されることは大変名誉なことで、いつもうれしく思っています。ただ,実験者や著者名が明確に引用されている限り、無断でもなんら気にしないのですが。

投稿: K. Hirakawa | 2008年9月21日 (日) 22時26分

. Hirakawa さん

本を出すにあたって出版社と交わした「出版契約書」には、著作権のトラブルは著者の責任という主旨のことが書かれており、正直身構えました。また、面倒だなとも思いました。

でも実際にやってみると、皆さん意外に親切で、面白い交流もできました。そのひとつをこちらに披露しています。
http://subal-m45.cocolog-nifty.com/blog/2008/01/3000_3344.html

著作権法上の処理を面倒なこととは考えずに、自分が有用だと思っているデータや画像を作った人と交流できるかも知れないチャンスととらえるとよいのかもしれません。

私も、他の人から引用・参照されるような著作を残したいものです。

投稿: SUBAL | 2008年9月21日 (日) 23時31分

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