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エキスポランドコースター事故原因を推測する(その6) 締められないナット?

遠回りをして、ようやく折損したねじ部についてです。

Dr3

このナットは、図面を見ると、台車本体に取り付けられたリング状のブッシング(カラー?)を締め付けるようになっています。その外側(図面では右側)のところで軸は台車本体に圧入されており、車輪ユニット側からの曲げモーメントはここで吸収するように設計されていたと読めます。

昨年6月初めの毎日新聞の記事にこんなのがあります。

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 折れた車軸は「ボギー軸」と呼ばれ、車体側と車輪ユニット側の軸穴にそれぞれ差し込む「はめ合い工法」で組み立てられている。風神雷神2の車軸は、強度の強い特殊なはめ合い工法により軸穴にきつく差し込まれる設計で、中央部分と両端を固定している。中央部分が太く、最も荷重がかかる構造だ。
 エキスポランドで遊具の保守点検に携わった経験のある技術者は「ボギー軸は、5~6年たつとはめ合い部分が摩耗しているものがあった。接着剤ですき間を埋めたりして補修した」と証言する。解体点検の際は油圧式機械やハンマーを使って車軸を抜いたり、差し込んだりするが、摩耗が進行し抜けやすくなっているものもあったという。

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圧入部は点検のたびに緩くなって、当初は車輪ユニット側からの引張力も圧入部で吸収していたのが、接着剤で隙間を埋める段階では、すべて奥側のこの事故で折損したねじ部にかかってきたと推測できます。

その時、ねじとナットの勘合部で疲労亀裂が静かに進展を始めたか進展が加速したのは、間違いないでしょう。

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この折損したねじ部に疑問があるのです。通常ねじ部が疲労破壊をするとしたら、ナットがボルトにかかり始めるところ、すなわち勘合部のはじめの谷部でしょう。

Exshaft 大阪府警が公開した写真を見ると、ねじの切り始め、すなわち不完全ねじ部から切れているように見えます。そこまでナットが回って入り込んでいたとすれば、仮にそこで締まっていたとしてもまったく遊びのないねじということになります。ナットの反対側を見ても、キャッスルナットのお城のてっぺんからねじ山が過剰に出ているようには見えません。ナットはどん詰まりまで回っていたのではないか、という疑問なのです。

このナット、工具で締めても工具の感触としては締まったとしても、ボルトには締め付けるための軸力がほとんど発生しないようなカタチになってはいないでしょうか。(そこでコッターピンを入れる穴位置がちょうどいいところにくるようになっていた?)

外側のナットは、締め付けると動きに不具合が出るために軽く締めるにとどまらせるナットでした。ストッパーとしての役割を果たすためのナットであって、振動がかかれば緩みやすくなります。(だからコッターピンがついている?)

私の疑いは、折れたほうのナットも通常のナットのように締め付けることを余り想定をしていない設計ではなかったのか、ということなのです。圧入部が力を分担してくれているうちはともかくも、そこが緩々になった時点では、引張力はすべてこのねじ部で受けることになり、確実に疲労亀裂が進展していったのでしょう。

今日の記事内容は、大阪府警が公開した写真を見ての疑問から推論しているだけですので、現場を見れば“なんだぜんぜん違う”となるのかもしれません。それでも、単純に、ねじ部の疲労破面を見るだけではなくて、圧入部のクリアランスも含め、この軸と台車・車輪ユニット間の力の伝達がどうなっているのか総合的に見る必要があることは、間違いないでしょう。

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コメント

ジェットコースターの事故の原因の推定の解説を、興味を持って読んでいます。書いてありますように{圧入部のクリアランスも含め、この軸と台車・車輪ユニット間の力の伝達がどうなっているのか総合的に見る必要があることは、間違いないでしょう。} どう考えていらっしゃるのか続きが楽しみです。
これまでの1-6の内容では何を言ってるのかさっぱりわかりません。

投稿: K. Hirakawa | 2008年11月 7日 (金) 10時48分

K. Hirakawa さん こんばんは

一連の連載は、今回で終わりです。

>これまでの1-6の内容では何を言ってるのかさっぱりわかりません

そうですか、ブログを通じてのコミュニケーションて、難しいのですね。

投稿: SUBAL | 2008年11月 7日 (金) 19時18分

古い記事への投稿で申し訳無い気もしましたが、一言どうしてもお礼を言いたく書かせて頂きました。
記事での詰め方、非常に参考になりました。
(6から1へと読む流れになって仕舞いましたが)
日頃、要領書に沿った規格通りの画一的な検査を行ってばかりだったと我が身を振り返り、恥ずかしい限りです。やはり、対象物の構造を考え多角的に推測判断するだけの貪欲さと見識を持たねばと感じました。有難う御座いました。

投稿: A.Maeda | 2008年12月 2日 (火) 18時42分

A.Maeda さん ようこそ

うれしいコメントをありがとうございます。私は、現場で検査屋をして、現在非破壊検査を教えています。長年やってきて、今思うことは検査屋が誇りを持ちその地位を向上させるには何が必要なのか、そのなかで私にできることは何かです。

機械のオペレーター、よくて測定屋では単価を叩かれてしまうだけです。

「検査」をしなければいけない。検査は安全を守り確保するために対象物を知ることなんだ、そう思っています。

材料のこと強度のこと構造のこと力学のこと勉強すべきことはいろいろあって、学問的素養の乏しい身にはつらいものがありますが、知見は学者の占有物ではない、現場技術者がわかって何ぼのもんだ、の信念でやっています。

自分の頭で考える、ものを見て考える、もちろん本も読む、いろいろなひとに教えてもらう、間違ったら訂正する、そうしてコツコツ積み上げてゆく、このブログもそんなおもいで書いています。

あまりことばには出さない、そんな想いが通じたようで、本当にうれしいです。一緒にがんばりましょう。

投稿: SUBAL | 2008年12月 2日 (火) 19時59分

事故は3年前なのに、ずいぶん昔に感じられます。
原因が、車軸の破壊と認識してましたが、構造図などから動きや原因が良くわかりました。
しかし 4人乗りの車体や人間の体重の合計と加速度が実際ど
の程度か不明です。また車体同士の連結部も気になります。

おそらく設計者は部品の寿命を理解していたが、維持管理者は
日常の平和の中でボケたのでしょう。
組織の中で 階層が変わると伝達できる情報量は半減します。

投稿: R.Y | 2010年10月19日 (火) 14時33分

R.Yさん コメントありがとうございました

 この事故に関しては、半年もあれば事故原因が解明されて、対応する検査方法が何らかの形で公になるものと思っていました。3年もたっているのに、分かっているのは金属疲労であったということだけ、というのには驚きつつあきれています。

 いくつかの要素が分かれば計算も可能でしょうし、ひずみゲージでも貼って走行実験をしてみれば実応力も測定できるはずです。それすらやっている様子もありません。

 メンテナンスは、ある時期までメーカーであるトーゴが行っていたようですが、トーゴが倒産してからは、エキスポランドでやっていたとのことです。このときにメンテナンスの方法・考え方がどう変わった変わらなかったか、これも調査の一つのポイントのはずです。

 私は、設計はしっかりしていたがメンテナンスがいい加減だったという見解にも、そうかもしれないが根拠がないと思っています。

 この事故に関しては、何も分からないままうやむやになっていると認識しています。現場責任者の刑事訴追だけが優先されている。人を罰しても事故原因の芽は摘めていない筈です。そのことが問題だと思い、何度か記事にしています。

 私は、あの事故以後機会があってもジェットコースターには乗らないと決めています。

投稿: SUBAL | 2010年10月19日 (火) 20時31分

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