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『応力集中と引張強さクイズ』解答編

niftyのブログパーツ「投票」を使って実施してきた『応力集中と引張強さクイズ』ですが、今日が解答日です。10日間で、53名の方に投票していただきました。投票の結果は、

* 23kN 23票

* 35kN 11票

* 61kN 11票

* 69kN  8票

23kNがダントツ1位です。解答は続きで・・。

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実際に引張試験をしたところ、61kN(6200kgf)で破断しました。

23kNは、円孔縁での応力集中係数がおよそ3ですから平均応力の3倍の応力が生じるので破壊する荷重は穴がない場合の1/3、と考えると出てくる答えです。実はもうだいぶ昔のことになりますが、私も応力集中があると引張り強さは大幅に下がると考えて試験片をつくり引張試験機にかけてみました。その結果を知って驚いたのです。

実際に引張試験を行うと、塑性変形(力を取り除いても元に戻らない変形)が絡むことはすぐに分かります。最初円形だった穴が、次第に縦長の楕円になっていくのが観察できます。

Stressc9 左の写真が破断後の写真です。穴のあるほう(B)が全体的に伸びが少なくなります。

61kNという破断荷重は、穴による断面積の減少を考慮に入れれば少しですが引張強さは大きくなっているのです。応力集中が材料を強くしている。

応力集中係数というのは、フックの法則が成り立つ弾性変形の範囲で有効な話なのです。つまり応力集中は破壊の過程で大きく塑性変形する延性材料では引張強さを下げる要因にはならないのです。「応力集中は危険だ、部材の中にあるきずは応力集中源になるのでこれを検出する」と教えられてきた非破壊検査技術者(私もそうでした)にとっては、「何これ」と思える事実でしょう。

単に私の勉強不足かと思い、機械工学を学んだ人たちに問いかけてみてもこのあたりを把握している人は少なかったのです。私が「破壊工学」本を書こうと思ったゆえんでもあります。

では、応力集中が危険ではないのかというとそうではありません。大きく塑性変形をしないような破壊の時には応力集中が強度を下げる要因になります。脆性材料、衝撃荷重による衝撃破壊、そして亀裂の先端がわずかにしか塑性変形しない疲労破壊については応力集中に特に配慮する必要が出てきます。

村上敬宣氏の『応力集中の考え方』(養賢堂)に掲載されていた問いの答えももうお分かりかと思います。試験片中央の溝が入った箇所ではなく左右の直径8mmの平行部のどちらかで破断するのです。村上氏の著書では、第14章「ひずみ集中」のところで、破断した試験片の写真を示して、「静荷重に対する強度設計では切欠き部を最弱部と断定して、切欠き部のみに注目した解析を行うのは不十分である」とのべています。続いて、「しかし、負荷が繰返し荷重の場合には切欠き部が破断起点になるので、疲労の観点からの検討をしなければならない」と、太字で強調をしています。

ちょっと意地の悪い設問だったかもしれませんね。ブログパーツ「投票」は、「記事-コメント」という以外のもうひとつのブログコミニケーションの手段として面白い可能性がありそうです。また、何かの機会に使ってみましょう。投票してくれた皆さん、有難うございました。

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コメント

大谷技研です。
勉強になりました。
たしかに、応力集中とか言うときは、疲労関係でした。飛行機のリベットの穴とか。

投稿: 大谷技研 | 2009年7月 5日 (日) 19時53分

大谷技研 さん こんばんは

応力集中に関して、あれっと思うような説明を見かけたり聞くことがあります。
応力集中緩和策をとらなかった事例としてよく持ち出される高速増殖炉もんじゅの温度計の鞘も、疲労破壊でした。

延性破壊と脆性破壊という肉眼でも観察可能な現象をちゃんと理解しておくことが、線形破壊力学やその疲労破壊への適用が腑に落ちてくることにつながると思っています。

投稿: SUBAL | 2009年7月 5日 (日) 22時55分

私は、69kNか61kNか悩んで69kNに投票しました。
理由は、論理的な考察より経験的なことからです。
20年以上前に関わった仕事で、広幅の溶接試験体の引張試験で、溶接断面の1/3程度の範囲に多数のブローホール(1mm程度)があるものを引張って、引張強さは健全な試験体と誤差範囲でしか違っていなかったことからです。
ただ、伸びは明らかに低下していました。
今回のクイズでは穴がかなり大きかったので69kNか61kNか悩みました。
大変参考になりました、
ありがとうございます。

投稿: Ikegaya | 2009年7月 8日 (水) 07時44分

このケースでは穴径が6mmで断面積が87%に減少していますが、断面積が減少したことを考慮すると引張強さは高くなっています。小さなブローホールが分散している状態で断面積の減少分が極わずかですと引張強さが高くなることもあるかもしれません。

投稿: SUBAL | 2009年7月 9日 (木) 00時54分

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