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CIW見解について その1 超音波探傷の可否

2年半前に大阪府吹田市で起きたジェットコースター事故に関連して、事故を防ぐための非破壊検査方法はどうあるべきかをめぐって、CIW検査事業者協議会技術委員会が実証実験を行い、それをめぐって議論が始まっています前の記事で報告したようにCIW検査事業者協議会技術委員会がこのほど見解を発表しました。私としては疑問符を投げかけざるを得ませんので、何回かに分けて私の考えを述べてゆきます。

最初は、CIW検査事業者協議会技術委員会と意見が一致した点についてです。

それは、この軸に対して分解せずに超音波探傷を適用することは避けるべきだ、という点です。この点は、すでに現在稼動しているジェットコースターの車軸点検に超音波探傷を適用している事例もあるようで、その現実に対する警報として実際上も重要な点だと思います。

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Ciwa 今回のCIW見解で、私の意見を引用しながら、左の図が掲載されています。(黄色い矢印は私が入れました。人工きずの位置です。)私は検出すべききずは、もう少しコッターピンの穴よりのねじの谷部であろうと考えていますが、いずれにせよ端部から超音波を当てるとしたら、コッターピンの穴が邪魔であることは明らかでしょう。

私は意見書の中で、こう指摘しました。

「エキスポランドの事故で破壊した軸には、コッターピンの穴が開いていました。超音波で端部から探傷する場合には大きな妨害エコーの発生源となります。(中略)私は、このコッターピンの存在でUTは不適になるか、限られた範囲の適用にならざるを得ないと考えています。」

CIW見解では、オリジナルの実験報告書にはこの穴(油抜きの穴と誤解していたようですが・・・)の存在で、「円周全ての探傷とならないこと」から超音波探傷は除外した、と書かれているのだそうです。この件は、RUMPESに掲載された実験報告では紙面の都合上省略されたのだとのことです。この重要な情報がなぜカットされたのか、などという突っ込みはこの際やめておきましょう。
CIW見解とこの点では、意見が一致しました。
もう少し突っ込むとしたら、検出すべき亀裂のサイズとの関係を考えなければなりません。たとえコッターピンの穴の背後から亀裂が進展したとしても、全断面の1/3とか1/2まで進展したとすれば、分解せずに端面からの超音波探傷で検出できるでしょう、という見解も出てくるからです。断面の1/2ほどに亀裂が進展していたら、たとえコッターピンの穴があっても超音波で検出できるであろうことは経験上想像できることです。しかし、そのサイズの亀裂を年1回の点検で検出すれば安全が担保できるのか、この領域の判断が必要になります。
この点は破壊力学や疲労破壊の専門家の知見とつき合わせて判断していく必要があります。エキスポランド事故について、破壊力学や疲労破壊の専門家による鑑定結果が現在も公表されていないのは残念なことです。

だからと言って、この点がまったく見当もつかないことかというとそうでもないと思います。
一般に疲労亀裂速度は亀裂が大きくなるにつれて加速度的に増加することが知られています。私の簡単で大雑把な試算でも、直径40mmの軸で亀裂深さが0.5mmから5mmまで進展した時点で、余寿命は5%を切る、となりました。つまり0.5mmから5mmまで進展するのに10年かかかったとしたら、それから破断するまでに半年かからないことです。つまり半年に1度検査をしても間に合わないケースが出てきそうだということです。

CIW見解によると、ジェットコースターの車軸の形状は様々あり、図面すらないこともあるのだそうです。軸形状を確認できないまま、しかもコッターピンの穴があるという条件で、分解せずに超音波探傷を行うことは、真っ暗闇の綱渡りだと思います。これで日本工業規格(JIS A 1701)規定された非破壊検査を実施したとされたとしたら、エキスポランド事故と同じような疲労亀裂がどこかで進展していたとしても、これを事故前に検出して排除することにはならない、私はそう思います。
分解して磁粉探傷を行うべきという点も含めて、CIWによる検討結果と結論は正しいと思います。監督官庁も含めて、この結論を考慮して慎重かつ迅速に対処して欲しいものです。

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