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CIW見解について その2 検出すべききずの位置

 非破壊検査方法を選択する際には、いくつかの条件を考慮して総合的に判断しなければなりません。その中で、試験体の形状と検出すべききずの位置・かたち・サイズは優先順位の高い条件です。

CiwaCIWが実施した実証実験では人工きずを加工した位置が、ねじ部近くの平行部(左図黄色矢印)でした。私を含め意見書を提出したI氏もK氏も検出すべききずの位置はこの位置で良いのかという疑問を投げかけています。
 当然実際に起きた事故を想定しているわけですから、破断した軸で疲労亀裂の起点はどこなのかの判断が問われます。今回公開されたCIW見解では、大阪府警が公開して新聞紙上に掲載された軸の写真を見て検討したことが記載されています。そのうえで、「どの部分がき裂の起点なのか明確には判別できません」としています。
Ciwb  CIW見解では本当は左図の黒矢印の位置にも人工きずを加工しようとしたのだけれど「加工業者の力量不足等」でどれも同じような平行部への加工になってしまった、と述べています。

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Exshaft2  まず、大阪府警が公開した写真(左図:上を正面写真、下を断面写真と呼びます)から読めることについてみてゆきましょう。
 正面写真を見ると、破面は軸に対してやや斜めに走っているのが分かります。その一方がCIW見解図黒矢印で示されている部分(段部)であることが分かります。
 その反対側はどこに当たるのでしょう。明確ではないといわれるとそうですが、下の断面写真とともに見るとねじの谷部であると私には見えます。(正面写真と断面写真の上下位置は一致しておらず、およそ60度傾いているようです)
 では、疲労き裂の起点はどこなのでしょう。断面写真のほうを見ると、下方は塑性変形をした様子が伺えます。最終破断が塑性崩壊であったことが推測できます。塑性崩壊の位置が疲労き裂起点であるとは考えられません。
 もちろん、この写真からだけでは断定できないという判断も正当であるといえるでしょう。
 しかし、CIWの実験と見解では疲労き裂がねじ部からである可能性を置いたものにはなっていない、その意味では判断できないといいながらねじの谷部ではないと判断しているとしか思えない実験になっている、私はここがおかしいと思っているのです。
 ターゲットとなる人工きずを入れるとしたら、最優先はねじの谷部、次にはCIW見解の黒矢印の部分となるでしょう。
 そのきずも、放電加工ではなくて疲労亀裂であることが理想です。
 ただ、理想的な位置にリアルなきずを加工した試験体による実験をしなければ何もいえないかというと、そうではないと思っています。
 実験には必ず仮説があり、論理で組み立てる仮想実験による結果と付き合わせるという過程が伴うものだと理解しています。何を実証しようとするのか、ということです。私のおかれている環境では、確認できる実験には限りがあります。得られる情報もほとんど公になった報道情報に限られます。それでもいえることはあるはずだと、限られた条件の中で頭を回しています。
 CIWの実験では、ねじ近くの平行部にねじ山より浅いスリットを加工して、端面から超音波を当てて「きずが検出されなかった」という実験結果ですが、これは実験を実施する前から分かりきったことだろうと私は考えます。
 CIWの見解を読んで、何でこんな見解になるのかを考え込んでいたのです。良く分かりませんが、ねじ部の疲労き裂を検出するという視点があらかじめ排除されているのではないか、と思い始めました。このあとに論じるMTとPTについての見解があまりにも大雑把であることもそこに根拠があるのかもしれない。思考法まで踏み込んでもしょうがないのですが、ねじ部のき裂を検出すべきターゲットとしなくても良いという根拠は何もない、ということは言っておきたいのです。

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非破壊検査」カテゴリの記事

コメント

非破壊試験技術者と言われる人が、ある部品が何か原因は明確でなくても使用中に壊れてしまったので、それを防止する為にどのような非破壊試験ができるのかと課題を出された場合に答えることを想像してみてください。
原因に関する情報をもらい、発生する最終的な破断に至る前の欠陥発生を想像して、欠陥の形状・サイズ・部品の形状・材質、試験できる環境を考慮して欠陥の非破壊試験による検出を計画します。それに基づいて実験計画を立ててその結果から非破壊試験の適否を決めるということが当たり前のことと思っています。
実は、このことは今までCIWの試験技術者として、何度もCIWの講習会で教わってきたことですし、CIWの試験技術者の試験で出題されてきたことです。
これを実際の社会で適用する際に、部品は壊れたけど破壊に至る情報が十分に与えられず(壊れること自体秘密の情報でその原因等外部に教えないというケースと相手の担当者が知識がなくて情報が得られないケースなどがあります)、「こわれないための非破壊試験方法を検討しろ」という要求が少なくありません。
その際に、非破壊試験技術者が行なうことは、それまでに知識・経験等を活用して非破壊試験技術者が破壊の原因・性状・進展を想像して、人工欠陥を作成し、それをいかに検出するか実験を行うこととなります。(情報が不足して何もできませんということが必要な場合もあると思いますが、限られた情報で最大限こんなことが出来ますと提案することが社会にとって有益と考えています)
ネジを含む車軸の損傷で真っ先に考えることはネジ底からの亀裂の発生と考えています。(経験的に、もしそれ以外から発生する場合には偶然発生箇所に製造時に欠陥があったり取付時に比較的大きなきずをつけたり等)
ネジ底の初期の亀裂を非破壊試験で検出するのは容易でなく、PT・MT・UT(条件によってはET)が可能性があり、どの方法も決定的でないと考えています。(むしろ、どの方法も十分な検証なしでは否定されるべきではない<---ねじの試験体でMTでよくわからないものがUTで検出したことがある)
もし、このブログをCIWの方が読んでいるのなら、ネジ底に亀裂を入れた試験体を1体と健全な試験体を1体用意して、回送試験を募集してみたらどうですか?
たぶん、私もSUBALさんも応募すると思いますが。(勝手に書いてすみません)
思わぬアイディアが出て来るかもしれません。

投稿: Ikegaya | 2009年10月26日 (月) 10時13分

CIWは検討したからこそ問題点が浮き彫りになっているのであって、本来動かなければならないところがあるように思うのです。

>このブログをCIWの方が読んでいるのなら、ネジ底に亀裂を入れた試験体を1体と健全な試験体を1体用意して、回送試験を募集してみたらどうですか?

面白いですよね。今回の試験体に加工したって良いわけですし。
私は、たとえばエクスポランドでもその後の点検で亀裂が見つかっている軸があったと報道されているのだから、その一部でも非破壊検査技術を検討のために提供されるよう、関係者が動いてくれると良いと思うのです。

投稿: SUBAL | 2009年10月26日 (月) 23時02分

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