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工程確認方式

今日は、私のメモです。
従来磁粉探傷の通則に関するJISは、JIS Z 0565(鉄鋼材料の磁粉探傷試験方法及び磁粉の分類)でした。しかし、2007年にISO 9934-1に対応するものとして新たにJIS Z 2320-1(非破壊試験-磁粉探傷試験-第1部:一般通則)が制定されました。
ISO 9934-1に規定された「工程確認方式」と呼ばれる試験方法の適切性を確認する方法と、従来のJIS Z 0565に規定された方法と考え方が異なるために、JIS Z 2320-1ではJIS Z 0565に規定された方法を「標準試験方式」名づけて両者を併記して、利用者がどちらを選んでも良いようにしています。
「工程確認方式」は用語としては、「磁化の定量的確認及び対比試験片(タイプ1又はタイプ2)を用いた検出媒体の性能確認試験によって磁粉探傷試験の検査性能を確認する方式」と定義されています。
具体的には磁化の確認方法として次のように規定されています。

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8.3.2 磁化の確認
 次の一つ又は二つ以上の方法によって、表面の磁束密度が磁粉探傷試験に必要な値になっていることを確認する。
a) 最も検出性能が良くない位置に微細な自然きず又は人工きずを持つ試験体を試験する。
b)表面にできるだけ接近して、試験体表面に平行な磁界の強さを測定する。
c)通電法の場合は、試験体に平行な磁界を計算する。
d)確立された原理に基づいた他の方法を使用する。
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注:通電法とは軸通電法・プロッド法・磁束貫通法を言い、電流貫通法・隣接電流法・極間法・コイル法は入りません。電流貫通法・隣接電流法・極間法・コイル法は磁束投入法に分類されます。
「工程確認方式」による、「磁化の定量的確認」とは8.3.2の事をさすとしか読めません。
ところが、JSNDIが発行しているMTⅢ(2009)のテキストには、

「工程確認方式では計算によって磁化電流値を設定し、必要な場合は計測によって磁化の大きさを確認することが規定されている」(P45)

と解説されています。
JISのどこを読んだらこんな解説になるのか10日以上JISを読み返したのですが、わたしの国語力では分かりませんでした。この解説が「違うな」という結論になりました。
磁化方法と試験体が決まったら、磁化電流の値によって磁化の大きさが決まります。JISの規定(工程確認方式)で計算によって磁化の確認を行えるのは「通電法」に限定されていて、それも4つの選択肢の一つにすぎません。「計算によって磁化電流値を設定」する事が基本であるような理解(MTⅢ(2009)の記述はそのように読める)にはなりません。
私は、中学生・高校生のころ教科書の間違い(多くは誤植)を見つけては出版社にはがきを書いて、よくシャープペンシル(当時は高価だった)などをもらっていました。今回のは誤植の類を見つけた、というのは違います。
どうも、磁粉探傷試験の教科書を書いている偉い先生たちの中に、磁粉探傷試験技術の成り立ちについて誤解があるのではないかと危惧しているのです。先日紹介した手順書に関する練習問題解説にも、感じた事です。私の読解力不足による誤解ならば良いのですが・・・。
磁粉探傷に限らず非破壊検査技術は「見えないものをみる」ために様々な物理現象を使います。したがってこの技術は応用理学的側面が強くなる傾向にあることも事実です。しかし、非破壊検査技術は技術であって理学ではありません。
超音波探傷の探傷条件は、波動方程式から導き出せるものではないのです。

誤解なきよう追記しておきますが、JSNDIが発行しているMTⅢ(2009)のテキストは「デタラメで読むに値しない」などという事を言っているのではありません。この本は、磁粉探傷試験に関する現時点の知見をまとめたものとして最高水準にあることは間違いありませんし、後日紹介するかもしれませんが、今までにないすっきりとした明快な記述もあるのです。

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非破壊検査」カテゴリの記事

コメント

こんばんは。
JIS Z 2320の解説を読んで、テスラメータ屋さんの裏工作を想像しました。A型試験片屋さんの反撃やいかに(壊滅的ですが)。

投稿: niwatadumi | 2009年11月18日 (水) 23時24分

JIS Z 2320-1は、ISO 9934-1を翻訳してJISにする事を大前提にしながら、JIS Z 0565との折衷を図るという大人の事情は理解しながらも、技術的に詰めて考えるといかにもちぐはぐな妙な規格になっていると思います。
工程確認方式は残留法が規定されていないなど疑問のところもありますが、私にはJIS Z 0565よりも理解しやすいのです。
JIS Z 0565の磁化の確認方法を「標準試験片方式」と名づけたことに少し無理がありそうです。その無理にMTⅢの筆者が解釈の混乱に陥った根拠がありそうだと推測しています。「標準試験片方式」とした以上、標準試験片を使った磁化の確認方法を技術的な合理性を持ったものとして説明する必要があるのだと思います。

投稿: SUBAL | 2009年11月19日 (木) 00時46分

JIS Z 2303-1:2007についてですが、通電法は軸通電法、直角通電法、プロッド法の3つではないですか?
磁束貫通法は通電法とは違うのではないでしょうか?

投稿: 検査員 | 2010年1月26日 (火) 11時42分

検査員さん ようこそ

>磁束貫通法は通電法とは違うのではないでしょうか?

JIS Z 2303-1:2007を確認してみてください。磁束貫通法は通電法とされています。工程確認方式には、磁化方法として直角通電法は規定されていません。ISOの考え方なのでしょうが、理由はJISの解説にも、MTⅢのテキストにも書いていません。
こういうことの理由や根拠が分からずに、JIS Z 2303に準拠して手順書を書けるのでしょうか。私には疑問です。

投稿: SUBAL | 2010年1月26日 (火) 18時48分

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