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ABSと1秒のタイムラグ

 トヨタのプリウスがブレーキの不具合でリコールが実施されると報道されています。
数日前には、「運転者の感覚の問題」とする記者会見をしたばかりでした。

 この報道は、ブレーキ抜けといわれる現象を実証しています。
油圧ブレーキとモーターの回生ブレーキとの切替時に1秒のタイムラグが発生する事があるということらしいです。油圧ブレーキに切り替えるのはABS(Anti-locked Braking System)を働かせるためのとのことです。

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 ABSは雪国の車には欠かせない装置になっています。私は(プリウスなどという高い車は持っていませんが)ABSは必ずつけて購入するようにしています。特にこの時期、寒気と暖気が交互にやってくる季節は、スリップの危険が増します。「今日の通勤はボブスレーだった」なんて冗談が出てしまいます。
 車のタイヤの回転を止めてしまうと、摩擦熱で氷の上に水の層ができて車は止まらなくなります。その場合はブレーキを緩めてタイヤを少し回して初期摩擦の状態を作り出すことが有効になります。昔はポンピング・ブレーキをするようにといわれていました。しかし、実際にスリップをはじめたときにポンピング・ブレーキなんてできるものではありません。
 ABSは、運転者はブレーキを踏むつまり「車を止めたいという意思」を車に伝える事で、タイヤが回らなくなっていながら車が動いているという状況を検知したら、ポンピング・ブレーキを自動的にメカニカルにやってくれる装置です。
 ここでの1秒は短い時間ではありません。時速40キロならば10メートル以上進んでしまいます。今日、通勤の帰り道アイスバーンでブレーキを掛けてみましたが、ABSは少なくても1秒に5回以上は制止-回転を繰り返しています。1秒間ブレーキが作動しない車はとてもじゃないけれど恐ろしくて乗れません。
 私は、トヨタの「運転者の感覚」記者会見を聞いて、アイスバーンでのブレーキテストを行ったのか、そこで停止距離に従来の方式の車と同等の性能があったのか、という点が疑問でした。
 先ほどのニュースでは、停止距離に問題があったからリコールすると報道されています。「運転者の感覚」の問題ではないということですね。さらに言えば、これって、販売前に確認のテストを行っていなかったということも意味しています。ちょっと、驚いています。
かの「運転者の感覚」会見が、後の歴史家によって「ものづくり日本の凋落」を象徴する会見だったと評価されるようにならないことを願うばかりです。基礎技術をおろそかにしてしまったSONYの二の舞にならなければ良いのですが・・。

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日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

20年ほど前、岩手県の花巻によく行きました。冬の道路は想像を超えたもの。雪は積もっていませんが、道路面はつるつるで、上を雪が渦を巻くように流れていました。とても良く滑って、歩くのも大変でした。そこを平気で歩く、平気で運転する地元の人には感心したものです。
群馬でも山間部では、道の凍結は日常ですから、私もちょっと滑ればとっさにブレーキを緩めるくらいの心得はあります。凍った路面上でちょっと姿勢をくずした時、1秒あればガードレールが走ってきて、車と仲良くなってしまいますね。長い時間です。
ちょうど昨日、古くからの友人が訪ねてきて「トヨタはもう、客の顔なんか見ていない」という話をしたばかりでした。しばらく前の「アメリカ病」に感染したのでしょうか。

投稿: Husigidou | 2010年2月10日 (水) 05時28分

お久しぶりです。
実は、私は仕事で1年間に7〜8万kmぐらい走行しています。
それは東北が広く、検査に行く鉄工所が営業所をどこにおいても遠方(大概は片道200〜300kmの距離)にあり、そのためそのような走行距離になります。
一方、高速のGSは次々と閉店となり、航続距離の長い車を会社にお願いして、無理を言ってプリウスにしてもらいました。
冬期の北東北は気温が0〜−10℃(峠等は-20℃)ぐらいになることが多いです。(移動は早朝や夕暮れ時が多いのですが)
リコールになる前から、いままでとは異なる車なので、シャーベット状の路面や凍りついた圧雪の路面で周りに車のいないときに何度もブレーキのテストをしました。
その結果、リコールにあるようにHusigidouさんの花巻の道路のような路面(私が住んでいるのはその花巻の近くですが)では車が異常に止まりませんでした。
感覚的な言い方をするとぬるぬるというような感じで車が進みます。
今日、早速リコールでプログラムを変更してもらいすこしそれに近い雪道(少し気温が高いので同じ条件ではないが)でブレーキのテストをしてみました。
その結果はまったく異なり、きちんと止まってくれました。ぶぶぶというような感じでABSも動作しました。
発売を前に雪道での試験はしなかったのでしょうかと思うような違いでした。
今回の雪道でのブレーキの問題以外は、とても満足のいく車で、日本が誇れる車と今でも思っています。
どこかで、手を抜くと必ずしっぺ返しが来るということを感じました。
自分達の仕事でそうならないようにと思っています。
余談ですけれど、ポンピングブレーキなんて出来ませんね。
危ないと思ったら躊躇しないで急ブレーキを思いっきり踏むことです(ただしABSがあることが前提ですが)。それが最も早く止まれる唯一の方法と実感しております。
一番良いのがそのような状況にならないように運転することですが。


投稿: Ikegaya | 2010年2月10日 (水) 14時53分

自動車業界にいたころ、(主要株主でもあったので)T社さんとは話をしていますが、もともと独自の道を歩むところがありましたな。「客の顔なんか見ていない」とはおもいませんが、話半分でしか「聞けない」というところはむしろ強かったとおもいます。
>停止距離に問題があったからリコールすると報道されています。「運転者の感覚」の問題ではないということですね。さらに言えば、これって、販売前に確認のテストを行っていなかったということも意味しています。ちょっと、驚いています。
これですが、実は国交省の審査内容を考えると、かなり細かいところをいやでも制動関係は出さざるを得ないのですな。そう考えると機械式ABSの開発に関わった際、制動距離などはOKでったのも関わらず「感覚」のところだけで、製品の成熟度が問題になり、結果的に発売後の市場動向(初期流動管理といいます)で引っ込めるということはあるとおもいます。(以下いえないこともあります。あまりおもい出したくないものもあるし)
制動部分に関しては試験をしていても、その条件が合わなかったり、「感覚的に顧客にNGかでた」段階で「試験をした意味がなくなる」という意味から、引っ込めるのです。またリコールを出す条件を考えると感覚的にNGということは、認証業務上表現できないため、「停止距離に(運転者感覚との相違という)問題があったから」という表現をします。
T社がおごっていたのは確かに強く私も感じますが、行政指導や認証業務のレトリックというものもあるという割切方をすることは氏他方がいいかもしれません。
なお省エネ性能を極限まで追求するというところであえて「トップ」企業として余計なプライドでやらんでもいい危ない橋を渡ったなあとはおもうのです。

投稿: デハボ1000 | 2010年2月10日 (水) 18時42分

Husigidouさん Ikegayaさん デハボ1000さん

コメント有難うございました。この記事を書こうと思って1日間考え続けました。
果たしてこのトラブルの実体は何かという事です。ブレーキをかけようとしてブレーキがかからない1秒の空白が実体として本当にあるのか、ないにもかかわらずあるように感じる錯覚なのか、という点です。私自身がプリウスを持っているわけでも乗って確かめたわけではありませんから、確かな事は分かりません。
報道の映像やプリウスを持っている知人の話しを聞くと、現時点では「ある」というほうに私の判断は傾いています。雪道を毎日走行している身からすると、「ある」とすれば1秒間は看過できる時間ではありません。
Ikegayaさんの体験談を伺っても、どうもありそうですね。あるとすれば、天下のトヨタが何やってんだ、というトーンになっています。その場合ミスがあったことよりも、ミスが発覚した後の対応自体が相当にずれていると思うのです。
ただ、物理的にブレーキが利かない空白の1秒はなく、そう感じてしまうだけだとしたら、トヨタさんは気の毒ですね。そうだとしたら、改修前の車で公開制動実験でもして、名誉回復を図るべきだと思います。

>行政指導や認証業務のレトリックというものもある

確かにそういうこともあるのかもしれませんが、今回の事の真相はそこにありますかねぇ。

投稿: SUBAL | 2010年2月10日 (水) 23時34分

いくつかの疑問を感じています。

・対応が早いなあ
 不具合がいとも簡単に解決したように見えるからです。正確な時間経過は知らないので、印象だけですが。それが技術力?支障がソフトウェアだけの処理で済むからでしょうか。ソフトウェアを変更して、多くの場面で無事に動作する事を確認するのは容易な事ではなかろうと想像しています。今度は走行試験はしたのかな。それともシミュレーションだけ?
 実は早い時期から問題に気がついていて、長い期間をかけて解決したのでしょうか。それとも設計時に既に、きわどい設計である事に気がついていたのでしょうか。ブレーキという重要な要素の変更に、認証する立場の人々はどう対応したんでしょう。

・ブレーキを強く踏めば良い
 運転手が多少疲れていても、周囲に煩雑な状況が生じても、余裕を持って運転できるよう、車や交通システムは設計してあるんだろうと思います。とっさの時にブレーキが甘い。もっと踏めば良かったんだっけと、とっさに思い出さなくてはならないのでしょうか。「ブレーキを強く踏めば大丈夫」なんていうのは、作る側、売る側の勝手な理屈です。

・もし空白の1秒が無いのなら
 それを説明して納得してもらう能力はないのでしょうか。それこそ「天下のトヨタが何やってんだ」です。「こうなってんだ」と説明できないのは、「世界一じゃなきゃいけないんですか?」と問われて答えられない研究者と同類。なにも社長が「私が陣頭指揮を」と繰り返してくれなくとも良いのです。期待できそうな顔つきはしていないのですから。

 トヨタには何のうらみも無いのです。尊敬できる知人が何人かおりますし。
 それよりも、何もかも機械的に動作して不具合や故障が耳や手足に伝わってきた、昔の車が懐かしくなってきました。プログラミングを生業の1つとする私としては悩ましい事ですが、コンピュータ・ソフトウェアの検証は、常に実証と切り離せないものと思います。

投稿: Husigidou | 2010年2月11日 (木) 06時20分

Husigidou さん

実は私も「不具合があった→リコール」というだけだったら、特に取り上げる事もしない、そういうことかでおしまいなのですが、何かもどかしい、安全靴の上からかゆい足を掻いているような感覚に陥ったのです。

>・対応が早いなあ

「運転者の感覚」会見の直後で、ソフトウエアの入れ替えだけのようですから、これは当然「運転者に感じさせないようにする」ことに主眼があるはずです。運転者に感じさせないようにした物理現象それ自体はどのようなもので、その解消は必要なのか必要ないのか。スリップの問題ですから、最も危険なアイスバーンでの制動テストはしたのかしないのか。

>・ブレーキを強く踏めば良い

流れている情報を見ていると、この辺に現象が起きるか起きないかの境目がありそうというのは想像がつきます。しかし、トヨタの公式見解になっているのでしょうか。もし本当なら、当面の(改修しないで走っている車もあるのですから)対応として声を大にして周知すべき事だと思います。アイスバーンでフルブレーキを踏むのは、ABSの動作をよく知って安全な場所で何回か経験してからでないと、とても恐ろしくてできるものではありません。ABSを装備していない車では、スリップし始めたときのフルブレーキは自殺行為ですから・・。

>・もし空白の1秒が無いのなら

ここが一番なんだかなと思うところです。現実そのものを明らかにする事が、すべての出発点。あいまいにしてはいけないことだと思います。

投稿: SUBAL | 2010年2月11日 (木) 11時19分

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