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ユナイテッド航空DC10のエンジンディスク破壊事故

 1989年7月19日、米国アイオワ州でユナイテッド航空のDC10が飛行中第2エンジンのファンディスクが金属疲労で割れて、操縦系統の油圧パイプを破壊してしまう事故が起きました。

Dc10_2(NTSB の事故報告書Accident Report of United Airlines Flight 232より引用)

 その4年前に日本で起きたJAL123便が御巣鷹山に墜落した事故、直接の原因(圧力隔壁の破壊とエンジンファンディスクの破壊)は異なるとはいえ、飛行機が陥った困難(油圧パイプの破壊によって操縦不能になる)はほとんど同じでした。
 JAL123便は32分間の必死の飛行にもかかわらず御巣鷹の尾根に激突して、524名中520名が亡くなるという単独航空機事故としては最悪の事故になってしまいました。それに対して、DC10の事故では、最寄のスーシティー空港にまでたどり着き着陸後転倒して火災を起こしたものの、乗員乗客296名のうち111名が死亡し185名が助かりました。半数以上の人が助かったのです。

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 この状況の良く似た2つ事故で、被害の大きさがこれほど違うのはなぜか、航空安全に関心があるものにとっては注目せざるを得ない点です。
 そのひとつの要因は、「トコトンやさしい 航空工学の本」のコラム欄にも書きましたが、パイロットのフライトシミュレーターによる訓練の成果です。もうひとつの要因について、先日紹介した寺田博之氏の新刊「JAL123便事故」に述べられていました。
 JAL123便の事故についての教訓が生かされている、そういっても良いわけです。
 このブログで何度も述べていますが、大きな事故の場合、事故にかかわった人を処罰することよりも事故原因を解明して同じ事故を再び起こさないようにする、そうした地道な努力が必要だと思っています。
 ところで、この事故に関して「失敗知識データベース」は2つの記事が掲載されています。

1.寺田 博之 氏((財)航空宇宙技術振興財団)小林 英男 氏(東京工業大学)の記事

2.タカミハマダニ氏 (SYDROSE LP)中尾政之 氏(東京大学工学部附属総合試験所総合研究プロジェクト・連携工学プロジェクト)の記事

このデータベースには、同じ失敗(事故)事例を別の人が違う視点で書いていることがあります。それはそれでよいのですが、私は次のようなアプローチには違和感を覚えるのです。

「18年間もの間事故がないからといって人の命を預かる飛行機エンジンのファンディスクの取り替えがなかったことが信じられない事実であり、定期的な部品の取り替えを義務つ゜けるべきでる。」

いったい何年なら良いのですかね。こういうことを言う人は、たとえ8年でも同じことを言うのでしょう。気楽な評論でしかないと思います。また次のような事実誤認もずっと放置されています。

「疲労割れは約12.7cmは表面にでていたはずだが、それを点検時に発見していれば、事故は防げた可能性がある。」

 12.7cmなどというのはどこから出てくるのでしょうか。NTSBの報告書によると、事前の検査で検出できた可能性のある亀裂サイズは、0.476inch(12mm)です。一桁も違う。NTSBの報告書が事実誤認をしているとでも言うのでしょうか。12mmでも見逃してはいけないサイズですが、127mmもある亀裂を蛍光浸透探傷試験で見逃すことなどちょっとでも現場を知っているものにとっては考えられないことです。現場の緊張感に無関心の気楽な評論には嫌悪感すら感じます。

Dc102

DC10の事故では、事前の検査で見つけられるべき亀裂が見逃されたという事実があります。これがどのような事態だったと考えられるのかについては稿を改めたいと思います。

P.S. 見つけられるべきき裂がどうして見逃されたのか、NTSBの事故報告書の記載と蛍光浸透探傷試験の実務者としての私の見解を「絵とき 非破壊検査 きその基礎」の中に書きました(2011年12月23日追記)。

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