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「JAL123便」本販売開始

 先日このブログで紹介した寺田博之著「JAL123便事故 安全工学の視点から検証する」が、Amazonをはじめとしたネット本屋でも販売が開始になったようです。

Jal123_pressure_bulkhead

これは、本の表紙に掲載されている事故機の圧力隔壁(pressure bulkhead)の写真です。寺田さんの当時の勤務先であった航空宇宙技術研究所(NAL 現在は統合されてJAXA)持ち込まれたときの写真です。

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 寺田さんは航空宇宙技術研究所で強度研究室長などされていた航空機構造と構造破壊の一線の研究者でしたから、事故調査委員会のメンバーになってもおかしくない立場の方でした。事実、航空宇宙技術研究所からは委員長をはじめとして複数の方が事故調に入っています。事故調メンバー選択の基準については疑問の残るところです。構造破壊や疲労破壊の専門家は事故調メンバーの中にはいなかったという話もあります。
 寺田さんは、もしも事故調メンバーであったならば解散後も守秘義務が課せられてこのような本を刊行することができなかったであろう、と述懐されています。寺田さんは、事故調の外から事故原因の解明に重要な役割を果たしてゆきました。そして、その後も安全工学の立場からこの事故のことを念頭において研究を続けてこられました。その内容については、本書を読んでください。
 ところで、本書のあとがきには私の名前が「本書をまとめるきっかけとなった出来事」として登場します。じつは、昨年北海道機会工業会検査部会の検査技術研究会で寺田さんに『航空機の安全と非破壊検査』と題して特別講演をしていただきました。その翌日、新千歳空港までお送りしたのですが、その際に私が「JAL123便の事故に関して、あれだけの事故でありながらいい加減な俗説を書いた本はたくさん出ているけれど、事故の教訓を航空安全に結び付けていく視点から書いた本はいまだにありません。ぜひ寺田さんが書いていただきたい」とお願いしたのです。
 私のお願いがこの本を出すきっかけとなったとすれば、大変光栄なことです。私が生涯で成し遂げた仕事のうちで重要なひとつといえるかもしれません。もちろん私は真剣にお願いをしたのですが、田舎の教員のほら吹きのようなたわごとを真剣に受け止めていただき、本書の出版にまでこぎつけてこられた寺田さんに改めて敬服いたします。このブログの読者の皆さんにもぜひ読んでいただきたい一冊です。

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コメント

SUBALさん こんにちは

販売開始をお知らせ頂きありがとうございます。amazonに掲載されているのですが、在庫がありません。
また出版の経緯も良くわかりました。入手まではしばらく時間がかかりそうですが、夏休みには読めそうです。

投稿: 271828 | 2010年7月 3日 (土) 15時44分

この夏は、事故から25周年になります。この事故は歴史的な事故ですが、ある程度時間がたたないと書けないこともあるのだろうと思います。この本の行間からは、そのあたりの筆者の感情も読み解くことができます。研究者が工学的立場で論ずるとしても、やはり多くの犠牲者が出ていることは重みとしてあるのだろうと、想像します。

投稿: SUBAL | 2010年7月 3日 (土) 16時58分

お久しぶりです。
ブログに貼付けてあるボタンではなく、Amazonのトップページから入ってJAL123便の本を探したら、センセーショナルなタイトルの本の多いことに驚きました。会社での議論でも、業界での議論でも客観的な積み重ねからきちんと議論することよりは最初に思い込んだことがあってそれに都合の良い証拠を集めて議論することが少なくありません。
まさに、JAL123便の事故原因に関する多くの本がこのようなものの感じがします。
今回の本はそれに対して、色々な情報の積み重ねで隔壁のずさんな修理を原因としているのは納得のいくものですが、私としては納得のいかないところがあります。
それは、この本全体の話を否定するものではありませんが、P62,P63の「1列と2列リベットの違い」の内容です。
簡単にいうと1列リベットは摩擦接合にならないが2列リベットは摩擦接合になるという内容ですが、摩擦接合になるかどうかは接合面の状態(鋼の場合は黒皮面ではなくショットブラストと打ったり、錆を発生して摩擦係数を増やす)と締め付けるリベットの軸力(昔、鋼で使ったリベット継手は摩擦接合ではなかったと思います)によって決まります。
実際、鋼の摩擦接合のボルト継手の引張試験を行うと極限に近づくとすべりを始め、試験後に分解すると摩擦接合の跡を見ることができます。そのときの施工時のボルトはかなり高い軸力で締め付けています。
私はアルミのリベットの接合でそのような高い軸力で締め付けることができる
かどうか知りませんが、果たしてアルミのリベット接合は摩擦接合になっているのでしょうか?
摩擦接合になっていなくても(支圧接合と考えますが)、1列リベットと2列リベットでは明らかに2列リベットの方が疲労強度はあると思いますが、こんどは穴と穴間の距離や穴と部材端部までの距離があまり近いと2列リベットの方が疲労強度が低下する場合もあると思うのですが。
あと、余談ですがP107の「浸透探傷検査」の文中で「蛍光液が青白く発光」とありますがどちらかというと黄緑色という表現が近いのではと思いますが。
以上のことが仮に違ったとしても本書の価値が下がる訳ではないのですが。

投稿: Ikegaya | 2010年7月10日 (土) 18時50分

Ikegaya さん こんばんは

>センセーショナルなタイトルの本の多い

この事故をねたにして、根拠薄弱なたわごとを並べた本を出している人がいて、私は色々な意味で憤っています。寺田さんにちゃんとした本を書いてほしかった理由です。

疑問とのことですが、1列と2列では力の伝達が実際どうなるのか、この事故以降寺田さんの研究テーマのひとつでした。その結論が2列では板の摩擦が力の伝達に大きな役割を果たしているということです。2列で単純にせん断応力による抵抗が2重になるというだけでなく、1列がいかに危ないのかを示したということです。
この本には「このことは実験的に確かめられており、事実2列リベットでは1列リベットに比べて10倍以上の繰り返しに耐えることが分かっている。」と結論的にしか述べられていませんが、実験的な事実だと理解しています。
62ページに示されている赤外線応力解析の結果は摩擦によって力が伝達されていることのひとつの証拠であると思います。
寺田さんがJSNDIにかかわって、赤外線サーモグラフィーの委員会に入って活動されていたことも、この事故の教訓を確かなものにしてゆくことにあったのだと推測しています。

投稿: SUBAL | 2010年7月10日 (土) 20時02分

赤外線応力解析結果に関して少し疑問があります。それは、摩擦接合の場合でも(ただし、鋼でのボルトによる摩擦接合しか知りませんが)すべりやボルトが飛ぶほどの引張試験を行った後に、試験片を分解すると摩擦の跡はボルト穴周辺に集中的に生じます。つまり、現実的にはスプライスプレート全体が摩擦接合になるというよりボルト穴周辺が摩擦接合になっていると思われます。(ただ、多数の試験体を経験した訳ではないので断定的に言えないかもしれません)
アルミでも同じと考えた場合(アルミでは経験がないのでこの考えが間違いかもしれませんが)、支圧であれ摩擦接合であれ穴周辺に応力が集中していると考えられ、アルミの熱伝導度等を考えると温度勾配で摩擦接合と判断するのは困難ではないかと考えています。温度解析を行なっているので大きな荷重で引張試験を行なっていると考えていますので、その継手を分解すると摩擦接合かどうかわかり、あえて温度解析でなくともよいと思いますが。
あと、鋼のボルト継手で摩擦接合の場合には、母材やスプライスプレートに比べかなり強度の高いボルト(おおよそ2倍の引張強度)を耐力の7割位まで締め付けて摩擦接合を実現しています。
それに対して、アルミのリベット接合(実際にどのようなリベット接合か詳細にしりませんが)で1列なら実現できないが2列になると摩擦接合を実現していることが理解できないというだけです。
むしろ、図に示すような圧力隔壁の修理では、リベットが1列か2列かよりもスプライスプレートが一部分割されている方がよほど応力の伝搬という意味では有害ではないでしょうか?そのために、特定のリベットに応力が集中していたと考えるの素人の誤りなのでしょうか?

投稿: Ikegaya | 2010年7月11日 (日) 02時56分

Ikegaya さん

今回のご意見は、率直なところ意味が分かりません。

まず話の前提ですれ違っていそうですので、そこの確認から。

(1)スプライスプレートが切れているからこそ1列になってしまっていること。このことが修理ミスの核心であり直接の事故原因であること。

(2)リベットのせん断破壊で圧力隔壁が壊れたわけではないこと。

(3)破壊は板(A2024-T3 引張強さ485MPa)の疲労破壊で、遠方での繰返し応力は引張強さよりずいぶん小さい値(90MPaあたり)での話であること。

この前提は共有していただけていますか?

Ikegayaさんの論拠は、引張試験で破壊後摩擦痕が目視できれば「摩擦接合」、そうではないのは「支圧接合」とされているようですが、こうした判断は一般化できるものなのですか。私はこのあたりに詳しくはありませんが、重ねあわせ接合の場合多かれ少なかれ「摩擦接合」と「支圧接合」は混在しているのだろうと考えますが、違うのでしょうか。そこで、破壊力学的な検討の前提になる板の繰返し応力がどの程度なのかが問題になっているのです。何らかの形で応力解析が必要でしょう。「熱弾性応力解析装置」で求めた結果が示されているのですが、それを否定するのに引張試験で破断した後の摩擦痕の有無を対置するのは、私には理解できません。
熱弾性応力解析の結果が信用ならないということのようですが、それならば原論文を検討して言うべきでしょう。私は、寺田さんを個人的に存じ上げていますから、こんな大事なデータでいい加減なことを言う人ではない、というあたりでひとまずこのデータの信頼性を判断しています。Ikegayaさんの言われることがもし的を得ているとしたら、この本の価値のほとんどはなくなると私は考えます。確信がおありなのであれば、ぜひ真正面から向かってほしいと思います。

投稿: SUBAL | 2010年7月11日 (日) 12時37分

まず、私はリベットのせん断破壊で圧力隔壁が壊れたとは一言も言ってません。また、前提については共有しているつもりです。
単純に1列のリベットが摩擦接合ではなく、2列のリベット接合なら摩擦接合(正しく言えば主たる力の伝達がスプライスと母材の摩擦によって行なわれる)であるという内容が納得できないと言っているだけです。
そのようなことがありますかと聞いただけです。
「熱弾性応力解析装置」で解析に関しては、私の方で、今、実験的に確認することはできません。ただ、本に記載されている図の何をみれば摩擦接合だということを判断できるかわかりません。
再度言いますけど、単純に1列のリベットが摩擦接合でなく、2列なら摩擦接合ということが論理的に納得していないだけです。
ただし、この私の思考が正しいのか誤っているのかを実験的に確認することは出来ませんから、確信などはありません。


投稿: Ikegaya | 2010年7月11日 (日) 20時44分

Ikegayaさんが、引張試験での破断した後の摩擦痕を根拠に「摩擦接合」と「支圧接合」を論じられているので、議論の前提を確認しておきたかったのです。その場合の破断は、相当大きな摩擦力が働かなければ、リベット軸(ボルト軸)か板面のせん断破断でしょう。

>本に記載されている図の何をみれば摩擦接合だということを判断できるかわかりません。

この本の本文中に記述がありますが、図10に示された特にリベットすぐ下の応力分布が1列リベットと2列リベットでは明らかに様相が異なります。1列リベットのほうではリベットのすぐ下で大きく圧縮側に傾斜する応力分布になっています。2列リベットではそうなっていません。これは力の伝わり方が異なっているとは考えられませんか?
私は素直に板の面に生じる摩擦力が力の伝わり方に大きく影響していると納得しました。
この本には応力分布に関する数値は記載されていませんが、他の本(「わかりやすい構造破壊の防止技術」)には同じ図を示しながら、遠方の応力が60MPa程度で1列リベットの下では引張側から-20MPaの圧縮応力に急に落ち込んでいる結果が示されています。それに対して2列リベットではリベットの下で引張(26MPa程度)でフラットになっていることが示されています。
 Ikegayaさんの論拠は、摩擦痕が得られるには高力ボルトで締め上げたときであってそれが「摩擦接合」であってそれ以外では摩擦によって力は伝わらない、という「経験知」です。一般化できるかどうかも不明な「経験知」を対置して何を否定しようとされているのかが私には理解できないのです。

投稿: SUBAL | 2010年7月12日 (月) 04時26分

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