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ニアミスとスイスチーズモデル

 10月26日午後1時40分ごろ、中部国際空港を飛び立ち旭川に向かっていたANK(エアーニッポン)のB737型機(乗員乗客57名)が管制官の誤った指示により、高度を下げすぎて対地接近警報装置(GPWS)が作動し、パイロットが急上昇することによって山への衝突を回避したというニアミスが発生したようです。

 山に激突していたら、旅客機の墜落事故としては1994年に中華航空機が名古屋空港へ墜落した事故、山への墜落としては1985年のJAL機御巣鷹山墜落事故以来の惨事になりました。人のミスや機械の故障などは時としておきますが、それに気づき事故を回避するシステムが働き、事なきを得るのが普通です。事故になるのは多重チェック機能が有効に働かなかった場合です。多重チェック機能が働かずに事故に至ることの説明としてスイスチーズモデルというのがあります。図は、寺田博之著「JAL123便事故 安全工学の視点から検証する」より引用。

Swiss_cheese_model

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 穴の開いたナチュラルチーズをスライスして重ねたとして、穴が並んで貫通した場合に事故になるというモデルです。1枚のチーズに穴が少なくなるか、チーズの枚数が多くなれば事故の確率は下がるということです。
 今回のANK機のインシデントの場合、若い管制官のミスがクローズアップされていますが、これはチーズのひとつの穴に過ぎません。言ってみれば、最後のチーズ(GPWS)には穴が開いていなかったために事故が回避されたといえます。
 一人の管制官が勘違いをしたとして、管制官のダブルチェックがあれば、管制室のモニターに警報が出るシステムがあれば、パイロットが目視で確認できれば、パイロットが航路と高度を把握していて管制官の誤指示に気づいていれば、機長が気づかなくても副機長が気づいていれば・・・・考えられるだけでもこれだけあります。
 このインシデントにあわせるようにして、9年前に起きたニアミスについて最高裁判所の判決が出たようです。この判決に対して柳田邦夫氏が意見を述べています(こちら)。
 柳田氏の意見に賛成です。日本では、担当者を刑事罰に処することが優先されて、事故や事故直前の事例から学び尽くすという視点が後景に追いやれれています。
 人の命を預かる職業につく人を育てるという観点が必要です。人はミスをする動物である、ミスをした人が自責と同時に誇りを持って事故原因の解明の先頭に立つ、周りの専門家は知恵を絞ってサポートをする、そうあってほしいと思ってこのブログでは事故を取り上げています。
 今回の問題は、チーズの最初の穴としてはヒューマンファクターの問題として掘り下げてほしく、システムとしてはGPWS以外の多重チェック機能がなぜ働かなかったのかという点を掘り下げてほしいと思います。決して若い管制官の能力や倫理観に矮小化して刑事罰を科して終わりとしてほしくはありません。エキスポランド事故のような解決は最悪です。ジェットコースターが再び事故を起こすということとは影響が違うと思いますし・・・。

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