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アナログ式超音波探傷器での時間軸の校正

 JSNDI機関誌に掲載された「受験者および指導者に望むこと」という文章について、疑問点を書いてきました(1.2)。探傷の基本を教え資格試験に挑戦するひとを指導している立場からは、あのような見解を突然に公開されるのは正直困るのです。資格試験を実施している委員会の文章です。影響は大きいのです。探傷や教育訓練がどのようにやられているのか良く実態を調査してから書いてほしいと思います。
 アナログ式からデジタル式に移行するに当たって、探傷方法や用語について議論すべきことがあると思ってきました。例の文章の筆者が使っている用語も、私は見直すべきものと思っていたものが従来の感覚でそのまま使われています。
 たとえば、「音速調整」という用語。あるいは横軸(=時間軸)のスパン調整とゼロ点を調整しているプロセスを「測定範囲の調整」と表現すること。これは、アナログ式の時代に慣習的に使われていた用語で、デジタル式の時代にはどう考えてもマッチしないのです。
 今日は、アナログ式超音波探傷器ではどのように行われるのか動画で紹介します。

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 この動画は、パソコンソフト「超音波探傷入門」の中にある「測定範囲調整」のデモンストレーションです。このソフトウエアは私が作ったものですが、JSNDIが「超音波探傷入門」という本とともに出版してくれています。


1.アナログ式の時間軸の校正

 超音波探傷器の表示画面は、基本的にはオシロスコープで、縦軸は電圧、横軸は時間を表しています。全波整流をした波形を表示しています。試験体中を伝わる音速がわかっていれば、時間軸上の点は距離として読み取ることができます。超音波探傷にとって必要なのは時間ではなくて反射源までの距離になります。アナログ式の場合はCRT画面に打った目盛を使ってエコーについてその試験体表面からの距離を読み取れるようにするために調整を行います。この調整のことを「測定範囲の調整」と呼んでいました。
 たとえば厚さ25mmからの繰返し多重エコーの1回目のエコーを50目盛中の10目盛目に4回目のエコーを40目盛目にあうように調整すると、50等分に打たれた目盛のひと目盛が2.5mmに相当すると読めるようになり、50目盛目が125mmにすることができます。これで「測定範囲を125mmに調整できた」としているのです。

2.「音速調整」という用語について

 この行為は、「試験体の音速にあわせて距離を読み取るために、探傷器の時間軸の縮尺を調整している」といえます。これを「音速調整」と表現している場合がありました。私は「音速調整」というと「音速を調整する」と普通は考えるわけで、適切な表現ではないと思ってきました。音速は試験体によって決まり探傷器では調整できないのですから。
 デジタル超音波探傷器では、内部に演算機能を持っていて試験体の音速を探傷器側に教えてやれば、エコーの伝搬時間を距離に計算して表示してくれます。試験体の音速を計測して、その値を探傷器に入力すればよいのです。ここまでくれば、これを「音速調整」と呼ぶのはアナログ式時代以上に相当に無理があると思います。音速設定とでも呼ぶのが良いと思います。

3.「測定範囲の調整」という用語について

 アナログ式の場合は、上述のやり方で横軸を校正しますから、一旦測定範囲をたとえば125mmに調整してから250mmの範囲まで見る必要が出てきたら、もう一度多重エコーを出して調整しなおす必要がありました。しかし、デジタル式では横軸を距離として読み取るためのデータ(音速とゼロ点=プローブディレイ)は持っていますから、125mmから250mmに変える場合は測定範囲の値を入力すだけで良いのです。これを「測定範囲の調整」という用語で呼ぶことが良いのか、私は疑問です。これも測定範囲の設定のほうが良いと思います。
 まして、当初に時間軸の校正を行っている場面を「測定範囲の調整」と呼ぶのは適切ではないと思います。
 アナログ式からデジタル式に移行するに当たっては、考えなければならないことはまだたくさんあります。仮に用語上でも不適切と判断できたとしても、これまでの慣例もありますから、移行期間が必要であることは理解できます。NDTフラッシュの筆者の用語の使い方は、そのことを考慮しても私はよろしくないと思います。

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