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超音波探傷の基本って?垂直探傷の横軸調整

(社)日本非破壊検査協会(JSNDI)の機関誌11月号「NDTフラッシュ」に掲載された「受験者および指導者に望むこと」という文章への疑問第2弾です。

Utadj これは、垂直探傷での横軸(時間軸)の校正方法についてです。「音速を5900m/sでゼロ点を調整」する方法について「不完全で精度が悪い」として、「STB-A1の板厚25.0mmの多重エコーB1とBnにゲートを掛け、2点間の距離の差が実寸法と一致するように音速調整した後、ゼロ点を調整するのが基本である。」としています。これ本当でしょうか?

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 多分この文章の筆者は、音速を5900m/sに設定して、B3(板厚110mm程度の場合)、B1(板厚25mm程度の場合)でゼロ点を調整すると、測定値にどの程度誤差が出てくるのか、実測もしくは計算をしてはいないでしょう。やってみてください。「不完全で精度が悪い」という言葉は出てこないはずです。5Z20Nの探触子を使うと0.1mmの誤差がせいぜいです。0.1mm以下の精度を求めているのでしょうか。
 また、この文章の筆者が「基本」とする2点校正をすると0.1mm以下の精度が出るのでしょうか。そんなことはありません。2点校正を行うと、5Z20Nで音速の値は5800~5930m/sの間でばらつきます。これは、測定者の技量未熟でもSTB-A1の音速のばらつきでもありません。同じ試験片でそうなり、2点校正法の方法自体によるものと考えられます。
 私はデジタル超音波探傷器の時代に、毎回探傷前に標準試験片であるSTB-A1の音速を25.0mmの多重エコーで測定することが、本当に「基本」なのか真剣に検討してほしいのです。5MHzならまだしも、2MHz程度に周波数が下がり波長が長くなった場合、この方法の問題点は大きく浮き彫りになります。
 はっきり言うと、この筆者のいうやり方は「アナログ探傷器の時代にやむを得ず行ってきたやり方をデジタル探傷器に置き換えてやっている」だけなのです。そのやり方を実際に現場で行うと、探傷ごとに音速の値が違う(しかもその音速が標準試験片の音速である)という部外者にはとても説明することができない事態が生み出されることに、思いを馳せてほしいのです。
 標準試験片で横軸を調整するということは、探傷する試験体と音速が多少ずれていることが大前提になっているはずです。鋼の標準的もしくは平均的な音響特性を持つものとして標準試験片が制定され使われてきたはずです。それなのに、デジタル探傷器の時代になって、探傷前の探傷器の校正の際に実質上毎回標準試験片の音速を測定する校正方法を行う必要がいったいなぜあるのか。冷静に考えてほしいものです。

 私はこう考えます。

  1.  デジタル超音波探傷器を使う場合は、探傷前には音速は測定するのではなく設定するもの。
  2.   設定する音速は、標準試験片ではなくて試験体そのももの音速にするのが基本。そのためには試験体の音速をあらかじめ測定しておく。
  3.   試験体の音速を測定することが不可能で、標準的な鋼であると考えられる場合は標準的な鋼の音速を入力する。測定するビーム路程の近くでゼロ点調整をすれば、誤差は微々たるものになる。

つけ加えると、音速を測定する場合は、使用する測定範囲より大きいスパンで行うべきです。測定範囲125mmなのに25mmのB1・B2・B3などの短いスパンを使うのはスパン調整の観点からは基本から外れてはいませんか。音速の測定のときはピーク方式にしてスパンを広く取るべきです。設定する音速は手順書もしくは指示書に書いておけば良いのです。

この件は、ずっと問題意識を持っていたことです。皆さんはどう考えますか?

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