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SN線図とパリス則

 ネット検索をしていると有益な情報を得られることがあります。たとえば、Newman-Rajuで検索すると、Newman-Raju解として有名な論文そのものをPDFファイルで手に入れることが出来ます。その論文を参照して、疲労亀裂に関する自己評価では良くできたソフトウエアを公開することが出来ました(こちら)。
 もちろんガセネタもいっぱいあります。技術的な質問に答えるページの中にこんなのを見つけました。
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当方,パリス則を用いて設備の亀裂進展計算を行っております.
そこで,使用している材料(SF45)の材料定数(C及びm)を探しているのですが,見当たらず困っております.
パリス則に用いる材料定数が載った文献等ご存知でしたら,お教え頂けないでしょうか?
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パリス則の材料定数(C及びm)は文献を当たってもなかなか出てきませんから、このような質問はありうることかと思います。実際私もSF45のパリス則の材料定数(C及びm)のデータはもっていません。驚いたのはこれに対する回答です。

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用語解説に『疲労き裂進展速度da/dNと応力拡大係数範囲ΔKの関係を両対数グラフ上にプロットすると,一般にほぼ直線とみなせる領域が現れる.この現象はP.C. Parisによって初めて見出されたことから,両者の関係を表す式da/dN=C(ΔK)mをパリス則という.C,mは材料定数である.』とあります。
物質材料研究機構(NIMS)にユーザー登録すれば豊富な疲労データを入手できます。データを入手し,SNカーブから材料定数を求めれば良いと思います。
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回答者が自分と自分の回答について評価しているのですが、「関係者」「自信あり」とあります。驚くほどピントはずれで間違った回答です。思わずコメントを入れようかと思いましたが、回答は締め切られていました。

S-N線図とは、縦軸に応力振幅、横軸に破断までの繰り返し数をとって疲労試験結果をグラフにプロットしたものです。(SN線図とパリス則のグラフは、こちらの論文  から引用しました。)

Sn

それに対してパリス則は、1サイクルあたりの亀裂進展幅(da/dN)を亀裂進展速度として縦軸に、横軸は応力拡大係数範囲(⊿K)をとると、疲労亀裂進展の第2段階では直線になる範囲があるというのもです。Cとmは直線の傾きと切片の値です。

Parislaw

疲労試験をして破断するまでの繰返し数のデーターから、途中の亀裂進展速度が出てくるはずがないのです。簡単に言えば、箱根駅伝のゴール時に計測した総走行時間のデータから、箱根の山上りや山下りの時の速度を出そうとしても無理なのと同じなのです。

パリス則のデータから、まず学ぶべきは、グラフが右肩上がりだということです。つまり亀裂の進展とともに進展速度は加速度的に上がっていく。こちらのソフト。この回答した「関係者」氏は多分このあたりは全くわかっていないと思われます。質問者から再質問されて、明らかに戸惑いながらごまかしています。困ったものです。

大学の機械系では破壊力学を教えているはずですけれど、こういう基本的なことがわかっていない人が割りと多くいそうだという気がしています。「学びて思わざれば則ち罔し」というところですかね。

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コメント

私設計をやっております。
私もSUS403のC、mが知りたくて、NIMSの
疲労データシートを調べたのですが、結局
わかりませんでした。
どんな資料に載っているのでしょうか。
ご教示いただければ幸いです。
よろしくお願いします。

投稿: FUJII | 2012年2月 2日 (木) 00時56分

FUJIさん ようこそ
この手のデータなかなかないのが実情です。NASAに関連した文献を丁寧に探せば出てくると思います。ただやっとたどり着いても文献によって数値に幅があることもあります。
一応鋼の場合、引張強さとの相関を示すデータがありましたので、新たな記事にしました。私の名前のところをクリックしみてください。

投稿: SUBAL | 2012年2月 2日 (木) 07時07分

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