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JSNDI UTレベル1の試験問題から

 17日~19日にかけてJSNDIの秋期の1次試験が全国各地で行われました。今日勤務先に行ったら、学生から「こんな問題が出たのだけれど、正解はどれですか」と尋ねられました。

択一選択問題で、正しいものを選べという問題です。

(a)ゼロ点調整は測定範囲の調整には関係しない
(b)ゼロ点調整キーは斜角探傷のみに使用する
(c)音速調整キーは測定範囲の調整に使用する
(d)測定範囲調整キーはゼロ点調整キーと同じである

 記憶による再現ですから、違うところがあるかもしれませんが、受験者が現場で迷って考え抜いていることから用語表現は違っていないだろうとの感触を私は持っています。

超音波探傷を知らない人にとってはチンプンカンプンでしょうが、わかる方は考えてみてください。その前に・・・

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 (b)と(d)は問題外で違いますから、答えは(a)か(c)です。

 私は、アナログ探傷器を使う場合とデジタル探傷器を使う場合では答えが違ってくると思います。

 アナログ探傷器を想定した場合は(c)が正解。デジタル探傷器を想定した場合は(a)が正解。はて、どっちなのだろう。「ゼロ点調整」という用語「キー」という用語を使っていることから、デジタル探傷器を想定していると考えられます。

 測定範囲というのは、時間-距離を表す探傷器横軸で最大表示できる距離(ビーム路程)のことを言います。定義では「探傷器の目盛板又は補助目盛板の時間軸に表示されるビーム路程の最大距離」

 アナログ探傷器では、距離がわかっている2つエコーを、エコーの間隔が伸び縮みするつまみ(RANGE)と間隔は変わらず全体が移動するつまみ(パルス位置調整つまみ)を使って横軸目盛の所定の位置にあわせることで、時間軸の校正を行っていました(こちらを参照してください)。この場合、測定範囲を何mmにするかをあらかじめ定めておかないと、あわせる目盛が決まらないことから、時間軸の校正と測定範囲の設定は同時に行われていました。このため、時間軸の校正を「測定範囲の調整」と呼ぶ慣わしがありました。現在でもその慣わしは残っています。

 ところがデジタル探傷器では、音速の設定とゼロ点の調整(=時間軸の校正)は測定範囲をいくらにするかとは切り離して実施することが可能なのです。ビーム路程の読み取りは、目盛からではなく、ゲートを使って探傷器内の演算機能を使うからなのです。このため、デジタル探傷器では、測定範囲は時間軸の校正前でも後でも音速やゼロ点とは無関係に任意に設定可能なのです。

 最近年をとって懐疑的になっている私には、出題者は(c)を正解にしているのではないかと疑っているのです。出題者が『アナログ感覚を投影した、デジタル探傷器オペレーション』の落とし穴に陥っていませんかねぇ。

 デジタル・ネイティブの普通の感覚では、答えは(a)です。デジタル時代を迎えて用語の整理の必要があると思います。今は過渡期で、実態と用語の整理が追いついていない段階です。何でこの時点でこんな問題を出すのですかね。もう少し考えてほしいと思います。

 試験問題は公開すべき、という多くの声を無視して内輪だけで問題を作っているから、こんな問題も出てくるのだと私は思います。

 この問題について、採点からはずすことを強く要望します。

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コメント

はじめまして。
時々ここのBlogを読みには来ていたのですが、今回の記事がとても気になりましたのでコメントさせていただきます。

私もこのたびのUTレベル1一次試験を受験して、この問題で10数分間程度「ああでもないこうでもない」に陥りました。

仕事柄、デジタル探傷器アナログ探傷器どちらにも触れる機会が多くあります。
「デジタルの操作上だとこうだなぁいやでもアナログではこうするんだった」のシミュレーションを繰り返し、
最終的にアナログ基本で考え、後は多少やけっぱちな考えですが問題を考える人のつもりになって解答欄を埋めました。

採点をどうの、と要望することはできない立場ではありますが後になっていろいろ考えさせられる問題でした。

投稿: M.I | 2011年9月20日 (火) 21時40分

M.Iさん

コメントありがとうございます。
これは、アナログもデジタルも両方使う人は迷いますよね。

コメントからするとM.Iさんは、(c)と解答したということですね。

受験者が、出題者の錯誤を想定して答えを導き出す試験なんて、もうすでに技量を確認する資格試験の域をはみ出していますよね。困ったものです。

投稿: SUBAL | 2011年9月20日 (火) 22時45分

はじめまして(コメント初めてなので)。

選択肢の用語をちょっとデジタル式に変えただけで、答えは変わ
らず(C)のまま…ってパターンだったら最悪ですね…。
デジタル探傷器の操作仕様に「測定範囲を125mmにする調整方
法」とか書いた時点で「違和感あるな~」とか思って欲しいです。
やはり、「調整」というよりも「設定」とした方がいいです。

投稿: ぐるぐる | 2011年9月20日 (火) 23時56分

ぐるぐる さん ありがとうございます。

問題集をチェックすると、明らかにデジタル時代では試験問題として出題できない問題が結構あります。だから新たな問題を作らなければならなかったのでしょうが、これはひどすぎる。

>「測定範囲を125mmにする調整方法」とか書いた時点で「違和感あるな~」とか思って欲しいです。

そうなんですよね。私がこの件を考えるきっかけになったのもこの「違和感」でした。試験問題を作っている偉い先生たちにこの感性が欠如しているとしか思えません。オペレーションのプロセスを論理的に考えると「違和感」は「用語と行為のずれ」として必然的に認識できると思うのですがね。

投稿: SUBAL | 2011年9月21日 (水) 00時53分

突然のコメントで申し訳ありません。

この度、超音波探傷試験レベル1に挑戦することになりまして、
先日、実技3日間、学科2日間の講習を受けました。

その結果、学科の方は何とかなるような気がしましたが、実技のほうがまったくの初心者なもので、ちんぷんかんぷんでした・・・

垂直探傷・斜角探傷の試験で行う内容(手順)を1から細かく記載して頂けないでしょうか。

又、実技講習の最終日にドリルと言う形で模擬試験見たい感じに行ったんですがその時に使った試験片を本番の試験でも使用するのでしょうか?

ネット販売をみていると上記試験片が販売されていましたので、本番試験でも同じものが使用されるのであれば購入を考えています。

※協力して頂ければ幸いです。

投稿: masuda | 2014年7月 7日 (月) 15時39分

masuda さん

今東京でUT1の講習会が開かれているところですから、masudaさんは大阪で受講されたのでしょうか。

学科(理論)については、理解できそうだけれども、実技がチンプンカンプンとのこと、第1歩を踏み出したということですね。単に資格試験に受かるということではなく、知識と技術と技能を持った非破壊検査技術者になるよう精進してください。

>垂直探傷・斜角探傷の試験で行う内容(手順)を1から細かく記載して頂けないでしょうか。

これは結論から言いますとおこないません。二十数年初心者教育を行ってきた経験から言わせていただきます。最後まで読んでください。

レベル1の技術者に求められる技量は、NDI指示書に書かれていることを理解してそれに忠実に探傷できることです。もっと細かく書かれていないと(チンプンカンプンで)探傷できない人は「有資格者」になってはいけないのです。

逆の言い方をすると、この時点でチンプンカンプンな人に、もっと細かいことを書いてもチンプンカンプンの量が増えるだけです。整理する棚と整理する方法を知らないところに、もっと多くのものを入れたら、散らかり度合いが増すことと同じです。

まずは「指示書」に書かれていることを理解できるように努力してください。

「実技3日間、学科2日間の講習」のカリキュラムは、よく丹念に見ると段階的に「指示書」を理解できるような項目が積み重ねられています。まずはそこの復習です。

そのうえで実技試験に受かるポイントは以下の3点です

(1)その意味を理解し正しい手順が実行できること
(2)探傷器の操作(メニューや機能キーなど)に慣れておくこと
(3)基本通りの探触子走査をすること

です。

(1)は知識です
(2)は慣れです
(3)は体得するものです

(1)テキストに書いてあることは理解できるということですから、それらが実技にどのような意味を持っているのか、「知識」が実践的なものになるようにもう一度見直してください。

(2)は慣れですから、触った回数で身に着きます。学科試験後に行われる実技対策講習会だけでは不安であれば、このブログでも紹介している「超音波探傷入門」ソフトウエアを活用してください。

(3)は、適切な指導者の下で実際に手を動かして体得する以外にありません。

私は私の信念で、以上のことをすっ飛ばして小手先で資格試験に受かるような指導はするつもりはありません。また小手先で受かる試験でない(と信じたい)です。

技術習得に近道やショートカットはありません。頑張ってください。

投稿: SUBAL | 2014年7月 8日 (火) 01時08分

ご返事ありがとう御座います。

⑶適切な指導者の下で実際に手を動かして体得する以外にありません。

で我社で私が始めての挑戦でありまして、困っており質問させて頂きました。

なんとか、頑張ろうと思います。

投稿: | 2014年7月 8日 (火) 11時58分

masuda さん

地方で教えてくれる人が周りにいない状況でのNDI技術習得のご苦労はよくわかります。私もそうでした。
数日間の講習以外は、基本独学で全6部門レベル3まで働きながら勉強してきました。
また数千人の若者を有資格技術者を育ててきました。その経験をもとに申し上げています。
まずは、学科試験合格に向けて実践的な知識を身につけてください。学科試験が合格したら、実技対策講習会を受講してみてください。頑張ってください。

投稿: SUBAL | 2014年7月 9日 (水) 02時52分

はじめて、コメントさせていただきます。

先日、UT2の更新試験に行った際、こちらのつぶやきを思い出し、ふと覗いてみると、今年に入ってのやり取りがあったので、以前からお伝えしたかったのですが、3年前の内容だから躊躇していたコメントをさせていただきます。

申し遅れました。昨年、お会いして反射能率等のお話を伺った後、このブログにも登場させていただいたSです。
ネット上ではこの名前でサーフしています(笑)。

その節は、いろいろお話させていただきありがとうございました。あれからもう1年経ちますが、お変わりなくご活躍されていらっしゃるようで、こちらのブログを拝見する度、私も日々精進の毎日です。

で、本題です。

協会から出版されている『超音波探傷試験 実技参考書「デジタル超音波探傷器」編2009』、P.19の[3.5測定範囲の調整]に、「デジタル式では、音速値を調整した後、ゼロ点調整をする。」
とあります。

なので、協会側の回答としては、デジタルだから(c)が答えという内容となっています。

ご報告まで。

しかし、この問題のお陰でこちらのブログにコメントできてありがたかったかなと。これを機会に、ちょくちょくお邪魔しますので、今後ともよろしくお願いします。

追伸:
更新試験を受験したとコメントしましたが、チキンな私は、UT3を失った時の事を考え、UT2の更新を受けました。まだまだです。
あ、試験当日は、シャーペン2本に鉛筆1本、更に消しゴム2つと準備万端で臨み、合格しました(爆)。

投稿: 軍曹 | 2014年10月 9日 (木) 23時48分

軍曹 さん

コメントありがとうございます。
昨年お目にかかったときに、反射率と形状反射能率について議論できたのは嬉しかったですね。この辺りを真剣に議論できる人はなかなか見当たらないのです。あの時教えていただいた木村勝美先生の論文は、このあたりの議論の歴史を考えると実に味わい深いなと思います。
さて、3年前のUT1の問題についてですが、試験官が想定している答は(c)というのはおっしゃる通りだと思います。

「測定範囲」も「測定範囲の調整」も用語としてJISに規定されていません。「測定範囲」はNDISに用語の定義があります。
「測定範囲の調整」は慣用として長いこと使われてきましたが、デジタルの時代になって明らかに見直し整理すべき時期に来ています。この時期に資格試験に用語の定義を問うような内容を出題するのはいかがなものか、私はあえて異議を唱えます。田舎のエンジニアのツッパリです(笑)。
 

投稿: SUBAL | 2014年10月10日 (金) 03時45分

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