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ある大学教授の見解「非破壊検査は楽な仕事」

 niwatadumiさんのブログで、非破壊検査のお仕事についてある大学の教授の見解が紹介されていました。こちらのブログ記事(「福島原発事故が起きる日本文化の特徴」)です。

 刺激的な内容ですが、私はこの方の見解の中に私が排除したいと考えてきた非破壊検査周辺の学者や研究者の中にある偏狭なセクショナリズムを感じてしまいました。 このブログのコメント欄に意見を書いたのですが、字数制限が500文字でオーバーフローしてしまいましたので、コメント欄に案内を書いて、こちらに内容を掲載することにしました。

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以下私のコメントです。

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 非破壊検査の仕事に現場で10年携わり、現在は非破壊検査を教える教員をしています。刺激的な問いかけですので、私の意見を述べさせてただきます。

 実構造物のレベルで10ミクロンの解像度で「内部のクラック」を検出する装置を開発されたとのこと、すばらしいことだと思います。私の認識では、焦点寸法がごく小さい装置を使って薄物の探傷する場合、あるいはX線CTで小物を探傷する場合にミクロンオーダーの解像度が出ることは知っておりましたが、橋のような実構造物に適用できる装置が開発されていることを不勉強で知りませんでした。画期的と思います。私が知る限り、装置がすばらしければ、それを拒否する態勢には非破壊検査業界はなっていないと思います。ぜひ積極的な発信をお願いいたします。

 しかしながら、優れた装置ができたらすぐにJIS(JISは法律ではありません)に反映されるかといえば、それは認識が間違っています。JISのような規格に規定されるのは、ミニマムリクアイヤメントとしてのお約束事です。JISに規定されるのはいわば「枯れた技術」なのであり、「枯れた技術」を規格として文章化する社会的な意味はあるのです。JISを守ることは必要ですが、JISを守っていれば良いというシステムに非破壊検査の仕事はなっていません。もちろん世の中にはいろいろな人がいますから、この業界の中にもレベルの低い人がいることも事実です。しかし、これはセクハラをする大学教授が何人かいるからと言って、大学教授=不道徳な人ではないことと同じです。

 私は、非破壊検査技術もその一部である安全管理技術のフィールドは学際的な知の集約が必要なのにもかかわらず、それぞれの専門家(学者であれ研究者であれ技術者であれ)が、自分の専門技術の殻の中に閉じこもって他の分野を知ろうともせずに悪口を言い合う傾向があると認識しています。技術の有機的な発展を妨げている原因のひとつであると考えています。このあたりを何とかしたいと、この間微力を尽くしてきました。先生のこの記事を読んでいると、私がなくしたいと考えてきた雰囲気もしくは考え方が直接出ているように感じてしまいました。

 もう少し胸襟を開いて非破壊検査技術を知る努力をしていただけませんか?どのような環境でどんな人がどんな意識やレベルで仕事をしているか知ってください。現場を知らずに事務所に座ってピンハネをして、たまに学会に出ていくような人の意見以外に調査されましたか?きずを見つけることを考えるのなら、そのきずが構造物の中でどのような意味を持つのか、学んでいただけませんか? 自分のご専門以外も、周辺の知見はお互い学びあう、そこにはそれぞれの技術分野の到達点と同時に限界もあるのです。そこを理解して初めて知の融合が始まると思います。間違っていますでしょうか。

蛇足ながら付け加えます。

「1ミクロンの亀裂が有ると、装置は急速な破壊に進むから、1ミクロンの亀裂を発見しなければ検査をしたことにはならない。」

 この見解は、率直に言っていかにも勉強不足です。「1ミクロンの亀裂が有ると、装置は急速な破壊に進む」といわれる装置に使われている材料はなんという名前のどのような材料ですか?その材料の破壊靱性値はいくらですか?その材料は原子力発電所のどこに使われていますか?そのような材料が原子力発電所に限らず、実構造物の構造材料として使われているとしたらそのこと自体大問題だと私は思います。

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コメント

大型構造物の1ミクロン亀裂や腐食を観測できる装置を販売しています。分析の受託もしていますのでのでよろしく。是非ご利用を検討ください。
㈱光子発生技術研究所で検索ください。
ミクロンオーダーの亀裂は、急速にカタストロフィーを起こすことが知られています。

投稿: Dr.HironariYamada | 2011年10月27日 (木) 00時56分

Dr.HironariYamada さん

㈱光子発生技術研究所の紹介、ありがとうございました。勉強をさせていただきます。

>ミクロンオーダーの亀裂は、急速にカタストロフィーを起こすことが知られています。

これは、実構造物に使われる材料の話ですか?そうだとすると文献などを紹介いただけるとありがたいのですが・・・。亀裂から急速破壊をするとしたら通常線形弾性破壊を想定すると思いますが、ミクロンオーダーの亀裂で線形弾性破壊する構造材料は何ですか?それとも全てというご見解ですか?

投稿: SUBAL | 2011年10月27日 (木) 01時19分

おはようございます。
私だったら「こういう装置は作る側に持って行ったらイヤな顔をされるので、保守(維持管理)する側に持って行くといいですよ」という下世話な事しか言えません…感服いたします。

「健全性を評価してほしい」のではなく、「問題ない」という報告書が欲しいだけの人達は確かにいて、そういうのに憤っている…というのなら話はわかるのですが、ブログの内容、コメントを公開しない事、及び上のコメントを見ると…まあ、そういう事ですか…という感じです。

投稿: ぐるぐる | 2011年10月27日 (木) 05時12分

最初は福島原発事故の遠因は、非破壊検査技術者のありかたにある、といった論調で、何をとち狂っているのかと思いましたが、次第に見えてきました。
実態を知らず、学びもせずに、自分の作ったものを相対評価しないまま商売に乗り出してしまった様子が見えます。典型的な殿様商売でしょう。買わない評価しない奴らが馬鹿なんだ・・・これではだめですよ。
自信のあるものを作った研究者が陥る落とし穴を見たような気がします。
他山の石とするためにも、もう少し掘り下げてブログ記事にしてゆきたいと思います。

投稿: SUBAL | 2011年10月27日 (木) 19時58分

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