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放射線透過試験と亀裂の検出

 目に見えないようなきずを検出する非破壊試験では、より小さなきずを検出する能力よりも大きなきずを見逃さない能力が重要です。

 次の写真はある装置の厚板の断面で、いくつかの亀裂(割れ)が確認できます。

Snapshot11

 AからEまでの亀裂について考えます。一定の条件が整うと一番小さいBを検出できる方法と装置があったとして、それがAやEを見逃す可能性を内包していたとしたら、その装置が非破壊試験として検出できる能力はAやEのサイズ以上ということになります。壊れるか壊れないかを考えたらサイズの大きいきずのほうが危険であるからです。まぁ、ここまでは改めて言うまでもないことでしょう。

 X線やγ線を使う放射線透過試験は、その特性から亀裂の検出を考えた場合よほど気をつけないと亀裂を見逃す危険性を内包しています。

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 X線を使う試験は「レントゲン写真」と言って説明すると、たいていの人はすぐにイメージがつきやすく、非破壊試験を一般の人に説明するには他の方法に比べて楽です。物質を透過する性質がある電磁波(光や電波の仲間)を使って影絵の写真を撮っているわけです。次の写真は携帯電話のX線写真。

Cimg2456a

 放射線透過試験は溶接部のブローホールや介在物、鋳物の引け巣など体積(ボリューム)がある内部きずを検出するのには優れた方法です。しかし亀裂(割れ)については、まっすぐ伸びたものに対して伸び方向に平行にX線を照射できれば検出できますが、照射方向が斜めになると大きな割れでも不検出になる可能性があります。

 次の写真は、「非破壊検査きその基礎」に掲載したもので、アルミニウム合金板にスリットを入れた試験片です。

Xray

  航空機のX線透過試験で使います。疲労亀裂の進行方向があらかじめ予測できれば、X線発生装置を亀裂に平行にX線を照射できるように正確に配置することで検出できます。この試験片は、X線発生装置が正しく配置されていたかどうかをフイルム上で確認するために一緒に写しこむためのものです。

 ここで見てほしいのは、開口幅の比較的大きい人工的につけたスリットでさえ、少し照射角度がずれると写真には写らなくなることです。

 もうひとつ、放射線透過試験では、破壊力学的な評価をするための亀裂サイズを測定するのは、ほとんど不可能と言ってよいほど難しいのです。このあたりは、他の方法もそれぞれ難点はあるのですが、超音波を使う方法がもっとも可能性があり適用もされ研究もされています。

 X線透過試験ももちろん将来、亀裂を検出しサイジングをするという点で方法の原理自体が抱えている弱点を何らかの工夫でカバーして活用できるようになるかも知れません。それができればすばらしい知恵であり、技術の進歩でもあります。ただ、言えるのはこの弱点を考慮することなく、ある狭い範囲の条件が整ったときにごく小さい亀裂が検出できる装置を作ったとしても、それは非破壊試験のフィールドでは使い物にならないのです。念のため書き添えておきますが、このことはだれそれが作った特定の装置について言っているのではありません。 

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非破壊検査」カテゴリの記事

コメント

こんばんわ。 

実際にこの前自分で溶接した試験材をRTしました。
9mmの板厚でなんとか無欠陥でした。
線源の角度等でかなり結果が変わるのですね。
実際フィルムを見て判定が難しかったです。
RTのフィルムがで360°ホログラムみたいに見えると
楽なのにとちょっと思いました!
学校時代の非破壊の授業の意味がやっと解ってきてます。
たまにですがタングステン巻き込みとか
融合不良しちゃいます。。。
にしても検査で欠陥有るとすごいがっかりすると同時に
やるせない気持ちになります笑

投稿: 元航空技術動物科三年十二番 | 2011年11月13日 (日) 01時17分

実際に自分でやった溶接を自分で検査してみる機会をもてるのは良いですね。

>検査で欠陥有るとすごいがっかりすると同時にやるせない気持ち

その気持ちも大切だけれど、プロは気持ちより先にそうなった条件を冷静に分析するほうに頭をまわしてゆくのだと思います。

医療で使われているX線CTは線源をぐるっと360度まわしています。工業的にもX線CTは使われ始めていますけれど、対象物の大きさは当然限られてきます。

非破壊検査を知っている溶接のプロとして成長してゆくことを期待しています。

投稿: SUBAL | 2011年11月13日 (日) 08時44分

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