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御巣鷹山墜落事故と日本航空安全啓発センター

 6泊7日の旅の終わりは、羽田の旧整備場地区にある日本航空安全啓発センターへ行ってきました。以前から行ってみたいと思い、何度かトライしましたが、うまくいきませんでした。今回は日程が1日延びたこともあり、電話をしてみたところ、見学が可能になりました。

 1985年8月12日、御巣鷹の尾根に墜落して520名の犠牲者を出した123便の事故。この事故機の残骸と、資料を展示してあります。ガイド(JAL社員)が案内して、ビデオを含むおよそ50分のコースです。最初に、見学の注意事項が告げられます。内部は写真撮影禁止なのですが、その理由として、「著作権上の問題があるため」と説明されました。

 確かに、国内外の主な航空機事故が新聞掲載の写真などを交えて展示してあるコーナーもあります。でも、本音がそこにないことは、小学生でも分かることでしょう。圧力隔壁の残骸や、大きく変形した座席、メガネや金属製のボールペンなど、地面への激突のすざましさ遺品遺物の写真が、ブログやHPで世間に流れれば、大きなマイナスのCMになることは明らかです。航空会社は乗客が乗らなければ成り立たない客商売で、マイナスイメージの恒常的な流布は会社経営の致命傷にすらなりかねません。このような展示していること自体が、このような事故を2度と起こさない会社の決意と覚悟の現れであり、具体的な安全対策のベースを作るものだということは、なかなか世間には理解されないでしょう。

 15時からの見学でした。スーツネクタイ姿の若い男の集団、女性が2名、中年の男が数名、全体で15名程度でしょうか。スーツ姿の若者の集団は、航空機にかかわる会社の人で研修の一環だろうと見ました(具体的な会社名もちらっと見えたのですがあえてここには書きません)。

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 この事故に関しては、関心を持って長いこと調べていましたから、50分間の説明の内容や見せていただいた展示物で「はじめて見る」というものはほとんどありませんでした。

 ただ、今回の見学の目的であった圧力隔壁の破断面については、実物を見ることによってあっそうかという気づきがありました。この点に関しては、こんご調べ考えてみます。

 遺品の変形や破壊の様子、さらに椅子の変形はやはり実物を見てこれをここまで壊す力がかかった場合に人間はどうなっているかと想像すると、感性的に訴えるものはあります。

 遺品の手帳を展示してあるところで、若い人が涙ぐんでいました。死を覚悟した乗客が目前に迫る死への恐怖と戦いながら家族に当てた走り書きの「遺書」が2つ展示してありました。これに並んで、キャビンアテンダントだった対馬さんの赤い手帳も展示してあります。
 対馬さんの手帳には、緊急着陸時にアナウンスする事項が走り書きされていました。あわててしまって必要事項をもらしてしまわないように確認をしていたのだと思われます。対馬さんも一人の女性として家族があったでしょう、恋人がいたのかもしれません。そして乗客以上に自分の命が危ないことは認識できていたはずです。そんなときに、プロとしてこんな行動をとるんだなぁ・・・。若い人が涙ぐんでいたのもこの前ででした。

 私は、事故のことを考えるときに、可能な限り安全を確保するために日々努力していたスタッフたちの行動と思考に想像の翼を広げようと努力します。もちろん所詮外から見ているので限界があることは百も承知です。そのスタッフたちは、生まれつきの特別な人などではなく、小学校のときに机を並べていたA君やBちゃんかもしれない、そういう人たちが訓練を受け経験をつみプロとして仕事をしている。もちろんそのときに重大なミスや怠惰があったとしたら厳しく問わなければなりません。ただ、疲労き裂のデータにしてもヒューマンファクターの諸要素にしても、「あっち側の人がやっていること」としてしまうと、見えなくなるものがいっぱいあると考えています。

 この手帳の展示を前にして、若者が一人ひとつの線を越えようとしている、私にはそう見えました。引き返せない一線を越えるとき、涙を流すか、つばを飲み込むか、深呼吸をするか、人それぞれの儀式があるのでしょう。
 この啓発センターの展示は、一見の価値は必ずあると思います。事前の勉強、何を考えていくかによって見えるものはそれぞれ違うかもしれません。少なくとも事故の概要ぐらいは、事前に勉強していくのが良いでしょう。私は、このあと後少なくとも数度は行くことになると思います。
 安全へのJALの取り組みも紹介されていました。私は、この啓発センターを維持継続していることこそ、安全の取り組みに対するJALの覚悟を示していると思います。
 この安全啓発センターはちょっと大げさに言えば、原爆ドーム&資料館とともに世界中の人に見てもらいたい"負の世界遺産"だと思います。
 非破壊検査に携わる人は、機会を見つけてぜひ見学したらいかがでしょう。

 

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