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鳴き龍 @日光東照宮 そのメカニズム

 大人の修学旅行、日光東照宮編、第5弾です。

 薬師堂は鳴き龍で有名です。本堂の天井に大きく描かれた龍の絵、その顔の下で拍子木をたたくと鈴の音のような音がする。まるで龍が鳴いているようだということらしいのです。これは動画で撮るか録音できれば面白いなぁ、と思って入ったら「撮影禁止、録音禁止」大きな張り紙がしてあります。たくさんの人がいる中で、さすがにiPadを出して録音スイッチをオンにするのは憚れました。

 どうして録音もだめなのだろう。音響的にはそう難しい話ではないはずだし、この辺りを科学的に説明することも教育的なことだろうと思うのですがね。

 帰ってきて探してみたら、YouTubeにありました。

人は違うけれど、説明もパフォーマンスも私の体験と同じです。これがあれば、メカニズムの説明はできる。

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 超音波探傷をやっている視点からは、拍子木の音が天井と床で繰り返し反射する多重エコーであることはすぐにわかります。音響用語としてはフラッターエコー(flutter echo)として説明されています。

Photo
 日光鳴き龍で見てみます。そのためには、まずYouTubeの動画をダウンロードし、これを音声ファイルであるMP3に変換し、さらにFFTのフリーソフトで波形と周波数を見ました。

Nakiryu1これが、拍子木を叩いた時の音です。中心周波数2810Hzの音が出ています。ちょっと甲高い短い音です。出た直後の音はあちこちの反射している様子がわかります。混沌とした波形は少し続くのですが、0.5秒程度経過したあたりから規則的なパターンが見えてきます。

Nakiryu2 およそ0.035秒(35ミリ秒)ごとに同じパターンが繰り返されます。顔を外した位置で拍子木を叩いた時には見られないパターンです。これが龍の鈴鳴きの正体です。

Nakiryu3

 35ミリ秒(35/1000秒)という時間は、天井と床とで反射して戻ってくる時間と考えられます。空気中の音速を340m/sとして距離=音速×時間から計算すると、距離=340×35/1000=11.9(メートル)ということになります。音が往復する距離ですから、床から天井までの高さは、5.95mということになります。

 ちなみに35ミリ秒ごとに繰り返されるパターン中に、およそ6ミリ秒離れた2つの山が見えます。この6ミリ秒は同じく距離に換算すると、およそ1メートルになります。これは、叩かれた拍子木の床からの高さと考えると、つじつまが合ってきます。ビデオをよく見ると、この人は拍子木を胸から少し下で叩いているのがわかります。およそ1m、そんなもんですね。

 模式図で表すと、このようになります。

Nikkoudragon この鳴き龍を起こさせるには少し高い音であること、短い音である必要があります。拍子木の音はちょうどよいのでしょう。拍子木の音の波形を見ます。

Nakiryu4_3 周期は0.33ミリ秒、波長は110mm程度、10~12波程度の短い音であることがわかります。

 ちなみにこの龍の鈴鳴きは2秒程度続きます。およそこの間に60回程度反射を繰り返して音が消えています。反射を繰り返すうちに中心周波数がおよそ100Hz弱下がっていく現象も観察できます。超音波探傷の本に載せるコラムとしては面白いと思いますね。

「運を拓くありがたい龍の声」と説明していますから、このような合理的な説明は迷惑なんでしょうね。

なを、ここで使った波形表示とFFTは、こちらのページのフリーソフト「WaveSpectra」を使わせていただきました。

追記:この取材をもとに鳴き龍のメカニズムを「おもしろサイエンス波の科学」(日刊工業新聞社)の中に書きました。

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