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リューダース帯とツールマーク その2

 その1には「ツールマーク」の話は出てきませんでした。ところでツールマークって何?

「そのぐらい知ってまんがな。復活したJALのシンボルマークでしゃろ?」

B0190445_2119409
「なに言って鶴は千年、じゃなくてまんねん。それはツルマルマーク」

ツールマーク(Tool mark)は、直訳すれば工具による痕跡。業界的には研磨や研削をした時の砥石の跡を言います。いただいた試験片にも、円弧状のツールマークがあります。

Dscn0925a
 この条痕がほぼ、引張力の方向に対して直交方向の直線に近くなっているところがミソだと思っているのです。

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 リューダース帯を観察する場合、試験片表面を鏡面仕上げ(鏡のようにピカピカにする)にして、強い光を当てながら観察する方法がとられます。でもこの試験片は鏡面まで仕上げられているわけではありません。目視でわかるツールマークがついています。

 このくらいの表面粗さでも、引張力の方向に対して直交方向の直線状のツールマークであればリューダース帯は観察できることが私には新鮮でした。よくやられる方にとっては常識なのかもしれませんが…。

規則的なずれが連なると、ズレ自体はわずかでも人間は認識できる。先日話題にしたモアレに通じる話だと思うのです。

地層にできた断層も、地層の縞模様があるからわかりやすい、それと同じことが起きている。

Slip2
私が持っている安手のカメラで目いっぱい拡大した写真がこれです。

Dscn0925b よく見ると、断層のずれのようなものも確認できます。実は、試験片の提供者からこれの電子顕微鏡(SEM)写真も見せてもらっています。これが、実に面白く少なくとも私は初めて見た画期的な写真です。提供者への敬意とちょっぴりもったいないのでここには載せません。でもここでは終われない。その3もあります。

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コメント

地層→ヴィトン→と来て、リューダース変形と、繋がっていますね。
私も自分のが一つ確保してあるので、先生のブログを見ながらまた試験片を眺めています。
引張試験機に締結するための丸い穴を利用してキーホルダーにしたらちょっと笑えるかなと思いましたが、錆の問題、破面がすり減ってしまうことなどがあるのでやめました。(笑)
また、破断面が手に当たると痛いんですよね。(^-^;
ちなみにアルミの試験片ではリューダース変形が見られませんでした。アルミはダイキャストです。

投稿: ニコニコ | 2012年7月 8日 (日) 10時22分

ニコニコさん
貴重な試験片をありがとうございました。お陰様で楽しんでいます。

>地層→ヴィトン→と来て、リューダース変形と、繋がっていますね。

これに光速、波の性質というところに繋がって行くのです。見過ごされがちなものも、よく観察して考えを巡らせると面白いことがいっぱいありますね。

小さいスパナをキーホルダーにつけている人は見かけますが、引張試験片はレアですね。

リューダース帯は軟鋼でよく観察できますが、アルミで観察しにくい理由は何でしょうかね。疑問手帳にメモしておきましょう。

投稿: SUBAL | 2012年7月 8日 (日) 11時17分

ポアソン比に引き続き、
> リューダース帯は軟鋼でよく観察できますが、アルミで観察しにくい理由は何でしょうかね。
にもお答えします。

それは0.2wt%C程度の低炭素鋼に特有の現象といってよいでしょう。それは低炭素鋼特有の降伏挙動に起因します。それは、上降伏点到達直後の急激な降伏応力(塑性変形を継続するのに必要な応力)の低下とその低下した応力近傍である程度伸びた(降伏点伸び)のちに加工硬化による降伏応力が上昇していくというもの。リューダース帯はこの低応力変形の間に生じ、加工硬化域に入ると消えます。
詳細は、http://ms-laboratory.jp/zai/part3/part3.htm 参照。
定性的な理由は大昔から論じられていますが、コンピュータシミュレーションで再現できたのは比較的最近で、真の機構を究明しようとすると、結構奥が深いのです。

投稿: Dr. About | 2012年7月30日 (月) 01時35分

「コットレルの転位のピン止め作用からの脱出」がキーワードになるのですね。転位の移動を妨げる要素は他の合金でもありそうな気がしますが、軟鋼では明瞭な降伏点ができるほど激しく、結果として目視で見える リューダース帯を形成する・・・この辺りを考えると奥が深そうですね。

投稿: SUBAL | 2012年7月30日 (月) 10時10分

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