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笹子トンネル下り線点検速報 アンカーボルト608か所にゆるみ

 笹子トンネルの事故うけてトンネル内の天井板吊り下げ構造物の点検結果速報が、公表されています。(国土交通省のHP

 事故が起きた笹子トンネル上り線ではなくて下り線の点検結果は以下の通りです。

・アンカーボルトの脱落(2箇所)

・アンカーボルトのゆるみ(608箇所)

・アンカーボルト腐食による断面欠損(22箇所)

 アンカーボルト小計:ボルト(632箇所/12,002箇所)

・吊金具ボルトの脱落・ゆるみ(8箇所)

・吊金具ボルトの破損・変形(2箇所)

 吊金具小計:ボルト(10箇所/51,428箇所)

・受台ボルトの破損・変形(9箇所)

 受台ボルト小計:ボルト(9箇所/15,096箇所)

・覆工コンクリートのアンカーを跨ぐひび割れ(19箇所)

とのことです。

Sasago1

 補修ではなく、天井板の撤去という処置がとられるようです。

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 アンカーボルトの「ゆるみ」が608か所。総数の5%強です。私は、目視と打音検査で見つかる「ゆるみ」は、ほとんど末期症状(抜ける寸前)のものだと思いますので、これは氷山の一角、ダメージを食らっているのはこのほかに相当数にのぼっていると推測します。

 数は少ないとはいえ、腐食やボルトの破損もあったようです。

 数だけでなく、分布も公表してほしいですね。5%が全体にばらついているのか、特定の箇所に集中しているのか、原因解明の重要な手掛かりでしょう。

 どうやら樹脂接着剤を使った通称ケミカル・アンカーであったようです。おそらく樹脂はエポキシだと思います。エポキシは経年劣化しにくい樹脂とは言えます。しかし、高分子材料は劣化しないなどとは言えないはずです。今回の件は、エポキシ樹脂の劣化という視点からも、徹底解明をしてほしいものです。

 問題は、フェールセーフ性がどうなっていたのか。そもそもケミカルアンカーを使ってもよい場所だったのか。

 打音検査は、属人的技能に頼るところが大きく、経験を積んだベテランがやれば、ナットの緩みや、シャフトのき裂を検出することは可能です。でも、私の見るところ、超音波探傷検査と比べて、錯乱要因がたくさんあって、数十倍難しい方法です。非破壊検査は、検出すべききずを定めて、有効なツールと手順を定めるのが基本です。何でも叩けば分かる、なんてのはいかにも乱暴に見えます。

 打音検査では不十分だとの指摘もあるようです(読売新聞記事『打音「不十分」指摘受け、トンネル点検改善検討』)。当然でしょう。

 設計や施工、そしてメンテナンス計画の重要な柱として、検査技術を位置づけて欲しいものです。作ってしまってから、事故が起きてから・・・では即応できない場合があるのです。

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コメント

 打音検査は個人差がある評価方法だと思います。一度に検査できる数もそう多くはないでしょう。何年も点検期間が空いていたという報道も聞きました。検査費用がその原因だそうです。高速道路は定期的にフレッシュアップ工事をしていますが、検査は疎かだったようですね。NDIを知っている者として、なんだか悲しくなりました。
 検査が難しい状況ならば、老朽する前に部品交換するものと決めていれば、9名の方は亡くならなくてよかったことでしょう。
 検査は早期発見には有効ですが、今回のように末期発見にはなんの効果もありませんね。

投稿: kita404 | 2012年12月13日 (木) 22時24分

全く仰る通りと思います。
劣化は時間tの関数で表す必要があり また個別の材料単独の経年劣化に関係する物理的、化学的、生物的な外力などだけからプロセスを考えるだけでなく構成している材料間の相互作用も含んだ系で考える必要があると思います。従って個別材料のそれぞれの専門家だけでは複合構造物の経年による劣化判定、劣化予測は難しいと思います
いま現在この複合的劣化の技術分野もなく技術者もいない状況下専門領域を越えたプロジェクトが早急に必要になっているように思います

投稿: 門田 | 2012年12月13日 (木) 22時33分

kita404さん

>何年も点検期間が空いていたという報道も聞きました

仮に打音検査が有効だとしても、10年もやっていなければ、属人的技能の劣化、伝承の難しさという壁が出てくるはずです。

>検査は早期発見には有効ですが、今回のように末期発見にはなんの効果もありませんね。

そうなんですよね。検査屋は葬儀屋でも葬式坊主でもありませんからね。余寿命があるうちに、破壊の兆候を見つけるところに検査屋の役割はあるのですから・・・。

投稿: SUBAL | 2012年12月13日 (木) 23時04分

門田さん

 劣化しにくいと言われるエポキシ樹脂も水との接触、金属(銅ー鉄ー・・・)との接触で劣化(強度低下)するという報告があります。セメントの中はアルカリ環境になっていますから、長時間アルカリ環境になり、亀裂から水が入り込んでOHイオンにさらされた時に、エポキシがどうなるのか、そんなところもきちんと調べて欲しいものです。そういう学際的なところでもあり地味でもある分野を研究する人がいるのかいないのか。いないとかわからないとかであるならば、それに応じた使い方をしなければならないと思います。

投稿: SUBAL | 2012年12月13日 (木) 23時13分

ケミカルアンカーは、下向き・横向きは効きますが、上向きはきちんと効くんでしょうか。
施工者がそのことをしっかり理解して施工すればいいんですが…。
打音検査でも吊り下げ式の場合、常に荷重がかかっていますから、抜けかけていることに気付かないんじゃないでしょうか。
今回の事故はアンカーを信じすぎて、安全係数を軽くしすぎた結果だと思います。溶接接続されていたとはいっても連鎖的に落ちるということは、安全係数は2以下と言うことになります。
以上、素人の意見です。

投稿: each | 2012年12月15日 (土) 12時42分

each さん

ケミカルアンカーが、どのような検証のもとにあるいはどのような法的な位置づけのもとに施工されたのか詳しいことを私は知りません。まあ、35年落下事故はなかったという点から考えると、少なくても安全係数の範囲であれ強度を保っていたと言えるのでしょう。時間経過の中で何が起きたのかです。
通常下向きか横向きに打たれるケミカルアンカーが、上向きに打たれ引張り荷重を支える用途に使われていたか、今回の原因とともに調査して欲しいものです。
同時に、打音検査で何がどの時点で検出できるのかも検証して欲しいです。「項目にあることをやったかやらなかった」という形式論にとどまるわけにはいかないでしょう。

投稿: SUBAL | 2012年12月15日 (土) 14時04分

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