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『福島原発で何が起こったか』 事実の確認から

 3.11の地震・津波・原発事故からもうすぐ2年になろうとしています。特に原発事故については「国論を二分する」という表現が使われています。

 あれだけの事故ですし、これから原発をどうしていくか、電力をどう確保していくか、先延ばしにできない課題がある中で、激しい議論になるのはある意味当然でしょう。ただ、私には、その多くがすれ違いかみ合わないものになっているように見えて仕方がありません。

 はじめに「立場」ありきの議論に見えるのです。何がどうあろうと「結論」がある。自分の持っている結論とは違うことをいう人は、「バカ」か「利益優先のひとでなし」というレッテルで片付けてしまう。

 全くかみ合わない議論を、かみ合わせていくには冷静に虚心坦懐に向き合うことが必要なのだと思います。福島第一原発でいったい何が起きたのか、まずは客観的な事実を見ることが必要なのだと思います。事実を共通に認めたうえでの議論になってほしいのです。

 とはいっても「事故報告書」は複数あって、どれも分厚い。しかもある程度予備知識がないと読み進むことはできません。私も本屋に並んでいる政府事故調や国会事故調の報告書を何度か手にしましたが、購入するまでには至っていません。持ち帰るには重すぎる。購入しても読み通すには相当な時間を要する。

 そんな中で出たのが本書『福島原発で何が起こったか 政府事故調技術解説』(日刊工業新聞社)です。206頁で手ごろ。筆者は、政府事故調委員長畑村洋太郎氏・技術顧問淵上正朗氏 それに東大教授笠原直人  氏の3名です。

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 私も、それなりに関心を持って報道等はチェックしていましたが、本書を読んで知った事実がいくつかありました。たとえば・・・

(1)「配電盤」が地下にあり簡単に浸水したこと。非常用のディーゼル発電機が海岸近くにあり、それが津波でやられてことは知っていましたが、配電盤については知りませんでした。これが復旧が遅れた最大の要因でした。

(2)4号機の水素爆発は、3号機からの水素の流入によって起きたこと。

本書で、3.11から1週間にいったい何が起こったのか、概要を知ることができます。もちろん事実の記述には、どうしても調査者や筆者の経験・知識・関心による選択が入ります。E.H.カ―が「歴史(History)とは彼の物語(his story)である」といったあたりにかかわることです。

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 だとしても、本書のように整理されたものがあると「これが抜け落ちている」という議論も成り立つわけです。最終章に、原子力発電について基礎知識が図解でやさしく解説されているのもうれしいです。

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 少なくとも技術者を自負する人は、この本は読んでおくべきではないか、私はそう思います。私も座右において勉強します。もちろん、原発事故について報道するジャーナリストは必見でしょう。最近の報道のレベルはあまりにも低すぎます。

 あと福島の事故については、ばらまかれた放射性物質の人体への被爆状況を直後から私財まで投じて追跡されている早野龍吾東大教授の本が出て欲しいと思っています。

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コメント

subal 様、こんにちは。いつも楽しくブログ拝見させていただいております。ご推奨の「福島原発で何が起こったか 政府事故調技術解説」を購入して、読まさせていただきました。前々から知りたいと思っていたことの大半はこの本で理解することができました。様々な教訓の示唆に富んだ良書と思います。
ありがとうございました。今後とも楽しくためになる記事を期待しております。

投稿: 虹法師 | 2013年1月30日 (水) 13時43分

虹法師さん
お役に立ててよかっです。RIについてお詳しいのですね。勉強させていただきます。

投稿: SUBAL | 2013年1月30日 (水) 16時23分

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