« “特集 国産開発ジェットエンジン”(『航空情報2014年 05月号』) | トップページ | 釧路八重桜と野苺の花 »

『キリンの斑論争と寺田寅彦』

 仕事は仕事として頭を回転させなければならないけれど、それとは離れて頭を遊ばせたいときがあります。

 そんな時にちょうど良い面白い本を買いました。

Img_4096

 いまからおよそ80年前、昭和初期、理化学研究所の寺田寅彦研究室にいた平田森三が「キリンの斑模様に就いて」(岩波書店雑誌『科学』)という論文を発表しました。キリンの斑模様と干上がった池の底などにみられる粘土のひび割れとの類似性から、両者の共通性を論じたものでした。

 これについて、当時の生物学者(丘英通ら)から猛反論が起きました。いわゆる「キリン斑論争」です。

にほんブログ村 科学ブログ 技術・工学へ
ポチッとクリックで応援

 平田森三の論文、 丘英通の批判、平田森三の反論、これらに対して寺田寅彦が問題のありかを論じています。この本ではこの部分を第1部としています。

 第2部では、現代の物理学者・生物学者がこの論争を現代科学の到達点から振り返っています。

  面白いですね。特に寺田寅彦の割れを界面現象としてとらえて、生物の細胞膜の形成や細胞分裂のメカニズムについて掘り下げた研究の必要性を説いているあたり。

 ガラスのき裂に関するグリフィス理論や、物理的刺激による細胞分裂の促進の話が飛び交っています。

 まさに『かたちのココロ』

 さらに面白いのは、大阪大学教授の近藤滋の「キリンの斑論争と現代の分子発生学」です。「キリン斑論争」の18年後、1952年にイギリスの数学者アラン・チューリングが発表した「チューリング・パターン」で動物の斑模様が説明がつくというのです。

 近藤教授の語り口とともに、とても興味深い理論です。

 寺田寅彦の碧眼、現代の分子生物学者の痛快な実験と説明、「キリンの斑論争」が現代にいきいきと蘇ってきます。

 同じく昭和初期に起きた五重塔をめぐる「建築剛柔論争」が、長周期地震と超高層建築の関係で蘇っていることを連想しました(参照:『おもしろサイエンス 五重塔の科学』 )。

 大正・昭和初期の論争って面白いなぁ。

 余談:アラン・グリフィス(この人は破壊力学の祖であり軸流式JEの開発者)とアラン・チューリング、どちらも英国の人です。多分アイルランドのアラン島にちなんでいるんだろうなぁ・・・と連想しました。

にほんブログ村 科学ブログ 技術・工学へ
現在1位です

|

« “特集 国産開発ジェットエンジン”(『航空情報2014年 05月号』) | トップページ | 釧路八重桜と野苺の花 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

科学技術」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/222291/59640383

この記事へのトラックバック一覧です: 『キリンの斑論争と寺田寅彦』:

« “特集 国産開発ジェットエンジン”(『航空情報2014年 05月号』) | トップページ | 釧路八重桜と野苺の花 »