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応力拡大係数(Stress Intensity Factor)ていったい何?

 Yahoo知恵袋に応力集中係数応力拡大係数の違いを教えて欲しい、というこんな質問が投稿されていました。

応力集中係数と応力拡大係数の意味の違いがわかりません。調べたところ、応力集中係数は応力拡大係数に対応しているらしいんですが、どう対応しているのか教えてください。

これに対する答えが、下記です。

『応力集中係数αは、切り欠きの無い断面に生じている応力のα倍の大きい応力が切り欠きの近傍に生じている事を意味します。切り欠き等の曲率半径は有限です。楕円孔の場合、曲率半径ρ→0の時、楕円孔が扁平になり、α→∞になります。つまり、無限大の応力が理論的に生ずることになります。

 脆性材料の場合はき裂のようになると応力集中係数αは∞大になり、大きくなり危険であるが、延性材料の金属の場合は降伏して降伏応力程度となります。応力拡大係数は、き裂など、曲率半径ρ=0の時のき裂2cが存在するとき、き裂先端では応力は∞大になりますが、K=ασ√(πc)と言う量を定義したものです。簡単に言うとこの値が大きいほどき裂の存在が影響する領域や範囲が大きくなります。例えば、小さい値と比較すると、大きな値のものは、一定の応力値σo以上の応力分布領域が広くなります。応力集中係数と同じような意味になります。』

 正直、この答のとくに4行目後半以降は、私には理解できません。何を言いたいのですかね。私には、回答者が応力拡大係数を誤解しているようにみえます。下に行くに従って混乱が深まるのですが、最後の「応力集中係数と同じような意味になります」はもう全く意味不明です。

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 応力拡大係数は破壊力学のキー概念です。応力集中係数と関連はありますが、とりあえずは別ものと考えたほうが頭の整理がつきやすいです。

 対応で考えるならば

  • 応力(stress)」対する「強度(strength)」・・・材料力学
  • 応力拡大係数(stress intensity factor)」に対する「破壊靭性(fracture toughness)」・・・破壊力学

  と考えればよいのです。

 材料力学では、材料に生じる応力を計算します。材料には生じさせることのできる応力の限界があって、それを超えると破壊します。材料に生じさせることのできる限界の応力をその材料の強度と言います。

 材料力学の計算では、切欠きと呼ばれる場所で応力の増大が生じることが分かっていますので、そこには応力集中係数という考え方を使って簡便に最大応力を求めて対応します。

 しかし応力集中係数をき裂先端に適応すると、き裂先端ではほとんど無限大に近い応力が生じることになるのです。ということは、材料中にき裂があると、ほとんどゼロに近い応力で破壊することになります。これは現実と矛盾します。

 ほんのわずかなき裂があったからと言って材料が直ちに破壊するわけではありません(ここが理解できない大学の先生もいらっしゃいました)。き裂のある材料がどのような条件で破壊するのかを研究する学問が破壊力学です。

 破壊力学の先駆者たちは、相当に複雑なき裂のある材料が破壊する条件について、小規模降伏条件という範囲内であれば、き裂のサイズ(a)とき裂先端を無視して計算できる応力(σ)で、表すことができると考えました。それが応力拡大係数(K=σ√(πa))です。応力拡大係数(K)がそれぞれの材料の特性値である破壊靭性(Kc)を超える(K≧Kc)と破壊することを明らかにしたので。

 つまりき裂先端で起きていることをとりあえず括弧に入れ(小規模降伏条件)て、従来の材料力学で計算できる応力と測定できるき裂サイズの値を使って、き裂のある部材が破壊するかしないかを判断できるようにしたのです。

 き裂先端とその周囲の応力はさしあたり無視できる、ここに応力拡大係数が工学的に使える理由があるのです。応力集中係数では解決が難しい領域に、応力拡大係数をキー概念とする線形破壊力学は光を当てました。もちろん実際に適用しようとするといろいろな問題が出てきます。

 こう説明してもややこしいですかね。私も勉強したての頃は混乱しました。手前味噌にはなりますが、この辺りを可能な限りかみ砕いて説明した本(『絵とき 破壊工学 基礎のきそ 』日刊工業新聞社)を出しています。よろしかったら読んでみてください。

 Yahoo知恵袋にも「補足コメント」を書けるようでしたので試みましたが、IDとパスワードが分からなくなっていて書けませんでした。

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