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ロケットの父の博士論文 『音響イムピーダンスに依る微小変位測定法に関する研究』

 国立国会図書館関西館に赴いたのは、日本のロケットの父と言われる糸川英夫博士の博士論文のタイトルが『音響イムピーダンスに依る微小変位測定法に関する研究』であり、国会図書館関西館に所蔵されていることを知ったからでした。

 私が専門としている超音波探傷は、物質の中に有る異物(不連続部 きず 欠陥 呼び名はいろいろありますが)を超音波で検出する技術です。おおもとの原理は、異なる物質の境界部で音が反射することです。「異なる物質」をもう少し原理的に言うと、音響インピーダンスが異なる物質ということになります。

 「糸川英夫は博士論文で超音波探傷もしくはそこにつながる研究をしていた?」そういう可能性が想定される以上、もう行くしかありません。

 国会図書館関西館で閲覧を申請すると、10分ほどで大きな茶封筒に入った論文を渡してくれました。

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 手書きですよ。糸川英夫の自筆。まぁ、考えてみれば当たり前かもしれませんが、手に取ったときは驚きを隠せませんでした。そのあとページをめくる手が、ゆっくり丁寧になりました。

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 目次です。

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 序言では「歪みの測定、応力の測定、振幅の測定、あるいは衝撃荷重とその影響の測定、静的な荷重の測定等、工学上に現れる多くの重要な測定は結局これによって生ずる微小な長さの変化に帰するものが多い。」とされて、従来の電気的な測定法にかわり音を使って測定する方法についての研究であるとされています。直接の被測定物はスピーカーのコーンの変位です。

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こんなT字型の装置を使ってT字型の底の部分近くの被測定物が変形することで直管の部分を通る音のインピーダンスが変化して、振幅が異なってくることを検知するようです。

音の反射を使うわけではありませんから、直接超音波探傷には結び付きません。現在では例えばレーザーを使って非接触で物体の変位を測定できますから、この装置の現在的な有用性はないといえます。それでも音に関する物理法則を使って間接的に変位を測定する方法として、興味深い研究です。

糸川英夫の博士論文は、この主論文と「圧力変動の測定法と剥離流の渦に関する研究」と題する副論文とで構成されています。私にはこのことが特に興味深かったです。

終戦後GHQによって禁止された航空機に関する研究、その中でバイオリンの音色の研究にまで進む糸川英夫の音の研究の始まりは、単に「豊かな才能を持て余した」というより、はっきりとした目的があったのだろうと考えられるからです。

戦後の混乱期に、航空技術者や研究者たちが何を思い何をしていたのか、日本の技術史にとって興味深い領域を垣間見たような気がします。

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