凄ワザ『最強の帽子対決』観ました 「素材vs構造」か?
昨晩20時15分からのNHK総合『最強の帽子対決』決着編を見ました。震災時に落下物から頭部を守るヘルメットにかわる帽子を開発しようというコンセプトです。
衝撃吸収材を作っている化学メーカーカネカの女性研究者VS折り紙構造で衝撃吸収の研究者の対決になっていました。
(NHKHP掲載の動画よりキャプチャー)
この番組「凄ワザ」は、かつて「ドリル対金属」のシリーズで盛り上がったフジテレビの「ほこたて」のNHK版、直截に言えばパクリと言ってよいでしょう。
フジテレビは対決のエンターテイメント性を重視して、ほとんどプロレス中継のノリになってしまい、結局はネタづまりから「やらせ」に走り終わってしまいました。
技術開発がエンターテイメントになるという側面を発掘したという意味では、フジテレビの功績はありました。そこを引き継いだNHKは、「ものづくり」の面白さにライトを当てているようにみえます。番組では製作工程・試行錯誤の過程を追っています。
勝負ですが、2mの高さからの落錘試験で、段ボール折り紙チームの勝ちとなりました。
段ボールも面白かったですが、私はカネカチームの取り組みに興味が引かれました。彼女らが使用した衝撃吸収材は変形時のひずみエネルギーを熱エネルギーに変換するものでした。このばあい、1本から2本に増やすことによっては衝撃吸収性能は向上しないことが明らかになりました。
「力を分散する」と表現される方法は、応力を小さくするという意味になり、それはすなわちひずみ量を小さくすることになります。すなわち1本あたりで熱に変換されるエネルギー量も小さくなるという理屈です。
そうすると単純な解決法としては、縦弾性係数(ヤング率)の小さな衝撃吸収材を開発して厚みを増すことになります。素性を変えなければなりません。時間的に間に合わなかったか大きさの制限で制約されたかであきらめたのでしょう。
次の手は「かたち」すなわち構造の工夫があります。カネカのチームは、力を伝えるプラスチック板と発泡スチロールに衝撃吸収材を組合わせる工夫をしてきました。それで、2mの高さからの落錘試験で衝撃荷重を4.9kN以下にする基準はクリヤーしました。これはこれですごいですよね。
これを見ていて、「つまようじブリッジコンテスト」の第1回大会で優勝チームの作品が164N(18kgf)の荷重に耐えた瞬間を思い出しました。みんな「つまようじでここまで!!」と驚いて感動したんですよね。ただこれは、それから11年間続く構造の工夫とその成果の「感動」の始まりだったわけです。
素材の特性を生かす「かたち(構造)」の工夫で、可能性は大きく広がるのではないか・・・。番組を見ていてそんな妄想が沸き起こってきました。頭の中の虫たちがガサゴソ動いている・・・。
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