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『訓練』と『経験』

 学生として非破壊検査資格試験を受けてたとえ合格をしても資格としては与えないと日本非破壊検査協会の認証事業本部が決めたことをお伝えしました

 その理由は、以下の様に示されています。

 「旧制度(JIS Z 2305:2001)では、訓練の開始をもって経験の開始としていました、JIS Z 2305:2013制度では「訓練」は「経験」に含まれませんので、NDT 経験(原則、NDT 業務経験)のない学生等の新規認証申請はできなくなります。」(学生等の新規認証申請について(JSNDI CA4(Rev.20160323)

 「」という曖昧な接続詞で繋がれた文章の前と後ろがどのようにつながるのか、よくわかりません。普通にとらえると、

  1. 訓練と経験が同時期開始であると「訓練」が「経験」に含まれる。
  2. 新制度では「訓練」は「経験」に含まれない。
  3. よって「訓練」が「経験」に含まれる学生は新規認証申請はできない。

 ということになりそうです。訓練と経験は時期的に分かれていることが必要で、それが出来ていない学生の申請は受け付けられないという論理展開に見えます。

 とすると、企業からの申請も「訓練の開始と経験の開始が同時」のケースでは認証は受けられないことになるのでしょうか?

 事実として言っておきたいのは、専門学校の学生に受験と認証申請の時、「訓練」と「経験」の開始時期は同じ場合もありましたが、違う場合もありした。必ず同じだったわけではありません。

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 「経験の内容ではなく時期が問題なのですね」というと、たぶん「NDT 経験(原則、NDT 業務経験)のない学生」という文言がある、というのでしょう。

 「NDT 経験(原則、NDT 業務経験)」というのはいったいどのような内容をさすのでしょうか?JSNDIはそのことをなんら明示していません。学生拒絶文章と同時に発表された「工業に関わる NDT 経験について 」のなかで経験内容に触れるかもしれない表現としては、「『経験期間を証明する文書』となる検査報告書等」があるだけです。

 確かに検査報告書には、検査者の名前と資格番号が書かれているケースが多くて、当該検査にその人がかかわっていたことの証明にはなるでしょう。

 でも「NDT経験」ってそれだけですか?ちょっと発想が狭すぎませんか?

 話をできるだけシンプルにするために、これからレベル1を受ける人を想定しましょう。非破壊検査会社や検査部門のある会社に入った人が、資格試験にチャレンジしようとするときに、「訓練」と「経験」が同時にスタートすることは十分にありうることです。「訓練」はJSNDIが推奨するシラバスに則ってカリキュラムを作り、計画的に実施されるでしょう。

 一方経験も職場で積んでいくことになります。ただ、そこで積める「NDT経験」は検査業務そのものではありません。検査補助業務です。有資格者でもない人に検査業務をさせることが出来ないのは自明のことです。

 検査補助業務とは具体的にどのようなことでしょう。

 荷物の運搬・検査前後の清掃・発電機等の燃料の監視と補給・検査箇所のマーキング・ライト持ち等々です。服装や行動の安全対策の実施もあるでしょう。これらのことを監督指揮者である有資格者(レベル2以上)の指揮のもと確実に実施ていく経験を積みます。「見る」ことも経験になります。たまに例えば超音波の探触子を触らせてくれることはあるかもしれません。しかしそれはあくまでも検査業務範囲外でのOJT(On-the-Job Training)でしょう。

 私はすでに35年ほど様々な場面で非破壊検査業務にかかわってきましたが、このような検査補助業務を行った人の名前が掲載された検査報告書を見たことがありません。

 レベル1技術者に求められる技量は、簡単に言えばレベル2の指揮のもとでNDT指示書に従って確実に検査業務を実施できることです。

 このような「NDT経験」を専門学校で経験させることが出来ないとは、全く思いません。「訓練記録」に記載するカリキュラム以外に、非破壊検査技術者にとって役立つだろう経験を授業と放課後も含めて積ませてきたと自負しています。カリキュラムに基づいた「訓練」とは別にです。

 資格取得以前には、当該有資格者が行える業務はできないことを認識したうえで、どのような経験が本当に必要なのかを考えてください。

 学生に対して門戸を閉ざす今回の決定をすみやかに撤回してください。

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コメント

私も先生と同じ意見です。この業界に入って資格を取っていこうと考えている若者を締め出してどうするのでしょうか?むしろ彼らがいてくれることを喜ぶべきではないでしょうか?
ISOに対しても各国々でとらえ方適用の仕方が異なると思います。日本は日本らしく行えばよいのではないでしょうか?

とにかくこれからの若い芽をつむことは止めていただきたいと思います。

投稿: 南 康雄 | 2016年4月10日 (日) 19時42分

南さん

コメントありがとうございます。
やんちゃくさかった若者が、自らの道を選んで、ひとかどの技術者になっているのを見ています。まだ就職して数年で、現場で汗を流しながら夜に勉強している若者もいます。
そんな顔がたくさん浮かんできます。
彼らの存在が、この業界の希望だと思います。それを無慈悲に踏み潰す・・・・偉い「大先生」には、知恵も愛情も無いんだなと思います。

投稿: SUBAL | 2016年4月10日 (日) 22時30分

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