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エキスポランド ジェットコースター事故から10年

 2007年5月5日、大阪吹田市にあったエキスポランドでのジェットコースターで、台車の軸ネジ部が破損して脱輪し、当時19歳の女性が死亡する事故がありました。あれから明日で10年です。この事故に関しては、JISの定めで年に1回非破壊検査を含む点検を行う定めになっていたこともあり、その後の事故原因調査のなりゆきと、対策について重大な関心をもって追ってきました。

 部材の金属疲労破壊による死亡事故という重大事故ですから、徹底した科学技術的な調査が行われ、技術史に残る技術的教訓化がなされるものと期待しました。しかしながら、10年の歳月を経過して、率直に思うのは、この件は事故という失敗事例であるだけではなく、事後の教訓化というプロセスにおいても失敗した二重の意味での失敗事例ではないか、ということです。

 結局のところ、エキスポランドは同年12月に閉園となり、2009年に倒産になりました。担当者の刑事責任が問われ、有効な信頼回復ができなかった運営会社が倒産するという「社会的制裁」で終わってしまった感があります。残念です。

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 このブログとしては、2007年の5月には13の記事を書き掲載しました。また6月末までの8つの記事を合わせて、『エキスポランドジェットコースター事故原因と非破壊検査』というタイトルの自費出版本(94頁)を発刊しました。

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 田舎のエンジニアがニュースを見ながら考えたことですからね、まぁ備忘録のようなものです。

 ところが一向に正式な報告書は出ないのです。

 私は、私の限られた情報と知識の範囲ではありましたが、事故原因についての考察を試みました。

 ネジの締め付けがゆるいもしくは緩むと疲労強度が下がるという材料力学的な知見に基づいて、考察を進め、そもそも締め付けてはいけないナットだったのではないか、そうだとすると、そのことを前提とした疲労設計がされていたのか、という疑問を投げかけるものでした。

 どんなに綿密に計算して設計したとしても、計算通りにはいかないことも現実です。使用中にきずが発生すると強度は設計値から落ちていくことは自明です。このため、非破壊検査を含む定期点検の必要が出てきます。ところが、JISの規定は浸透探傷(PT)・磁粉探傷(MT)・超音波探傷(UT)いずれかを実施することになっていますが、その実施者は3日間の講習を受けたものでよいことになっていました。非破壊検査技術者として、ありえない規定でした。

 日本溶接協会(CIW)の検査事業者協議会技術委員会が、この軸の検査方法を検討して、レポートを機関紙に掲載しました(2009年春号)。そんなに簡単なものじゃないことと、超音波探傷は不可であり、ハンドマグナを使う磁粉探傷が適当だという結論でした。それはそれで妥当なものでしたが、いくつか疑問がありましたので、投げかけました。

 非破壊検査全6部門レベル3技術者・総合管理技術者として、CIWレポートの問題点を指摘するだけではなく、妥当な試験方法について提示したつもりです。

 2009年暮れに、科学技術振興機構の、『失敗知識データベース』にこの事故についての報告が掲載されました。筆者の一人は畑村洋太郎先生です。これが驚くような事実誤認のトンデモ報告書でした。私は質問を投げかけました。その関連記事です。

 事務局からメールによると、畑村先生も間違いを認められていて、私からのレポートも読んでおられるとのことでした。しかし直接の連絡はありません。

 科学技術振興機構のWEBサイトで公開されていた「失敗知識データベース」は、なぜか2011年の2月(に気が付いた)までに閉鎖されました。その後は畑村洋太郎氏の個人のサイトに転載されているようです。

 その後、『失敗学会』のサイトに、失敗学会副会長の飯野謙次氏名で、この事故に関するレポートが掲載されました。ちなみに失敗学会の会長は畑村洋太郎氏です。このレポートは、「失敗知識データベース」のものとは趣が異なり、読みごたえがあります。私のこのサイトの記事も紹介されています。ただ、なんというのかな・・・多分学者ではあっても実際にねじを締めたことはないのだろうなぁ、と思われる現実離れした展開があります。長くなりすぎましたので、この件に関しては稿を改めます。

 10周年を前に、『かたちのココロ』のこの事故に関する記事をまとめてみました。振り返って読み返すといくつか訂正したほうが良いところや突っ込みの浅いところもあります。でも、あえて言わせていただけば、ほかに良いレポートがないんですよね。

 足りないところを調査して、まとめれば200ページぐらいの本になりそうです。こういう本は、あまり売れないですから出版社に持ち込んでも多分受け付けてもらえないでしょう。自分のために、自費出版でもしますか。

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