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American Airlines 383便事故 その1 事故報告書公開

 American Airlines 383便事故についてブログ記事を書いた翌々日(7月5日)、この事故の報告書が米国で公開されました(こちら)。事故が起きた翌日シカゴのオヘア空港に行っています。ま、偶然だろうけれど…。

 総ページ数563頁の報告書です。もちろんまだ全部は読めていません。私が関心がある領域でいえば概要はこんなところです。

  1. 2016年10月28日米国シカゴ オヘア国際空港で発生
  2. 機体はBoeing B767-300
  3. 離陸途中でエンジンが破壊 火災に至る
  4. 高圧タービン2段目のディスクが疲労破壊
  5. エンジンはCF6- 80C2B6
  6. 材質はInconel718
  7. 疲労破壊の起点となったのは(介在物ではなくて)Discrete Dirty White Spot ( DDWS)と呼ばれる異常組織
  8. 低サイクル疲労で始まって7000サイクル程度で破壊している
  9. 内部を起点としているため、メンテナンスで実施されれる非破壊検査(FPIやECI)では検出は難しい

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 写真はNTSBの事故報告書(NTSB ID No.: DCA17FA021)より引用。

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 この事故、死者は出ておらず、エンジン1基と機体の一部は焼け落ちた、という被害で航空機事故としては大きい事故ではありますが、被害規模からいうと歴史的というほどではありません。事故直後地元シカゴにいましたが、新聞のトップニュースはシカゴカブスのワールドシリーズ優勝で、テレビでは嵐到来のニュースをやっていました。

 被害の大きさと事故の持つ意味の大きさは必ずしも比例しません。

 今回の事故の重大性は、まず起きると重大な被害になる可能性のあるタービンディスクの破壊だったことです。

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 写真はNTSBの事故報告書(NTSB ID No.: DCA17FA021)より引用。

 右主翼がメルトダウンしています。離陸途中の事故で、おそらくクルーの判断と対処が適切だったのでしょう、空港内だけの事故で収まっています。もしこれが飛行中であれば、主翼を失った飛行機は最悪墜落です。そして墜落していたところがシカゴの市街地であったとしたら・・・・。

 もう一つ重大なのは、疲労破壊の起点がディスクの内部であったことです。多くの場合(ほとんどといって良い)疲労破壊の起点は表面です。内部からのき裂の進展の場合、メンテナンス時に実施される蛍光浸透探傷(FPI)や渦電流探傷(ECI)では検出できません。

 航空機の安全性を確保するために長期間にわたり膨大な費用をかけて構築されてきた確率論を取り入れた損傷許容設計思想の根幹を脅かす(かもしれない)事故なのです。

 もちろんこの事態を受けて、実証実験をベースにした研究開発がすすめられて、航空安全が守られていくはずです。

 私は「関心がある」ということでは済まない立場にいますので褌を締めなおさなければなりません。

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