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週刊日本刀への疑問 刃文の沸と匂

 週刊日本刀、5号の「石切丸」が出ました。どこまで買うかは様子見というところですが、5号は買いました。今回の原寸刀身写真は、これまでと違って同じ面ではなく裏表違う面の写真を掲載しています。普通に見える見え方と、特殊撮影で出来た当時の本来の刃文を比べて見せるのではなかったんですかね。今回の石切丸の刃文は直刃(すぐは)ですが、上下の写真の様子はほとんど同じなんですよね。(よく見ると5号の石切丸は特殊撮影をしたとは書いていないんですね。すべて特殊撮影の写真を載せるものだと思い込んでいました。)

 4号までの「特殊撮影」を見ると、刃文の匂と呼ばれるところを白く浮き立たせることに注力しているように見えます。撮影方法と画像の処理方法の見当がつきました。

 創刊号で刃文を構成する沸(にえ)と匂(におい)を説明しています。

Scan001hamon2

 この説明では沸と匂は「どちらも冶金学的には同じものだが、粒子の大きさが異なる」としています。粒の大きさの違いであるという説明は刀剣関係の本ではよく出てきます。「冶金学的には同じ」というのは初めて聞きました。金属組織としては同じということでしょう。ほんと?いったい何と呼ばれる金属組織なのでしょう?編集部に質問状を出す機会があれば訊いてみたいと思います。

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 沸と匂を冶金学的に説明している文献はあまり見つかりません。谷村熈教授(九州大学)の「日本刀の冶金学的研究」ぐらいでしょうか。この中で次のような図を示して、沸はマルテンサイト、匂はトルースタイトと説明しています。

Tanihamon

 この論文は1981年のものですが、現在の冶金学ではトルースタイトは微細なパーライトに分類されます。谷村教授は、マルテンサイトとトルースタイトの硬さに違いによってその間に凹凸ができることに着目して論を展開しています。私はもう一歩進めて金属組織の違いに起因して、研ぎによってそこに表面粗さの違いが生じることに着目すべきと考えています。
 パーライトは非常に硬いセメンタイトと比較的軟らかいフェライトの混合組織です。この硬軟二つの組織が折り重なるようになっているため、内曇砥のような硬さと粒度が微妙なバランスを持った砥石で研ぐと、匂の部分に微細な凹凸ができます。日本刀の刃文は、この微細な凹凸と光が織りなす繊細な美であると考えています。

 私の研究による観察データの一部を公開します。内曇砥石で研いだ刃文部のレーザー顕微鏡による観察結果です。Minp3 

 上部の図で白っぽく見えるのがマルテンサイト、黒っぽく見えるところがパーライトです。下の図でPと書いたところがパーライト、Mと書いたところがマルテンサイトです。表面粗さが異なることをわかってもらえればうれしいです。

 週刊日本刀も、妙なごまかしをしないで、研ぎと刃文の関係を正面から取り上げてほしいと思います。

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