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週刊日本刀への疑問 特殊撮影でなくても刃文が明瞭に目視できる日本刀が存在する

 週刊日本刀の大きなセールスポイントは「博物館などに行ってガラス越しに見たり、普通に写真を撮ったのでは見ることのできない刃文の姿を特殊撮影で明瞭に見えるようにして五つ折の等身大の写真にして提供する」ということでした。これはこれまでにない画期的な試みでしょう。

 ただ、

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 こちらの記事で紹介したように、プロモーションビデオの中で、化粧研ぎとは考えにくい徳川美術館蔵の村正の写真を示して「化粧研ぎされたイメージ(通常の見え方)」と紹介してみたり、刃文のコントラストを上げた「特殊撮影」の方を示して「作刀された当時のイメージに近い」と紹介するのは何を指して何を根拠にしているのか大いなる疑問がわきます。まして、「特殊撮影写真を見ると作刀された当時にタイムトリップできる」に至ってはばかげているとしか言いようがなく、週刊日本刀の取り組みの品位を大きく落としているといわざるを得ません。

 実は、最近日本刀を展示している博物館へ行くと週刊日本刀が「特殊撮影」としている刃文の見え方と似たようなコントラストの刃文が普通に肉眼で見える刀を見る機会が増えています。その例を紹介します。

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 以下の写真は、私自身が写真撮影が許されているある博物館へ行って、iPadを使って撮ったものです。刀はガラスで隔てられた展示棚に展示してありました。照明は会場にあるもの以外に何も使っていません。私自身は特別な写真術を持ってはいません。

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 いったいこれは何なのでしょうかね?

 私たちの金属学と光学の見地からの研究では、刃文を砥石を使った研ぎで週刊日本刀の「特殊撮影」に見られるようなハイコントラストに見えるようにするのは不可能であるとわかっています。砥石以外のものを使っていると考えるのが妥当です。

 では何なのでしょうか?公にはほとんど言われていませんが、プロの研ぎ師の間では「硝酸などの酸を使う」ことが公然の秘密になっています。「酸研ぎ」という非公然の呼び名もあるようです。硝酸を使うと簡単に刃文が浮かび上がるので、研ぎ工程は大幅に短縮できます。

 硝酸は鉄鋼材料の金属組織を視るときに使う薬品で、金属工学にかかわるエンジニアにとってはなじみのある薬品です。硝酸を使うと鋼組織の中のフェライトと呼ばれる組織を選択的に溶出することができます。それは原理としては腐食と同じエッチングと呼ばれる手法です。特に炭素鋼の組織を見るのに適した薬品です。日本刀の刃文は、金属組織の観点から見ると、焼き入れ時の不完全焼き入れ部です。ですから「特殊撮影」も酸による処理も、日本刀のこの不完全焼き入部を見えやすくしているともいえるのです。

デアゴスティーニの編集部の皆さん。日本刀の刃文が、作刀された当初研ぎをする前に「特殊撮影」のようにハイコントラストに見えるわけではありません。研ぎを施してもぼんやりしか見えません。御社が今回取り組まれている「特殊撮影」は酸を使わずに非破壊的に熱処理(焼入れ)によって生まれた刃文の姿を明瞭に見せてくれる画期的な方法である可能性があるのではないか・・・・私にはそう思えます。

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注:上に掲載した3枚の写真の刀について、硝酸を使っていると断定しているわけではありません。砥石を使った研磨では不可能と思えるほどハイコントラストな刃文の例として紹介しているだけです。

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